【完結】女神が『かぐや姫』なんて! ~ 愛され令嬢は実利主義!理想の婿を追い求めたら、王国の救世主になりました~

弥生ちえ

文字の大きさ
62 / 385
第一章 婚約破棄編

いざ!円月戦法っ

しおりを挟む
「ろくにオルフィーリアこちらの実力も知らずにそんな事をおっしゃる貴方の方こそ失礼だとは思いませんか?わたしは隣のオルフィーリアと、わたしの上官を侮る発言をした貴方こそが許せないです。」

 しまった。と思った時にはもう手遅れだった。
 正面の暗紅色あんこうしょくの騎士は眉を吊り上げて顔を赤くしているし、ハディス様は目を丸くして背後に立つわたしを仰ぎ見ていた。

「セリレイネ君‥‥気持ちは嬉しいんだが。」
「上官を馬鹿にされて黙っているなんて、それこそ騎士じゃないですよね。まさかここで仲間を貶められるとは思ってもいなくて、ムキになりました。ごめんなさい。」

 反省発言をしたつもりだったのだけれど、どこか間違っていたらしい。正面の騎士の顔色は今や暗紅色の隊服に負けないんじゃないかという程、赤黒くなっている。しかし、ポルトラスさんにはツボに嵌るものがあったのか、急に豪快な笑い声を上げた。

「はっはっはっ!デジレ、お前の負けだ。この方が連れている者が、娘とは言え凡庸な者であるはずがなかろう。これでこの話は仕舞いだ。」

 この一言で、報告会の場はお開きとなった。わたしたち3人は、ポルトラスさん以外の2人の紅色騎士に是非にと乞われて訓練場へと赴くこととなった。



 屋外訓練場では何十人もの騎士や見習いであろう、逞しい体躯の少年や青年たちが木剣を振るったり、格闘術や走り込み、筋力を鍛えるトレーニングを行っている。
 その場の面々はわたしたちに気付くと、あからさまに駆け寄る者はいないまでも、ちらちらと視線を寄越しつつ訓練を続けている。

 訓練場へは、わたしたちの他に先程の報告会の席にいた紅色の騎士が一人とデジレと呼ばれた暗紅色の騎士が同行している。そのせいで背後からわたしに向けられた鋭い視線と、それに反応したオルフェンズの殺気が入り乱れて非常に心地悪い視察となっている。

「集合!」

 訓練場にいた代表とおぼしき暗紅色の騎士が号令を掛けると、あちこちに散っていた隊員は、あっという間にこちらへ駆け寄って整列し始めた。
 とその時、何処からかわたしの足元へ木剣がスルスルと転がってきて、ブーツの爪先にこつりと当たる。どうしてこんなところに、と拾い上げると視界の端にデジレの歪んだ笑みが映った。

「ほぅ、直属の見習い騎士殿は、我らに剣の腕前を見せてくださるのですか?」

 すかさず告げられた言葉に、やられたと思うと同時に、やっぱりねとの思いも浮かぶ。しかし困った。わたしには剣の覚えは全く無いんだけど、逃げるのも癪だしどうしたらいいかなぁ。

「セリレイネさん。」
「はい?オルフィーリアさん?」

 にっこり妖艶な笑みを向ける美女は、殺気に満ちている。駄目だ、今のオルフィーリアに剣を渡しては。大丈夫です!と、力強く頷いてデジレへ向き直る。

「では、剣は自己流で全然自信がないですが、お相手願えますか?」
「よろこんで。」

 余裕の表情のデジレは、隊員の一人に自分用の木剣を持って来るよう指示すると同時に、訓練場の一角に対戦用のスペースを作るよう指示する。ノリノリな様子に辟易しそうだ。
 ベストは勝利だけど、わたしは剣はちゃんと習ったことは無い。魔物の収穫では使うこともあるけど、狩りと人相手の試合は別だろう。だから、ベターを考える。わたしの強みは自己分析力。魔力を巡らせた身体機能の強化。そして前世に紐付けられた発想力。それに伴う応用力。ならば、わたしのベターは―――。

「始め!」

 しまった!考え事してる場合じゃなかった。まず最初は挨拶よねっ。ここでの挨拶は‥‥。

「よろしくお願いしまっす!」

 見習いらしく、ハッキリと大きな声で告げて敬礼をすると、周囲をぐるりと取り囲んでいた隊員達はポカンとし、正面で木剣を構えるデジレは眉を吊り上げた怒りの形相だ。どうやら間違えてしまったらしい。恥ずかしくなり、照れ隠しで首をこてりと傾げると、周囲から密やかなざわめきがおこる。そんなことをしている間に、デジレが踏み込んでくる。

 わたしの発想力&なけなしの剣技の記憶よ、いっけぇー!

「いざ!円月戦法えんげつせんぽうっ」

 ハディスが目を見張るのが視界に映る。
 微かな記憶を頼りに、剣先を下に向けて下段に構え、ゆっくりと円を描くように、剣を構えた腕ごとぐるりと大きく回す。これで円を描く剣の残像視覚効果エフェクトが付けば完璧なんだけど、そこまでは望まない。

「な、なんだそれは!馬鹿にしているのか!」

 激昂げっこうしたデジレが更に踏み込みを深くし、鋭い突きを繰りだ‥‥す?
 ととん、とステップを踏む様に剣先をかわす。剣を引いたデジレがまた構えて剣先を突き出すが、これも爪先立ちのままリズムを取って躱す。
 なんと言うか、遅いわけじゃあないけど良くも悪くも真っ直ぐな剣筋って言うのだろうか。嫌がらせをしてくるご令嬢たちの個体・液体・直接の不規則多人数攻撃と比べると躱しやすい。

「攻撃しますね!」

 えいっと振り回した剣は、ふわんと閉じた扇の様に微かに風を送るだけで、簡単にデジレに躱される。

「本当になんだそれは!真面目にやれ!」
「大真面目ですよ!」

 デジレの真っ直ぐな突きを躱しながら憤慨して言う。お互い躱せるけど当てられない、大凡戦の様相を呈してきた手合わせだけれど、ハディスとオルフェンズは見守りの姿勢だ。ならばこのままで良いと云うことだろう。
 そしてわたしのベターに当たる回答を再度考えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春
恋愛
長年の夢である世界旅行に出掛けた叔父から、寂れた牧場を譲り受けた少女、イーヴィン。 彼女は畑を耕す最中、うっかり破壊途中の岩に頭を打って倒れた。 そして、彼女は気付くーーここが、『ハーモニーハーベスト』という牧場生活シミュレーションゲームの世界だということを。自分が、転生者だということも。 どうやら、神々の悪戯で転生を失敗したらしい。最近流行りの乙女ゲームの悪役令嬢に転生出来なかったのは残念だけれど、これはこれで悪くない。 近くの村には婿候補がいるし、乙女ゲームと言えなくもない。ならば、楽しもうじゃないか。 婿候補は獣医、大工、異国の王子様。 うっかりしてたら男主人公の嫁候補と婿候補が結婚してしまうのに、女神と妖精のフォローで微妙チートな少女は牧場ライフ満喫中! 同居中の過保護な妖精の目を掻い潜り、果たして彼女は誰を婿にするのか⁈ 神々の悪戯から始まる、まったり牧場恋愛物語。 ※この作品は『小説家になろう』様にも掲載しています。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...