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第四章 女神降臨編
くぅっ‥‥眼福っっ!戦闘前の活力注入、ごちそうさまです!!
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紺色のきらめきが領主軍の疲弊した兵士たちを包み込み、全員の疲れと怪我を巨大な癒しの力で取り除いたその時、感じたことのない強い魔力の塊がいきなりこちらに向けて凄まじい勢いで近付いて来るのを感じ取った。
「え、ハディス様!これって!!」
「うん、間違いない。彼等お待ちかねの奴のお出ましだ。」
「バンブリア嬢は隠れるんだ。」
「いや、無理ですよね?」
峻嶺の向こう、樹海側から猛烈な勢いでこちらに向かって来るただならぬ魔力に、領主軍の面々はまだ気付いてはいないようで、未だ奇跡のような治癒の驚きにざわついている。
「仕方ないなぁー。」
ハディスが領主軍に注意を促そうとしたのだろう。龍の上にすっと立ち上がる――と、膝の上のアポロニウス王子が体勢を崩して落ちそうになって慌てて片腕で抱え上げ、大きく声を張り上げる。
「みんなーちゅうも―――‥‥く?ってあれ?なんで皆そんな静聴姿勢なの‥‥。」
「叔父上‥‥いたたまれんが、今はその理由は考えずに注意を、早く!!」
「あ、うん。――山の向こう、9時の方向から近付いて来る魔力の塊を捕捉した!おそらくここまで諸君が追ってきたワイバーンだ!すぐに到達するぞ!陣形を整えろ!!」
凛と張った声で命令を飛ばすハディスに、若干の戸惑いを見せた兵士たちは、けれどすぐにレヴォルの「指示に従い即刻迎撃態勢!!」の怒声が上がって瞬く間に布陣が整えられた。青龍の背に立っているだけあって、馬上のレヴォルよりも若干高い位置に立ち、周囲を睥睨する凛々しい姿は、普段のマイペースで余力ありまくりな護衛姿とは違いすぎて、同一人物かと目を疑うくらいだ。
なにこれ!カッコイイんですけど!けど騎士団でもそれなりの地位にいるらしいハディスだから、これも本来の姿なのよね。
「叔父上‥‥。そろそろ何とかならないだろうか。」
控え目な王子の声に、ようやくハディスの全体像が目に入って来る。ハディスと同じく、高い位置で頬を赤く染めているアポロニウス王子。その彼は、一人では青龍の背には立てないから仕方がないとはいえ、ハディスの片腕に抱き上げられた状態だ。地面から見上げれば、丁度魔王に攫われるお姫様の様にも見える抱き上げ方だ。青年と少年とは言え美形同士の尊すぎるビジュアルに、さっきは周囲の兵士たちも目を奪われていたからこその静寂だったんだろう。その気持ち、よく分かるわ!!
「くぅっ‥‥眼福っっ!戦闘前の活力注入、ごちそうさまです!!」
「「はぁ!?」」
柏手を打ったわたしに、2人の呆れた声が揃った。
「女神の加護を!」
ハディスの声に応える様に、どこからともなく現れた緋色のネズミの群れが兵士たちの間を縫ってちょこちょこと走り回る。『火鼠の裘』の魔力の化身である彼らは領主軍の膂力を上げる為に、神器の継承者であるハディスの呼びかけに呼応して現れたのだろう。
「(ネズミーズの)みんな!(来てくれて)感謝してるわ!わたしもここで応援するから、一緒にがんばりましょー!!」
「「「「「「はうっ!!!」」」」」」
感謝の気持ちを込めて、みんながんばろー!と、笑顔で手を振れば、何人かの兵士が胸を押さえてしまった‥‥あれ?癒しの魔法切れちゃったのかな?
「セレネ、ほどほどに。――色々マズイから。」
何となく呆れた笑顔のハディスが、そっとわたしの頭に手を置いて俯かせる。なんで顔を伏せさせるのよ、と内心ぷんすかしていると、アポロニウス王子の声で「見事な桜色の魔力だな‥‥。」なんて呟きが耳に入ってきた。無意識に「強化」らしいわたしの魔力が発動したみたいだ。だからハディスに注意されちゃったのかしら、折角貴族たちに目を付けられないよう護ってくれているのに面目ない。
反省する間もなく、山影からワイバーンと思しき首長龍に蝙蝠の様な羽の生えた巨大な魔物が禍々しい黒い魔力を纏って姿を現した。
なっっ、誰よ「蜥蜴の様な身体に蝙蝠の様な羽」なんて表現したのは!だって、あれって、もぉ完全に恐竜のサイズよね!?ブラキオサウルスとか巨大な首長龍の大きさよ!顔なんてこの青龍より凶悪な感じだし、鱗もなんだかトゲトゲしてて絶対やばそうな奴じゃないのぉ――!!
