独占欲強めの最高神は、モブ娘からの一途な愛をお望みです!

弥生ちえ

文字の大きさ
182 / 237
第4章 最高神 編

第184話 【攻略対象 最高神リュザス】神託の蛋白石へ呼び掛ける

しおりを挟む

 渋面を作るレーナに、希望の灯をともしかけていた神官らの表情は、みるみる消沈したものへと変わって行く。レーナとて、思い通りにならない現状に歯噛みする思いなのに、さらに他者から落胆の視線を向けられるのは辛い。

 もうしばらく間を置けば、高齢の神官長や、隣接する王城の者もやって来るはずだ。アルマジロやプチドラ、大気の宝珠オーブの回復措置は、大神殿に隣接する王城で行われているから、そこに詰めて居るエドヴィンやシルヴィア、バルザック、そしてひょっとしたらクラウディオ王子までもが姿を見せるかもしれない。

(さすがに、みんなから同じようにガッカリした視線を向けられるのは不本意って云うか……つらいな)

 転生の直前まで熱心に幾度もプレイするほど心囚われていた世界ダンテフォール。ここに実在し、関わりを持った人や宝珠オーブの化身たちには、すでに物語の登場人物と言う以上の親しみを感じている。

「聖女レーナ!」

 何度目かの神官からの切羽詰まった呼びかけに、レーナはびくりと肩を揺らす。その微かな反応を目敏く捕えたアルルクが、神官らとレーナの間に身体をさっと割り込ませる。

「おい、お前ら! 何回もレーナ、レーナって繰り返せば都合の良い答えをこっちが用意して差し出すとか思ってんじゃねーの!? レーナにばっか 押し付けるんじゃねー!」

 神官らからレーナを庇って、彼女を背中に隠したアルルクが吠えた。ぐっと押し黙った神官らに、アルルクは腹立たし気な鼻息をふんっと吐く。

(えぇ!? わたし……あの鼻たれアルルクに庇われてるの!?)

 なんて立派に育ったの……と、子供の成長を見る母親染みた感動に、胸を熱くするレーナだ。だから自身の欲望「最推しリュザスに逢う」ことに加えて、「アルルクたちの未来を守る」ことへの思いも強くする。

 結果――。

「もぉもぉ! 画面で見てたくらいにすっかり成長しちゃってっ……! 嬉しい、実存するってこう云うことなのよね。ゲームのキャラクターってだけじゃなくって、生きて、成長してるのよね! なんて愛しいの……! これはもぉ、この世界を誰よりも知ってるわたしが助けなきゃだよね!」

 ゲーム愛の炸裂したレーナの言葉は止まらない。アルルクも、神官らも、ただただポカンと目と口を開けて、レーナの力説に押され続ける。そして語る中で作品愛の高まったレーナは、ぐっと拳を握り締め、強い意思の光を宿した瞳で再び祭壇の蛋白石オパールを見詰めると、高らかに宣言した。

「もともと、リュザス様に逢うのは絶対って決めてたけど……
 決めたわ! わたし、絶対にリュザス様に会うわ!! わたしがこの世界を攻略する!!」

 ちゃんと生きているキャラクター全員を、救いたいとの強い思いに胸が熱くなる。存在を飲み込まれたファルークや、消息不明のゾイヤ。そして消えてしまいそうなプチドラやアルマジロの面影が、次々にレーナの脳裏に去来する。

 レーナの決意に呼応するように、右耳の上に付いた虹色の蝶の髪飾りが、色とりどりの細かな光の粒を放って輝き出す。

攻略対象みんなを頼るんじゃなく、世界の仕組みを知ってる玲於奈わたしが何とかしなきゃなのよね」

 柔らかな囁きで紡がれたレーナの声は、けれど決意に満ちていて、力強さに溢れている。アルルクに向ける彼女の視線は、温かく包み込む優しさに満ちている。

「レーナっ……」

 思わず呼び掛けたアルルクには、今までよりも格段に優しい思いの籠ったレーナの視線を受けながらも、それがどこか超然とした思いも孕んでいるように見える。だから、彼女が遠いところへ行ってしまうような焦燥感に駆られての呼び掛けだった。けれどそれに続く言葉は、彼女の力強い笑みに跳ね返されて途切れる。


 強く世界の危機救済を決意したレーナは、無意識に蝶の輝きから温かな力が流れ込んでくるのを感じ取っていた。そのまま閃いた言葉を音にのせて発する。

「この大切な世界を創る人たちを、誰一人として欠けさせない! 最高神リュザス様を助けて、わたしが難題を攻略するわ! リュザス様、わたしを呼んで!! わたしが、リュザス様の力になります!!」

 ―― レーナ ――

 前世から待ち望んでいた、この世界で何度も耳にした 柔らかく甘い声が耳朶を擽る。

 と同時に、世界が目も眩むような真っ白い閃光に包まれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100
ファンタジー
国立大学に通っていた理系大学生カナは、あることがきっかけで乙女ゲーム「Amour Tale(アムール テイル)」のヒロインとして転生する。 自由に生きようと決めたカナは、あえて本来のゲームのシナリオを無視し、実践的な魔法や剣が学べる魔術学院への入学を決意する。 魔術学院には、騎士団長の息子ジーク、王国の第2王子ラクア、クラスメイト唯一の女子マリー、剣術道場の息子アランなど、個性的な面々が在籍しており、楽しい日々を送っていた。 しかしそんな中、カナや友人たちの周りで不穏な事件が起こるようになる。 前世から持つ頭脳や科学の知識と、今世で手にした水属性・極闇傾向の魔法適性を駆使し、自身の過去と向き合うため、そして友人の未来を守るために奮闘する。 「今世では、自分の思うように生きよう。前世の二の舞にならないように。」

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

処理中です...