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第三章 文化体育発表会編
誰よ、この子鍛えたの―――わたしよ。くぅっ。
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選手控室となっているホールの空気がざわりと揺れ、そこ居いた者達の視線が一斉に開かれた扉から入って来た一人の選手に注がれる。
それは、強豪選手が登場した場面を思わせて、違うでしょー!?と心の中で突っ込みを入れておいたわ。まぁ、実際にはお手本通りの令嬢スマイルを浮かべて注目に応えただけなんだけれど。
「はうっ!」
何人かが胸を押さえてその場に膝をついた。
「ハディス様?オルフェ?出場を控えてる選手の皆さんに殺気を飛ばしたりしたらダメよ?」
「えぇー?ひどいなぁ、僕たちは何もしていないよ。言いたくないけど、今のはセレネのせいだよー。だから、あんまりあちこちに愛想を振り撒かなくて良いからね。」
オルフェンズの陰謀によって急遽出場することになってしまったわたしは、準備に若干手間取ったためにギリギリの控室入りとなったんだけれど、そのせいで注目を浴びるのは分かる。けど何か違うのよねー?
こてりと首を傾げると、オルフェンズがさっと正面に立ち塞がって視界を遮ってしまった。
「んん?オルフェ、どうしたの?」
「いえ、少し御髪が乱れておりますので、整えて差し上げます。」
「おい‥‥銀の。」
「―――ハディス様?オルフェ?あのね‥‥わたしを間に挟んで言い合うのは止めて欲しいかしら。だってその、言い合ってる間ずっとオルフェの手が‥‥。」
膝を落として正面で向き合ったオルフェンズが、髪を整えるためとは言うものの、わたしの頬に手を当てたまま静止してるのって、何の拷問なの――――!!!
真っ赤になったわたしに影響されたのか、何人かの令息が同じ様に顔を赤く染めたのが視界に入ってるし!
ハディスがオルフェの手をぺいっと引き剝がして、何とかその場は事なきを得たわ。色々わたしの心臓の保ちの面で。
「剣術1回戦4年勝者スバル・エクリプス!同じく4年―――――。3年ヘリオス・バンブリア!同じく3年―――。」
体術のトーナメント戦に先んじて行われている剣術の結果のアナウンスが、控室にも響いて来る。
剣術の一回戦が終わり、引き続きわたしがエントリーしている体術の一回戦が行われる。
「「「「「バンブリア部長!!部員一同応援しております!」」」」」
選手入場口に向かうわたしに声を掛けて来るレッド、ブルー、グリーン、イエロー、パープル、ホワイト担当の6人のドッジボール部の令息が声援を送って来る。どこのアイドルグループかと思っけど、わたしがプロデュースした子達だった。近頃はドッジボールにも慣れた彼らはわたしの手を離れて、それぞれのカラーの魅力を引き出し始めた様で、一つの事業が成功したような感慨深さを感じる。
ふと思い付いて彼らに声をかけた。
「みんなさえ良かったら、一緒に入場してもらえないかな?わたしのこの格好も、ドッジボールの活動着として学園生には認知されてるだろうけど、みんなが居た方が分かり易いかと思うんだけど。」
どう?と、こてりと小首を傾げて問うと、部員たちが胸を押さえて絶句し、続いて何故か護衛ズに視線を移して顔色を若干青褪めさせつつも「よろこんで!!」と、返事が返って来た。
舞台となるホールへ踏み入ると、大きな歓声が湧きあがった。令嬢令息問わずの歓声に目を丸くするが、背後に学園で人気を博すドッジボール令息たちを引き連れていることに思い当って、流石彼らだなと納得する。
「体術トーナメント1回戦の出場者、4年セレネ・バンブリア!同じく4年――――。」
割れんばかりの歓声に、目論見通り充分な注目を集められた達成感で思わず笑みがこぼれると、更に歓声のボリュームがアップした。みっともない負け方だけはしないように、スマートに、優雅に‥‥。
「4年体術トーナメント決勝はドッジボール部長セレネ・バンブリア、同じくドッジボール部レッド担当――――。」
高らかに試合開始を付ける太鼓の音が会場のホールに響き、ざわめいていた観客たちも固唾を飲んでわたしとレッド担当令息との対決に注目する。
「部長!ここまでの部活動での特訓の成果を見ていただくべく、全力で頑張ります!」
「わたしの方こそ、イメージを損なわない様、振舞わせてもらいますね。」
言外に、わたしの目的は勝利ではなくバンブリア商会開発品のこの衣装を魅せる事と、ドッジボール部のアピールだと伝えたつもりなんだけど―――。
レッドくん?何だか武術の師を相手にした熱血主人公の試練の一コマを見るような決死の覚悟を漲らせた闘志が見えている気がするんだけど、どう云う事かなー?