「どうした、バンブリア嬢?顔が引き攣っているぞ。やはりご令嬢はどこか陰に隠れていた方が良いのではないか?」
「アポロニウス王子こそ、こんな伝承にしかない魔物に遭うのなんて初めてですよね?王子に何かあったら大変ですから、静かにハディス様に掴まっていてください。」
「むぅ‥‥。」
不服そうに唇を尖らせる王子と、ふんっと鼻息荒く腕組みをしたわたしを交互に見たハディスは「2人とも大人しくしててね。」なんて苦笑しながらも、いつもより鋭さを増した視線はワイバーンから逸らすことはない。
巨体を運ぶに相応しい、大きな羽で巻き起こされる気流が地上に届き始め、領主軍たちにも緊張が走る。射程に入るや放てるように、十字弓に魔力を纏わせた槍が装填された。
「え、ハディス様!これって!!」
「うん、間違いない。彼等お待ちかねの奴のお出ましだ。」
「バンブリア嬢は隠れるんだ。」
「いや、無理ですよね?」
峻嶺の向こう、樹海側から猛烈な勢いでこちらに向かって来るただならぬ魔力に、領主軍の面々はまだ気付いてはいないようで、未だ奇跡のような治癒の驚きにざわついている。
「仕方ないなぁー。」
ハディスが領主軍に注意を促そうとしたのだろう。龍の上にすっと立ち上がる――と、膝の上のアポロニウス王子が体勢を崩して落ちそうになって慌てて片腕で抱え上げ、大きく声を張り上げる。
「みんなーちゅうも―――‥‥く?ってあれ?なんで皆そんな静聴姿勢なの‥‥。」
「叔父上‥‥いたたまれんが、今はその理由は考えずに注意を、早く!!」
「あ、うん。――山の向こう、9時の方向から近付いて来る魔力の塊を捕捉した!おそらくここまで諸君が追ってきたワイバーンだ!すぐに到達するぞ!陣形を整えろ!!」
凛と張った声で命令を飛ばすハディスに、若干の戸惑いを見せた兵士たちは、けれどすぐにレヴォルの「指示に従い即刻迎撃態勢!!」の怒声が上がって瞬く間に布陣が整えられた。青龍の背に立っているだけあって、馬上のレヴォルよりも若干高い位置に立ち、周囲を睥睨する凛々しい姿は、普段のマイペースで余力ありまくりな護衛姿とは違いすぎて、同一人物かと目を疑うくらいだ。
なにこれ!カッコイイんですけど!けど騎士団でもそれなりの地位にいるらしいハディスだから、これも本来の姿なのよね。
「叔父上‥‥。そろそろ何とかならないだろうか。」
控え目な王子の声に、ようやくハディスの全体像が目に入って来る。ハディスと同じく、高い位置で頬を赤く染めているアポロニウス王子。その彼は、一人では青龍の背には立てないから仕方がないとはいえ、ハディスの片腕に抱き上げられた状態だ。地面から見上げれば、丁度魔王に攫われるお姫様の様にも見える抱き上げ方だ。青年と少年とは言え美形同士の尊すぎるビジュアルに、さっきは周囲の兵士たちも目を奪われていたからこその静寂だったんだろう。その気持ち、よく分かるわ!!
「くぅっ‥‥眼福っっ!戦闘前の活力注入、ごちそうさまです!!」
「「はぁ!?」」
柏手を打ったわたしに、2人の呆れた声が揃った。
「女神の加護を!」
ハディスの声に応える様に、どこからともなく現れた緋色のネズミの群れが兵士たちの間を縫ってちょこちょこと走り回る。『火鼠の裘』の魔力の化身である彼らは領主軍の膂力を上げる為に、神器の継承者であるハディスの呼びかけに呼応して現れたのだろう。
「(ネズミーズの)みんな!(来てくれて)感謝してるわ!わたしもここで応援するから、一緒にがんばりましょー!!」
「「「「「「はうっ!!!」」」」」」
感謝の気持ちを込めて、みんながんばろー!と、笑顔で手を振れば、何人かの兵士が胸を押さえてしまった‥‥あれ?癒しの魔法切れちゃったのかな?
「セレネ、ほどほどに。――色々マズイから。」
何となく呆れた笑顔のハディスが、そっとわたしの頭に手を置いて俯かせる。なんで顔を伏せさせるのよ、と内心ぷんすかしていると、アポロニウス王子の声で「見事な桜色の魔力だな‥‥。」なんて呟きが耳に入ってきた。無意識に「強化」らしいわたしの魔力が発動したみたいだ。だからハディスに注意されちゃったのかしら、折角貴族たちに目を付けられないよう護ってくれているのに面目ない。
反省する間もなく、山影からワイバーンと思しき首長龍に蝙蝠の様な羽の生えた巨大な魔物が禍々しい黒い魔力を纏って姿を現した。
なっっ、誰よ「蜥蜴の様な身体に蝙蝠の様な羽」なんて表現したのは!だって、あれって、もぉ完全に恐竜のサイズよね!?ブラキオサウルスとか巨大な首長龍の大きさよ!顔なんてこの青龍より凶悪な感じだし、鱗もなんだかトゲトゲしてて絶対やばそうな奴じゃないのぉ――!!
「どうした、バンブリア嬢?顔が引き攣っているぞ。やはりご令嬢はどこか陰に隠れていた方が良いのではないか?」
「アポロニウス王子こそ、こんな伝承にしかない魔物に遭うのなんて初めてですよね?王子に何かあったら大変ですから、静かにハディス様に掴まっていてください。」
「むぅ‥‥。」
不服そうに唇を尖らせる王子と、ふんっと鼻息荒く腕組みをしたわたしを交互に見たハディスは「2人とも大人しくしててね。」なんて苦笑しながらも、いつもより鋭さを増した視線はワイバーンから逸らすことはない。
巨体を運ぶに相応しい、大きな羽で巻き起こされる気流が地上に届き始め、領主軍たちにも緊張が走る。射程に入るや放てるように、十字弓に魔力を纏わせた槍が装填された。
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