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第2章 火龍・水龍 編
第63話 【攻略対象 火龍の変化体】新たな攻略対象登場の予兆に頭を抱えるのは……
しおりを挟む「アツさ……って意味で考えるなら、可能性があるのは陽か、火の宝珠なんだろうけど。でも基本的に『ゲームの試練』は、弱まる力を回復させる目的のものなのよ。今の場合は、猛暑でしょ?」
「ああ。必要なのは強くなりすぎたものを、弱める方法だな」
「なら、おれ イイコト思い付いちゃったぜ! レーナが さっき言った『ヒ』のオーブって奴を 弱らせれば良いんだろ?」
はい、はい! と、元気に挙手しつつ腰に差した木剣の柄に手を掛ける脳筋勇者に、頭痛を覚えるレーナだ。
「アルルク、オーブは物であって弱らせるなんてことは出来ないわ」
精霊姫の祠でも見たはずの宝珠のことを忘れてしまったのかと、呆れも顕わに眉を顰めつつ首を横に振るレーナだ。だがアルルクは笑顔を浮かべ、自慢げに顎を上げて、胸を逸らせた。
「わかってないなぁ レーナこそ。世界を守る力をもった オーブを傷つけたりするわけないだろ? おれが言ってんのは そのオーブに連なる力を持った『奴』のことなんだぞ。いるんだろ? それぞれのオーブに 精霊姫みたいな奴がさ」
『あら、赤髪。あんた 意外と分かってんじゃない』
エドヴィンの右耳を引っ張りながら、小さな精霊姫が感嘆の声をあげる。レーナも同じく驚いていた。だが、考えなしの鼻たれ小僧が、そんな仕組みを理解していることが意外すぎて反応できなかった。
「アルルク……あんたっ、成長したのねー……」
胸に熱いものがこみ上げて、ホロリと涙が零れそうになる。「いつまでもガキ扱いすんなよ」とアルルクがむくれるが、纏わり付いて無邪気に邪魔をする子犬のような存在の成長に、レーナは感動もひとしおだ。
「弟の成長を喜ぶのはそのくらいでいいだろう。レーナ」
エドヴィンが話の先を促すように、言葉を挟む。何故か、どこかニヤリとしながらアルルクにチラリと視線を向けているが、その視線がどこか挑戦的な気がして、首を傾げるレーナだ。
「おれは レーナの弟じゃねぇ! ヒーローだ!!」
『ふふふふっ』
プンスカと食って掛かるアルルクと、愉快そうな精霊姫は何かを察している。分かっていないのは自分だけかと、僅かばかりショックを受けたレーナだが、話を再開したエドヴィンに再び注意を向ける。
彼は、打って変わって真剣な面持ちだった。
「レーナ。陽か、火の宝珠に連なる力を持った者とは、誰だ? もしくは、その宝珠の経路に関わる者は? 遊戯の内容で構わん」
「それは簡単よ『陽』はメインルートだもの。精霊姫みたいな特殊なキャラは出てこないけど、この国の王子様と、彼に対抗する魔族がメインで登場したわ。『火』は火龍の変化体ね。一番簡単なルートで、魔族を倒して彼の番を探そうってストーリーね」
やり込んだゲームの説明だ。立石に水とばかりに、得意げな表情でさらさらと説明するレーナに対し、エドヴィンとアルルクの表情はどんどん曇って行く。
「なぁ、レーナ。 いちおう聞いてみるけど・さ…… その王子とか、火龍の変化体ってもしかすると 例の・あの……こ こう? こんにゃく? あれ?」
苦いものを噛んだ顰め面でアルルクが何かを訴えて来るが、肝心のところで言葉が出てこないらしい。焦れた様にエドヴィンが後を引き継ぐ。
「要するに、だ。その『王子』と『火龍の変化体』とやらは、遊戯の攻略対象なのか?」
「ん? 当然そうだけど」
何か問題でもあるのかと、キョトンとするレーナに、攻略対象2人は「これ以上、余計な奴が増えるのか」と頭を抱えるのだった。
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