177 / 237
第4章 最高神 編
第179話 【攻略対象 最高神リュザス】火の宝珠、飲まれる(中)
しおりを挟む「まだリュザス様に逢えてもいないのにっ!! 世界崩壊を進めないでよっ! やめてってばぁぁ!!」
美貌の人外を前にした恐ろしさよりも、望みが叶わなくなる苛立ちが勝ったレーナは、何とか青年を止めようと無我夢中で行動し始める。
旅の道具を詰めたリュックから、傷薬や聖水の小瓶に、弁当箱、水筒に手鏡と、手に付くものを取り出してはエイヤと黒い青年に向けて投げ付けてゆく。
―― 効かないよ~? 君の力の籠ったものならむしろ歓迎なんだけどね ――
軽口を叩きながらも、ファルークを取り込む速度は変わらない。歯噛みするレーナを背に庇って、アルルクが赤い抜き身の剣を構える。
「レーナ、ここでじっとしてて! おれが行く!」
尾に向かって、一歩、大きく踏み込む。が、ファルークが身体を反らしながら長い首を尾に向け、口腔の中でギラリと光る牙を露にする。
火焔を吐くつもりなのだ。
「うしろっ! アルルクっ!!」
火焔放射待ったなしの火龍と黒い青年に挟まれたレーナが、声を上げる。
青年に一撃を加えようとしていたアルルクは、レーナの言葉を聞くや、素早く身を反転させて彼女を抱え込んだ。そのままファルークの背を蹴って宙に身体を踊らせ、龍化して空へと脱出する。
ごう
凄まじい音と熱が充満する場から、レーナとアルルクは間一髪で退避する。
振り返った先では、背に庇う者を持たなくなった火龍が、苛烈な反撃を始めていた。自身の尾が焼けるのも厭わず、黒い青年もろとも焼き尽くそうと、ファルークが業火を吐く。
「きゃぁっ!?」
訪れる凄惨な結果を想像し、思わず目を背けたレーナだ。
「ぎゃおっ」
レーナを抱えた赤龍アルルクが、宥めるような優しい声音でひと鳴きする。それから軽々宙を舞い、ファルークらから距離を取る。
ファルークと青年による対峙の巻き添えを食わないギリギリを旋回するアルルクは、大きく逃げ去ることはしない。ファルークに加勢する隙を狙っているのだ。
「ファルークの尻尾が、もう半分くらい取り込まれてる……! うう、まずいわ」
そう思いつつも、加勢する手だてが思い浮かばない。
空中では草木を操ることも出来ないし、火は身体に纏うことはできても、アルルクらのように噴射するとこは出来ない。水を使うのは、火の化身へのダメージと成りかねない。
無い無い尽くしで気ばかり焦るレーナと、彼女を思い遣るばかりに気をとられたアルルク。そこに隙が生まれた。
―― 火の龍くん。僕にばっかり気を取られていて良いのかな? ――
僅かに顔を歪ませた青年が、両手を振って魔法を発動させる。
がららららぁぁぁぁ
竜巻のように渦を巻いた土砂の塊が、レーナとアルルク目掛けて矢の勢いで襲い掛かった。火焔に少なからずダメージを受けた青年の、突然の方針転換に、ファルークをはじめ、レーナとアルルクも反応が追い付かない。
瞬間、レーナの髪飾りから幾筋もの色とりどりな光が溢れ出し、柔らかくたわんでアルルクごとレーナを包み込む。端から見れば光輝く虹色の繭が空中に浮遊していると見えるだろう。
バチッ
放電に似た鋭い音がして、青年の放った土砂は虹色の繭に弾かれて蒸発する。一撃を受けた繭は、半透明な虹色の膜を維持してはいるが、明らかに放つ光を弱めてしまった。次にまた同じ攻撃を受ければ、同じように弾き返せるかは疑わしい。
圧倒的優位に立ったはずの青年は、だが苛立たし気に柳眉を顰める。
―― ちっ。まだ僕をはね除ける力の差があるって言うの? 忌々しい。
朽ちかけた最高神なんてサマにならないもの……さっさとその座を僕に明け渡して、消えてくれれば良いのに ――
浴びた火炎のダメージを一切感じさせない、美しいままの青年の唇から紡がれる言葉は物騒だ。しかも、リュザス推しのレーナにとっては到底聞き捨てならない内容だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─
石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」
貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。
「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」
かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。
ときどき舞い込んでくるトラブル。
慌ててミーナを探しているルカ。
果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。
甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。
*サイトより転載になります。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら
渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!?
このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!!
前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡
「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」
※※※
現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。
今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました!
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる