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第四章 女神降臨編
まさかの相手だけあって手強そうだわ。頑張れわたし!
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粘るわたしに、しぶしぶ話してくれたギリムの言うには、ハディスたち王族は、天の川出現に伴う魔物増加と、今後も流れ落ちる可能性のある月の忌子対策のために、王城に留まって対策をとっているらしい。具体的に何をしているのかは、王族でも高位貴族でもないギリムには分からないけれど、近く大神殿主であり継承者でもあるミワロマイレ・アッキーノが王のもとへ召集される様で、今度はギリムが神殿と救護院をひとりで取り仕切らなくてはならなくなるんだって。まぁ、元々ギリム一人が取り仕切っていたところがあるから大丈夫なんだろうけどね。
そんなに近くに居るのなら直接向かおうと思い立って、放課後に学舎から出たその足で同じ大門の中の王城まで向かってみた。あっさり会えるとは思ってはいなかったけど、以前の月見の宴で継承者候補だって紹介されて、わたしの立場が国王への直答が許されるものになったって云う事だったから、もしかするとって思った訳よ。
「継承者候補なんですけど、中へ入れていただくことは出来ませんか?」
「――――‥‥いやいや、お嬢さん?我々も通りたい人全てを入れられる訳ではないよ?この正門は正当な理由があり、相応の手続きを踏んだ客人のみお通しするのが我々の務めだからね。」
門番たちは声を掛けるとしばらくキョトンとした後、モノを知らない子供を諭すようにやんわりと断りの言葉を告げて来た。――うん、分かってた。けど直答云々があったから、もしかしてわたしって凄い権力を持っちゃったのかなぁなんて勘違いしちゃったのよ!くぅぅっ、恥ずかしい。
「ですよねー‥‥失礼しました!」
がばっと勢いよく頭を下げたわたしは一目散に迎えの馬車の待つ学園へ逆戻りしたのだった。
ぱたぱたと勢い良く駆けて行く桜色の柔らかなウエーブを描く髪を揺らす後姿を見送りながら、門番がすぐ脇に備えられた詰所からこちらを静かに見詰める男を振り返る。
「これで宜しいのでしょうか?今の方は入城を許されている継承者候補のセレネ・バンブリア様では御座いませんでしたか?」
「うん良いんだ、ありがとねー。僕も無理を言って悪かったね。」
「いえ‥‥王弟殿下のご指示とあれば、従うのも我々の務めで御座います。」
あっという間に後姿が見えなくなってしまったセレネは、きっと魔力による身体強化を使って駆けているのだろう。今も彼女が通った後には僅かに魔力の痕跡とも言える桜色の欠片がキラキラと漂っている。
「全くもぉ、僕の気も知らないで。こっちが気を抜くとすぐに厄介事に突っ込んで行こうとするんだもん。しかも必要以上に目立っちゃうし、本当に困った娘だよねー。」
腕を組んで困った風な態度をとりながらも、どこか嬉しそうな男は事実喜んでいた。何も言わずに離れた自分を追って彼女が来たことに。けれど、月の忌子や魔物発生状況が悪化の一途を辿る今となっては、下手に継承者側に引き込むべきではなかったと後悔もしているし、責任も感じている。
「せめて、近付けないように、離れて居られるようにさせてもらうよ。」
赤髪の男の呟いた言葉は、自嘲気味な笑みに紛れて、誰の耳にも届くことはなかった。
絶対に王城の中には居たはずなのよ。
忍び込めるかしら。オルフェンズみたいに、姿を消して物音もたてずに移動できるなら簡単に出来そうなんだけど、さすがにただの令嬢でしかないわたしにはそこまでの事は出来ないし。さらに卒業祝賀夜会でオルフェンズが騒ぎを起こしたから、対策が強化されてるのよね。だとしたら忍び込むのは絶望的ね。
なら、アイリーシャの屋敷みたいに堂々と入り込める方法は―――。
「破廉恥娘。なんでここに居るんだい?」
中央神殿の礼拝堂正面に鎮座する女神像を備えた祭壇横に、気だるげな様子で立ちながら胡乱な瞳にじっとりと見詰めて来る黄髪長身の美形ならではの迫力に、思わずあとじさりそうになるのをぐっと堪え、にっこりと令嬢らしい微笑みを浮かべる。
「馭者に、世情が不安定で気持ちが落ち込む皆さんのために、微力ながら、少しでも晴れやかな気持ちになれるよう、お祈りをしたいと言いましたら、下校のついでにこちらへ立ち寄らせてくれましたの。おほほ‥‥。」
夕刻の中央神殿は人影もまばらで、ゆっくりと祈りの時間を取りたいと云うわたしの希望を聞いてくれた男衆たちは、神殿と外とをつなぐ大扉の外で待機してくれている。
黄色い髪の美丈夫が、何をわざとらしいことを言っている?と言わんばかりに、こちらに向ける視線を更に剣呑にする。
正攻法で無理なら搦め手‥‥この人と組むとはまさか考えないでしょ?って潜入案を考えた結果、わたしはミワロマイレに協力してもらえる様、頼み込みに来たんだけど、まさかの相手だけあって手強そうだわ。頑張れわたし!
