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第4章 最高神 編
第215話 【攻略対象 平凡村娘】黒い青年の圧倒的な力
しおりを挟む「わたしは、この世界が永く続いて欲しいの。リュザスがここで力を貸してくれても、一時的に世界の試練を乗り越えるだけでしょ?
本当に貴方が世界を続けたいと思ったのでなければ、世界の崩壊は完全に止まらない。だから、ゲームには完全な救済エンドは無かったんだよね?」
レーナの言葉に、最高神は少しばかりの驚きを滲ませて、片眉を上げてみせる。
「まぁね。化身たちが満たされるルートを幾つも創ってみたけど、僕自身は空虚なままだったね。だから、他の誰にも目もくれず、僕だけを強く望む人を、探したんだよ?
僕はきっと、僕だけを何よりも誰よりも強く思ってくれる人の想いがなければ、満足出来ない。
そう、僕が見込んだ唯一がレーナだ。
僕は、大切なレーナに必要とされないと、何のために存在しているのか分からなくなる」
「リュザス……」
重すぎる告白に、レーナはすぐに言葉を返すことは出来なかった。
元推し、随分冷めたけれど好感は皆無ではない。けれど、軽く受け止めることはできない重すぎる告白――
「だから、僕の存在意義を無くさないで」
「つっ……!」
胸を割く切ない懇願の声が、レーナにリュザスの孤独を見せつける。
「レーナ!! 黒い奴が妙な動きをしているぞ! 集中しろっ」
真横から響いたエドヴィンの叫が、困惑に沈んでいたレーナを危機的現実に引き戻した。弾かれたようにレーナが、黒い青年に視線を移す。
―― 何も憂うことはない。僕がその男に替わって世界を統べるんだから ――
言うや、黒い青年は腕を大きく振り、自身を取り巻く黒い靄を操り始めた。靄は幾つもの長い触手のように束になり、分岐して群れ全体を包み込もうと伸びて行く。
―― 全ては、僕が最高神に至る礎となるんだ ――
悲しげな一言が放たれ、青年が両腕を大きく広げる。すると、空間がひしゃげ、群れの後方から魔獣も魔族も一塊に押し固められて行く。
辺りには、人ならざる者たちの絶叫が木霊する。
圧縮の力は群れを蹂躙し続け、そのまま前方で戦う騎士魔導士兵団にも迫る。
「撤退!! 全隊、撤退ーーーーっ!!!!」
上空のクラウディオ王子が、声の限り叫んでいる。だが、圧倒的な脅威に敵味方全てが混乱を極め、退避行動は遅々として進まない。
後方で全体を見渡していた化身と魔力提供者らのタッグにも動揺が走る。真っ先に悲鳴に似た声を上げたのは、バルザックだ。
「このままじゃ、騎士魔導士たちも巻き込まれてしまいます!」
『ボクが、出来るだけ大きな壁を作るからっ……! もっと、もっと力をちょうだい!!』
焦るバルザックに豆マジロが真剣な目を向ける。
「ご先祖様! 私の力を守りに使ってください!!」
『わかってる! 最上級に可愛いあたしの力で、出来る限りやってみせるんだからっ!』
魔物の足止めに奮闘していたエドヴィンと豆ドラも、守りに集中すべく力強く見交わす。
化身と人間のパートナーが、熱い絆を見せるなか、水の精霊王ヴォディムは冷涼な瞳をひたとレーナに向けていた。
『虹の主の寵を受けし娘よ。あの男の力は、今や全ての宝珠の属性を取り込み、最高神に次ぐ強大さとなっておる。ワタシもお前との盟約によりヒトの守りに徹するが、勝ち目は――』
「わかってる! ううん、そんなの分からない!! やってみなくちゃ!!!」
だがレーナの意気込みも虚しく、黒い青年の作り出した圧縮の力が、大地を操る豆マジロが作る障壁を砕く。更には木々を操る豆ドラの綿密に編み込まれた防壁も千々に吹き飛ばす。
水を操るヴォディムは、水流で兵士たちの離脱を図るが、魔獣や魔物たちを蹂躙、吸収しながら力を増す「黒い靄の触手」は、人間をも自らの力の糧としようと、兵士らの離脱を阻む。
ヴォディムの背に手を添えて、自身の魔力を送り続けるレーナの全身を、焦燥感が駆け巡る。
「力が足りない……! けどっ、未来のために、こんなところで負けられない!!」
『ぅぐっ……娘! 妙な力が混じって来るぞ!?』
苦悶の声を上げたヴォディムが、背に焼き鏝を当てられたように身体を仰け反らせてレーナの手から逃れた。
「レーナ!?」
『ちょ!? この力って!』
傍のエドヴィンと豆ドラが、レーナから異変を感じて鋭く視線を向ける。バルザックと豆マジロも同様にレーナに視線を向け、絶句した。
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