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第四章 女神降臨編
前世女子の必殺技の『さしすせそ』
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決死の覚悟で到達したのに、当のベヒモスの前脚に絡みつくムルキャンは不機嫌顔を隠そうともしない。けど、もとよりムルキャンに好かれる気もないし、そんな些細なことは、この大事の前ではささやかな問題だ。取り敢えず交渉のため、文字通りの足場の確保をしようと、ベヒモスの前脚にまだ巻き付いてはいるムルキャンの枝に掴まる。
と云うわけで、交渉開始よ!
「ちょっと、あなた!ものは相談なんだけど、このベヒモスの動き、もう少しなんとかならない?暴れないように全身を拘束できない?」
「はぁぁぁ――――!??小娘ぇ、ちょっと買い物のついでを頼むみたいな軽い言い方で、なんという無茶をぉぉ?どう見ても我が手足では届かんだろうが!」
か弱い乙女が折角会いにやって来たのに、顎が落ちそうなくらいポカンと口を開いた呆れ顔で、なんて愛想のない対応をするのよ。けど、ムルキャンがわたしの頼みを素直に聞いてくれないことなんて分かりきってるわ!
「そこをなんとか!だって貴方の頑張り一つで戦況が一気に変わりそうなのよ。貴方次第なのよ。いよっ、ミーノマロ公爵の懐刀!右腕!最終兵器!公爵自慢の秘蔵っ子!」
必殺、イシケナルをダシに、おだてて誉めて気分良く動いてもらう作戦よ!
「この‥‥こっ‥‥こむす‥‥くぅぅっ!‥‥‥‥このムルキャンに任せるがよい!」
「ふっ‥‥かかったわね。」
「何だ?」
「なんでもありませーん!ミーノマロ公爵に頼りにされてる凛々しい姿に見とれただけでーす!」
誉めたのに疑わしげな視線を向けられつつ、それでもイシケナルの為になっていると賛美されるのは満更でもないようで、しまいには「ちょっとだけだからな!」なんてツンデレ発言が飛び出す。
イイ感じに調子に乗ってくれたところで、前世女子の必殺技の『さしすせそ』を繰り出してとどめを刺す。
「最高!信じられないくらい頼りになるわ!凄い特殊技能よね!ミーノマロ公爵への誠実さが溢れ出てるわ!想像以上のハイスペックさに溜息が出そう~~!!」
「ほっほっほぉぉぉぉ~~~!むっふぅ、そうであろう!さもあらん!ようやく小娘も我の力が分かったかぁ~~~~!!」
「そんなワケでよろしくっ!!」
「任せておけ―――――い!!!」
調子に乗って俄然やる気を漲らせたムルキャン・トレントに強化魔法が呼応して、強く影響を及ぼし、トレントの全身がピンク色のスパンコールに包まれたようにキラキラと眩く輝く。魔法少女の変身シーンみたいなキラキラしいエフェクトを伴って、樹木らしい形状だったはずの姿は、飴を細く引き伸ばしたかのように、幹を梢の様に細く変化させて樹高を伸ばし、そこから更に細く長く伸び続けて仕舞いには葦の様な細さになってしまった。わたしは掴まっているムルキャンから手が離れないように、急速に変わる握り具合に対応するのに必死だ。
ムルキャン・トレント改め、ムルキャン・葦は、トレントであった時と同様に、身体を自らの意思で蠢かせることは出来るようで、動く様子はどちらかというと木や葦の様な植物ではなく神経細胞のニューロンが勝手に動いているような不気味な印象になっている。
けれど、幼木であったときよりも格段に長さを増したムルキャンは、わたしのオーダー通りにベヒモスを拘束しようと、全身を使って前脚のみならず、その漆黒に近い巨大な胴体から後脚にかけて螺旋を描く様にぐるぐると巻き付いてゆく。
「くっそぉぉぉ!口惜しやっ!!」
急に叫び声を上げたムルキャンに「どうしたの!?」と声を掛けると、下唇を嚙み締めた半泣き顔で「あれを見よ!」と根であった物が細く伸びた先を視線で示している。
前脚2本を肩までがっちりと一括りにされたベヒモスは、不快気に咆哮を上げ続けている。目を潰されたことによる恐慌状態のどさくさに紛れて自由を奪われ、更に怒りを募らせているけれど、藻掻けば藻掻くほど体勢が崩れてしまい、今は身体を支えるためだけに前足を地面に突っ張っている状態だ。
「何がまずいの?!むしろ動きが鈍くなって好機じゃない!」
「ちがうっ!!後脚を抑えられんっ!身体が届かん!!これではベヒモスの動きは抑えられんのだ!!」
切羽詰まったムルキャンの叫びに、どう云う事?と首を傾げかけたところで、視界が急上昇する。一瞬、上方へ放り投げられたかと思う位の勢いだったけど、わたしの手は変わらずベヒモスの前肢に絡み付いたムルキャンをしっかりと掴んでいる。けれどもわたし達の場所はぐんぐん上昇してあっという間に3階建ての窓よりも高い景色を見下ろす格好になってしまった。
と云うわけで、交渉開始よ!
