独占欲強めの最高神は、モブ娘からの一途な愛をお望みです!

弥生ちえ

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第4章 最高神 編

第179話 【攻略対象 最高神リュザス】火の宝珠、飲まれる(中)

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「まだリュザス様に逢えてもいないのにっ!! 世界崩壊を進めないでよっ! やめてってばぁぁ!!」

 美貌の人外を前にした恐ろしさよりも、望みが叶わなくなる苛立ちが勝ったレーナは、何とか青年を止めようと無我夢中で行動し始める。
 旅の道具を詰めたリュックから、傷薬や聖水の小瓶に、弁当箱、水筒に手鏡と、手に付くものを取り出してはエイヤと黒い青年に向けて投げ付けてゆく。

 ―― 効かないよ~? 君の力の籠ったものならむしろ歓迎なんだけどね ――

 軽口を叩きながらも、ファルークを取り込む速度は変わらない。歯噛みするレーナを背に庇って、アルルクが赤い抜き身の剣を構える。

「レーナ、ここでじっとしてて! おれが行く!」

 尾に向かって、一歩、大きく踏み込む。が、ファルークが身体を反らしながら長い首を尾に向け、口腔の中でギラリと光る牙を露にする。

 火焔を吐くつもりなのだ。

「うしろっ! アルルクっ!!」

 火焔放射待ったなしの火龍と黒い青年に挟まれたレーナが、声を上げる。
 青年に一撃を加えようとしていたアルルクは、レーナの言葉を聞くや、素早く身を反転させて彼女を抱え込んだ。そのままファルークの背を蹴って宙に身体を踊らせ、龍化して空へと脱出する。


 ごう


 凄まじい音と熱が充満する場から、レーナとアルルクは間一髪で退避する。

 振り返った先では、背に庇う者を持たなくなった火龍が、苛烈な反撃を始めていた。自身の尾が焼けるのも厭わず、黒い青年もろとも焼き尽くそうと、ファルークが業火を吐く。

「きゃぁっ!?」

 訪れる凄惨な結果を想像し、思わず目を背けたレーナだ。

「ぎゃおっ」

 レーナを抱えた赤龍アルルクが、宥めるような優しい声音でひと鳴きする。それから軽々宙を舞い、ファルークらから距離を取る。

 ファルークと青年による対峙の巻き添えを食わないギリギリを旋回するアルルクは、大きく逃げ去ることはしない。ファルークに加勢する隙を狙っているのだ。

「ファルークの尻尾が、もう半分くらい取り込まれてる……! うう、まずいわ」

 そう思いつつも、加勢する手だてが思い浮かばない。
 空中では草木を操ることも出来ないし、火は身体に纏うことはできても、アルルクらのように噴射するとこは出来ない。水を使うのは、火の化身へのダメージと成りかねない。
 無い無い尽くしで気ばかり焦るレーナと、彼女を思い遣るばかりに気をとられたアルルク。そこに隙が生まれた。

 ―― 火の龍くん。僕にばっかり気を取られていて良いのかな? ――

 僅かに顔を歪ませた青年が、両手を振って魔法を発動させる。

 がららららぁぁぁぁ

 竜巻のように渦を巻いた土砂の塊が、レーナとアルルク目掛けて矢の勢いで襲い掛かった。火焔に少なからずダメージを受けた青年の、突然の方針転換に、ファルークをはじめ、レーナとアルルクも反応が追い付かない。


 瞬間、レーナの髪飾りから幾筋もの色とりどりな光が溢れ出し、柔らかくたわんでアルルクごとレーナを包み込む。端から見れば光輝く虹色のまゆが空中に浮遊していると見えるだろう。

 バチッ

 放電に似た鋭い音がして、青年の放った土砂は虹色の繭に弾かれて蒸発する。一撃を受けた繭は、半透明な虹色の膜を維持してはいるが、明らかに放つ光を弱めてしまった。次にまた同じ攻撃を受ければ、同じように弾き返せるかは疑わしい。
 圧倒的優位に立ったはずの青年は、だが苛立たし気に柳眉を顰める。

 ―― ちっ。まだ僕をはね除ける力の差があるって言うの? 忌々しい。
 朽ちかけた最高神なんてサマにならないもの……さっさとその座を僕に明け渡して、消えてくれれば良いのに ――

 浴びた火炎のダメージを一切感じさせない、美しいままの青年の唇から紡がれる言葉は物騒だ。しかも、リュザス推しのレーナにとっては到底聞き捨てならない内容だった。
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