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第2章 火龍・水龍 編
第89話 【攻略対象 水の精霊王と水龍】手掛かりを組み合わせて、いざ謎解き!
しおりを挟むエドヴィンが顔を青くして見詰める先――ドレッサーで隠すように、背面の壁に薄く切り刻んだ傷が在る。
それは目を凝らせば、引っ掻いたような文字で『タスケテ』と刻まれたものだと判別できた。
探せば部屋のあちらこちらに、幾つもの『ユルシテ』『ココカラダシテ』などの穏やかでない文字が刻まれている。カーペットの凹みからずれた位置に置かれた家具――その後ろの壁を探せば、必ずソレが見付けられると言った寸法だ。
「ここって、やっぱり……歴代の番が入れられた監禁部屋ってことよね」
レーナの呟きが静まり返った室内に、何かの宣言かのように重々しく響く。それを受けた者の反応も神妙そのものだ。アルルクやプチドラも含めた全員が、この部屋で起こったであろう出来事を想像し、沈痛な面持ちで唇を閉ざす。
(そう言えば、プペ村で出会った元ライラは、変な癖があったわね)
あの魔族は、感情が高ぶると、長い爪でガリガリと手につくものを引っ掻いていたようだった。
(そっか……ここでの経験から、あんな風貌と癖に進化しちゃったのね)
事情が分かれば、実に痛ましい姿の魔族だったわけだ。そうならなければ逃げられなかった――いや、そう変化して逃げることが叶ったのだ。そう思い直したレーナは、すっかり沈んだ雰囲気になった一同に、明るく声を張り上げる。
「とにかく出ましょう!」
とは言え、この部屋はゲームには登場したものではない。いや、ファルークルートのエンディングで見た部屋の壁紙が同じだった気もするが、攻略すべきダンジョンとしては初見だ。頼るべき前世のゲーム記憶は無い。
だが今のレーナは、最推しのリュザスに心配された夢のような現実を体験し、意欲が増しに増している。だから、揚々と攻略の幕開けを告げる。
「リアル脱出ゲームの開幕よ! ライラは魔物化はしたけれど、ココから出ることは出来て、プペ村までやって来たんだもの。だから、あの魔族が出られた方法を考えれば良いのよ!」
「そうだなっ! やっぱレーナはすげぇなっ オレ、どこなら壊しやすそうかなって 壊して出る事だけしか考えてなかったぜ」
アルルクは、彼らしい最善の方法を考えていたらしい。恐らく、壊せるなら魔物化したライラが壊している気がするが、部屋が残っているのはそれが出来なかったということだ。
「それなら、レーナ。早速だが思い出せるか? その魔族のことを。辛ければ無理をしなくとも構わないが」
気遣わしげにエドヴィンがレーナを伺うが、大丈夫との意図を込めて大きく頷いて見せる。
それからアルルクとレーナは、元ライラの魔族の特徴を思いつくまま並べて行った。「捻れた角」「鱗」「鋭い牙」といった具体的なものから、色や質感など、些細な特徴も互いの言葉も切っ掛けにして思い出して行く。意思を通じ合わせる幼馴染同士の共同作業の様子に、エドヴィンがぐっと唇を引き結んでいるが、気付いたのはニヨニヨとそれを見ているプチドラだけだ。
「けど、いっちゃん目立ったのって あのメチャクチャ長ーーーくて 尖った爪だよな!」
「そうね! あの爪みたいな……細長いものか、尖ったものが、この部屋を抜け出す鍵かもしれないわ!!」
「よし、レーナっ! 探すぞ!!」
「楽しいわねっ」
パズルを組み合わせて行くような快感に自然と気持ちが浮き立つ2人だ。
――が
「私は楽しくなんかないぞっ」
頬を膨らませてむっつりと呟くエドヴィンに、プチドラがピョンと肩に飛び乗り、柔らかな緑の髪をよしよしと撫でたのだった。
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