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第2章 火龍・水龍 編
第81話 【攻略対象 水の精霊王と水龍】追いつかれた! ばれちゃう!?
しおりを挟む何が、と問う必要はなかった。暑い空気と暑苦しい雰囲気が、同時に襲いかかってくる。
『待っててくれって言ってんだろうがよぉっ! ワレの番候補たちよぉっ!! 何で待ってねぇんだよぉぅっ!』
見ずとも分かる。火龍ファルークが溶岩洞から姿を現していた。
『相変わらず暑苦しい奴だノネ』
『良いではないか、ゾイヤ。むさ苦しい住処の中を探し回る手間が省けたのだ』
一方の水属性の1柱と1頭は、一歩引いた清しい表情を向けている。
「ああああっ!? 追い付かれちゃったっ……」
焦る気持ちのまま叫んだのはレーナだ。
その一方で、プチドラの給水修繕はまだ終わりが見えない。ヴォディムの水をグイグイ吸収し続ける速度は、緩やかになることなく最初の勢いのままだ。
(これ、修繕の力だけで水を取り込んでるんじゃないよね? 自発だよね!?)
嫌な予感がして、力の発動を止めたレーナだが、予想通りプチドラの吸水は止まらない。
巨大水球からプチドラを離そうとしたが、表面に全身でぺたりと鳥もちでくっ付いていたかと錯覚するほど、水の表面がプチドラに引き寄せられて剝がれない。
「ちょぉっ!? プチドラちゃん!? いい加減離れてーーーー!」
ふんぬっとプチドラの胴体を握った両腕に力を込めて、水球から遠ざけても、水はプチドラにくっ付いて伸びて来る。レーナが試しに手を離せば、伸びた水が水球に戻る勢いで、プチドラもぺたんと水面に張り付いた。
『精霊姫よ。ここで一時ワタシの水で潤ったとしても、森を枯渇から救うことは出来ぬぞ』
『いつまでも、我が君の偉大なるお力に張り付くなノネ!』
レーナにゾイヤも加勢して、長い尾をプチドラの胴体に巻き付け、水球から引き剝がさんと力を込める。逃げられる体勢を作りたいレーナと、大好きなヴォディムの創り出した水からプチドラを遠ざけたいゾイヤ。思惑は違えど、引き離したい意図が一致して、協力する格好になる。
「はーなーれーなーさぁぁーーーーーい!!」
レーナが声を張り上げ、ゾイヤもその声に呼応して力を込める。すると突然、プチドラを水球の場所に留める力から解放されて、1人と1柱と1頭は力の方向へひっくり返った。
「取れたっ!? ―――っえぇっ!?」
勢いあまって尻餅をついたレーナが、掴んだままのプチドラを目にして絶句する。それもそのはず、彼女の手の中に納まっていたのは、全身をパンパンに膨張させたプチドラの姿だった。
しかも、レーナをすっぽり覆えるくらい大きかった水球が跡形もなく消え去っている。どうやら、全て給水修繕したらしい。
『けぷっ! 元気になったわ! けど身体が重いんだけどぉぉ?』
「当たり前でしょ!? プチドラちゃんには加減ってものが無いの!? わたし修繕は途中で止めてたよ?」
『仕方ないじゃない、植物に水は必須よ!? しかも暑すぎるのよぉ!』
この精霊姫は、どれだけ欲の底が知れないのだと呆れる反面、1人を思い続けた彼女の執着を思えば、納得の行動でもある。
だが、今は緊急事態只中だ。彼女の為人を、認めている場合ではないのだ。
「オレたちは、お前とは無関係だぞ! お前みたいな魔族は知ってっけど、お前は はじめまして のはずだ!」
『なんだとぉ?』
(アルルクっ!? ファルークに何言っちゃってんのぉぉ!!)
プチドラに注意が向いていた間に、レーナがもっとも恐れていた、ファルークとアルルクの接触が済んでいた。しかも、隠しておきたかった魔族のことまで口に出している。暑さとは違う、別の理由の汗がぶわりと滲む。
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