そんなに近くに居るのなら直接向かおうと思い立って、放課後に学舎から出たその足で同じ大門の中の王城まで向かってみた。あっさり会えるとは思ってはいなかったけど、以前の月見の宴で継承者候補だって紹介されて、わたしの立場が国王への直答が許されるものになったって云う事だったから、もしかするとって思った訳よ。
「継承者候補なんですけど、中へ入れていただくことは出来ませんか?」
「――――‥‥いやいや、お嬢さん?我々も通りたい人全てを入れられる訳ではないよ?この正門は正当な理由があり、相応の手続きを踏んだ客人のみお通しするのが我々の務めだからね。」
門番たちは声を掛けるとしばらくキョトンとした後、モノを知らない子供を諭すようにやんわりと断りの言葉を告げて来た。――うん、分かってた。けど直答云々があったから、もしかしてわたしって凄い権力を持っちゃったのかなぁなんて勘違いしちゃったのよ!くぅぅっ、恥ずかしい。
「ですよねー‥‥失礼しました!」
がばっと勢いよく頭を下げたわたしは一目散に迎えの馬車の待つ学園へ逆戻りしたのだった。
ぱたぱたと勢い良く駆けて行く桜色の柔らかなウエーブを描く髪を揺らす後姿を見送りながら、門番がすぐ脇に備えられた詰所からこちらを静かに見詰める男を振り返る。
「これで宜しいのでしょうか?今の方は入城を許されている継承者候補のセレネ・バンブリア様では御座いませんでしたか?」
「うん良いんだ、ありがとねー。僕も無理を言って悪かったね。」
「いえ‥‥王弟殿下のご指示とあれば、従うのも我々の務めで御座います。」
あっという間に後姿が見えなくなってしまったセレネは、きっと魔力による身体強化を使って駆けているのだろう。今も彼女が通った後には僅かに魔力の痕跡とも言える桜色の欠片がキラキラと漂っている。
「全くもぉ、僕の気も知らないで。こっちが気を抜くとすぐに厄介事に突っ込んで行こうとするんだもん。しかも必要以上に目立っちゃうし、本当に困った娘だよねー。」
腕を組んで困った風な態度をとりながらも、どこか嬉しそうな男は事実喜んでいた。何も言わずに離れた自分を追って彼女が来たことに。けれど、月の忌子や魔物発生状況が悪化の一途を辿る今となっては、下手に継承者側に引き込むべきではなかったと後悔もしているし、責任も感じている。
「せめて、近付けないように、離れて居られるようにさせてもらうよ。」
赤髪の男の呟いた言葉は、自嘲気味な笑みに紛れて、誰の耳にも届くことはなかった。
絶対に王城の中には居たはずなのよ。
忍び込めるかしら。オルフェンズみたいに、姿を消して物音もたてずに移動できるなら簡単に出来そうなんだけど、さすがにただの令嬢でしかないわたしにはそこまでの事は出来ないし。さらに卒業祝賀夜会でオルフェンズが騒ぎを起こしたから、対策が強化されてるのよね。だとしたら忍び込むのは絶望的ね。
なら、アイリーシャの屋敷みたいに堂々と入り込める方法は―――。
「破廉恥娘。なんでここに居るんだい?」
中央神殿の礼拝堂正面に鎮座する女神像を備えた祭壇横に、気だるげな様子で立ちながら胡乱な瞳にじっとりと見詰めて来る黄髪長身の美形ならではの迫力に、思わずあとじさりそうになるのをぐっと堪え、にっこりと令嬢らしい微笑みを浮かべる。
「馭者に、世情が不安定で気持ちが落ち込む皆さんのために、微力ながら、少しでも晴れやかな気持ちになれるよう、お祈りをしたいと言いましたら、下校のついでにこちらへ立ち寄らせてくれましたの。おほほ‥‥。」
夕刻の中央神殿は人影もまばらで、ゆっくりと祈りの時間を取りたいと云うわたしの希望を聞いてくれた男衆たちは、神殿と外とをつなぐ大扉の外で待機してくれている。
黄色い髪の美丈夫が、何をわざとらしいことを言っている?と言わんばかりに、こちらに向ける視線を更に剣呑にする。
正攻法で無理なら搦め手‥‥この人と組むとはまさか考えないでしょ?って潜入案を考えた結果、わたしはミワロマイレに協力してもらえる様、頼み込みに来たんだけど、まさかの相手だけあって手強そうだわ。頑張れわたし!
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