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第4章 最高神 編
第224話 【攻略対象 平凡村娘】想いに衝き動かされた結末
しおりを挟む考えるよりも早く、引き留める手を伸ばしていた。
確かめるより先に、持てる魔力の全てを差し出していた。
冷えた心に整理の付かないまま、失いたくない一心で呼び掛けていた。
「「「 レーナ!!!! 」」」
幾つかの声が、レーナの暗転した視界と、途切れつつある意識の中に、強い光と暖かさを持って飛び込んできた。
力を無くして地面に倒れ伏そうとするレーナを、素早くアルルクが抱き留める。
魔力の放出で、心臓の脈打つ力さえ失いかけたレーナに、エドヴィンがありったけの魔力を送り込んで、途切れかける生命に息吹を吹き込む。
自分一人を一途に想ってくれない、思い通りに動かずに自分を振り回すレーナ。期待していない「人間」なのにも拘らず、予想外ばかり引き起こす彼女の全てにリュザスは気持ちを揺さぶられ、自分の世界に繋ぎ止めたいと声を上げる。
真っ先にひび割れた渾身の声を上げたのは、彼女から離れる全てを見逃すまいと目を大きく見開いたエドヴィンだった。
「レーナ、しっかりするんだ! 逝かせないっ、私の手の届かないところへなんか、行かないでくれっ!!」
「レーナっ! いっしょにプペ村に帰るんだ!! んで、また一緒に色んなことやって……いっぱいオレを怒ったり、一緒に笑ったり、したいんだよぉ!」
受け止めたレーナの両肩を掴んで揺するアルルクは、涙を堪えて鼻の頭を赤くする。
「レーナ。君にはまだ、この世界に未練があるよね。僕に逢って、気が変わっていても良いんだ! そんな起こるはずの無いことを引き起こす君を、もっと知りたい!」
口を衝いて出た自らの叫びに、愕然と目を見開いたのはリュザスだ。
人の考えすら簡単に誘導出来る最高神リュザスではあるが、彼は人間が自らの意思で彼を信奉することを希求し続けてきた。この世界で思い通りに出来ないことなど何一つ無い彼が唯一求めたもの――それは、他者からの自発的な思慕の念。
最高神の存在も、彼あっての平穏な世界の存在も、当然のものとして顧みなくなったこの世界の人間には、期待などしていなかった。
故に、異界への没入に思慕を燃やす別世界の人間たちに目をつけた。彼らなら、自分の存在を認識し、強く求めるであろうと。
念入りな計画をもって思考を誘導し、数多の中から厳選して取り込んで、注意深く己のもとへと導く。膨大な手間暇をかけても、出逢った途端、魔法が切れたようにひらりと距離をとられはじめた。
そんな予定外すら、心踊っていた事実にやっと気付けた。
レーナが消滅しかけている今になって。
『レーナ! あんたってば、うちの子孫を置いていく気!? 残された気持ちを味わわせる気!? 涙で湖が出来るほど、辛いんだからね!』
「聖女レーナ。貴女が繋いだ土の宝珠と人間の縁のお陰で、アルマジロ殿は姿を変えて尚、存在できています。至高の魔法の粋を知り尽くした私であっても、成し遂げられなかったことを……。
貴女と更にまだ見ぬ魔法の真髄を追求したいのです!」
「レーナ嬢。特異な世界の捉え方で、思いがけぬ改革をもたらす君と、まだまだ言葉を交わし足りないんだ!
その手腕を私の側で、もっと見せて欲しい!」
『レーナ、ぼくの はじめての人間のおともだち! レーナがみつけてくれたから、ぼくはさみしくなくなったんだよ? レーナがいなくなったら さみしいよ!』
『虹の主の寵を受けし娘よ、我との約束を果たさず逝くつもりか? 精霊王を謀った罪の心を抱えて、この世界を去ることが出来るのか? 悔しければ今一度、立ち上がって見せよ』
言葉と、向けられる想いが、徐々にレーナの元へと、力となって集まって行く。
レーナの全身に、寄せられる想いが生命力となって満ちてゆく。
だが、彼女は固く瞼を下ろしたまま、目覚めることはない。
『そぉかぁー。ワレの番の気配がした原因は、お前だったかぁ』
不意に、レーナの周囲を未だ漂っていた、小さな朱の珠から声が響いた。
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