「はぁぁああ――――――っ!」
気合十分に飛び出したレッドは、わたしが教えた通り弱いながらも魔力を全身に纏わせた、全力での攻撃態勢を見せてきた。
「へぇっ!?なんてガチガチに強化しちゃってるのぉ!?」
そんな全力で掛かってこられたら、優雅に余裕をもってひらりと躱して立ち回る余裕なんて在りはしない。誰よ、この子鍛えたの―――わたしよ。くぅっ。
そう思いながら、力負けして押しつぶされない様、魔力で筋力強化した。無様に倒れないように、視力強化と瞬発力アップも施した。そして何より、令嬢らしい動きを心掛け、力尽くではなく相手の力を利用する戦い方を心掛けた結果――――。
「4年トーナメント、優勝はセレネ・バンブリア!!!」
なんと優勝してしまったわ。
それは、強豪選手が登場した場面を思わせて、違うでしょー!?と心の中で突っ込みを入れておいたわ。まぁ、実際にはお手本通りの令嬢スマイルを浮かべて注目に応えただけなんだけれど。
「はうっ!」
何人かが胸を押さえてその場に膝をついた。
「ハディス様?オルフェ?出場を控えてる選手の皆さんに殺気を飛ばしたりしたらダメよ?」
「えぇー?ひどいなぁ、僕たちは何もしていないよ。言いたくないけど、今のはセレネのせいだよー。だから、あんまりあちこちに愛想を振り撒かなくて良いからね。」
オルフェンズの陰謀によって急遽出場することになってしまったわたしは、準備に若干手間取ったためにギリギリの控室入りとなったんだけれど、そのせいで注目を浴びるのは分かる。けど何か違うのよねー?
こてりと首を傾げると、オルフェンズがさっと正面に立ち塞がって視界を遮ってしまった。
「んん?オルフェ、どうしたの?」
「いえ、少し御髪が乱れておりますので、整えて差し上げます。」
「おい‥‥銀の。」
「―――ハディス様?オルフェ?あのね‥‥わたしを間に挟んで言い合うのは止めて欲しいかしら。だってその、言い合ってる間ずっとオルフェの手が‥‥。」
膝を落として正面で向き合ったオルフェンズが、髪を整えるためとは言うものの、わたしの頬に手を当てたまま静止してるのって、何の拷問なの――――!!!
真っ赤になったわたしに影響されたのか、何人かの令息が同じ様に顔を赤く染めたのが視界に入ってるし!
ハディスがオルフェの手をぺいっと引き剝がして、何とかその場は事なきを得たわ。色々わたしの心臓の保ちの面で。
「剣術1回戦4年勝者スバル・エクリプス!同じく4年―――――。3年ヘリオス・バンブリア!同じく3年―――。」
体術のトーナメント戦に先んじて行われている剣術の結果のアナウンスが、控室にも響いて来る。
剣術の一回戦が終わり、引き続きわたしがエントリーしている体術の一回戦が行われる。
「「「「「バンブリア部長!!部員一同応援しております!」」」」」
選手入場口に向かうわたしに声を掛けて来るレッド、ブルー、グリーン、イエロー、パープル、ホワイト担当の6人のドッジボール部の令息が声援を送って来る。どこのアイドルグループかと思っけど、わたしがプロデュースした子達だった。近頃はドッジボールにも慣れた彼らはわたしの手を離れて、それぞれのカラーの魅力を引き出し始めた様で、一つの事業が成功したような感慨深さを感じる。
ふと思い付いて彼らに声をかけた。
「みんなさえ良かったら、一緒に入場してもらえないかな?わたしのこの格好も、ドッジボールの活動着として学園生には認知されてるだろうけど、みんなが居た方が分かり易いかと思うんだけど。」
どう?と、こてりと小首を傾げて問うと、部員たちが胸を押さえて絶句し、続いて何故か護衛ズに視線を移して顔色を若干青褪めさせつつも「よろこんで!!」と、返事が返って来た。
舞台となるホールへ踏み入ると、大きな歓声が湧きあがった。令嬢令息問わずの歓声に目を丸くするが、背後に学園で人気を博すドッジボール令息たちを引き連れていることに思い当って、流石彼らだなと納得する。
「体術トーナメント1回戦の出場者、4年セレネ・バンブリア!同じく4年――――。」
割れんばかりの歓声に、目論見通り充分な注目を集められた達成感で思わず笑みがこぼれると、更に歓声のボリュームがアップした。みっともない負け方だけはしないように、スマートに、優雅に‥‥。
「4年体術トーナメント決勝はドッジボール部長セレネ・バンブリア、同じくドッジボール部レッド担当――――。」
高らかに試合開始を付ける太鼓の音が会場のホールに響き、ざわめいていた観客たちも固唾を飲んでわたしとレッド担当令息との対決に注目する。
「部長!ここまでの部活動での特訓の成果を見ていただくべく、全力で頑張ります!」
「わたしの方こそ、イメージを損なわない様、振舞わせてもらいますね。」
言外に、わたしの目的は勝利ではなくバンブリア商会開発品のこの衣装を魅せる事と、ドッジボール部のアピールだと伝えたつもりなんだけど―――。
レッドくん?何だか武術の師を相手にした熱血主人公の試練の一コマを見るような決死の覚悟を漲らせた闘志が見えている気がするんだけど、どう云う事かなー?
「はぁぁああ――――――っ!」
気合十分に飛び出したレッドは、わたしが教えた通り弱いながらも魔力を全身に纏わせた、全力での攻撃態勢を見せてきた。
「へぇっ!?なんてガチガチに強化しちゃってるのぉ!?」
そんな全力で掛かってこられたら、優雅に余裕をもってひらりと躱して立ち回る余裕なんて在りはしない。誰よ、この子鍛えたの―――わたしよ。くぅっ。
そう思いながら、力負けして押しつぶされない様、魔力で筋力強化した。無様に倒れないように、視力強化と瞬発力アップも施した。そして何より、令嬢らしい動きを心掛け、力尽くではなく相手の力を利用する戦い方を心掛けた結果――――。
「4年トーナメント、優勝はセレネ・バンブリア!!!」
なんと優勝してしまったわ。
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