「ちょっと、あなた!ものは相談なんだけど、このベヒモスの動き、もう少しなんとかならない?暴れないように全身を拘束できない?」
「はぁぁぁ――――!??小娘ぇ、ちょっと買い物のついでを頼むみたいな軽い言い方で、なんという無茶をぉぉ?どう見ても我が手足では届かんだろうが!」
か弱い乙女が折角会いにやって来たのに、顎が落ちそうなくらいポカンと口を開いた呆れ顔で、なんて愛想のない対応をするのよ。けど、ムルキャンがわたしの頼みを素直に聞いてくれないことなんて分かりきってるわ!
「そこをなんとか!だって貴方の頑張り一つで戦況が一気に変わりそうなのよ。貴方次第なのよ。いよっ、ミーノマロ公爵の懐刀!右腕!最終兵器!公爵自慢の秘蔵っ子!」
必殺、イシケナルをダシに、おだてて誉めて気分良く動いてもらう作戦よ!
「この‥‥こっ‥‥こむす‥‥くぅぅっ!‥‥‥‥このムルキャンに任せるがよい!」
「ふっ‥‥かかったわね。」
「何だ?」
「なんでもありませーん!ミーノマロ公爵に頼りにされてる凛々しい姿に見とれただけでーす!」
誉めたのに疑わしげな視線を向けられつつ、それでもイシケナルの為になっていると賛美されるのは満更でもないようで、しまいには「ちょっとだけだからな!」なんてツンデレ発言が飛び出す。
イイ感じに調子に乗ってくれたところで、前世女子の必殺技の『さしすせそ』を繰り出してとどめを刺す。
「最高!信じられないくらい頼りになるわ!凄い特殊技能よね!ミーノマロ公爵への誠実さが溢れ出てるわ!想像以上のハイスペックさに溜息が出そう~~!!」
「ほっほっほぉぉぉぉ~~~!むっふぅ、そうであろう!さもあらん!ようやく小娘も我の力が分かったかぁ~~~~!!」
「そんなワケでよろしくっ!!」
「任せておけ―――――い!!!」
調子に乗って俄然やる気を漲らせたムルキャン・トレントに強化魔法が呼応して、強く影響を及ぼし、トレントの全身がピンク色のスパンコールに包まれたようにキラキラと眩く輝く。魔法少女の変身シーンみたいなキラキラしいエフェクトを伴って、樹木らしい形状だったはずの姿は、飴を細く引き伸ばしたかのように、幹を梢の様に細く変化させて樹高を伸ばし、そこから更に細く長く伸び続けて仕舞いには葦の様な細さになってしまった。わたしは掴まっているムルキャンから手が離れないように、急速に変わる握り具合に対応するのに必死だ。
ムルキャン・トレント改め、ムルキャン・葦は、トレントであった時と同様に、身体を自らの意思で蠢かせることは出来るようで、動く様子はどちらかというと木や葦の様な植物ではなく神経細胞のニューロンが勝手に動いているような不気味な印象になっている。
けれど、幼木であったときよりも格段に長さを増したムルキャンは、わたしのオーダー通りにベヒモスを拘束しようと、全身を使って前脚のみならず、その漆黒に近い巨大な胴体から後脚にかけて螺旋を描く様にぐるぐると巻き付いてゆく。
「くっそぉぉぉ!口惜しやっ!!」
急に叫び声を上げたムルキャンに「どうしたの!?」と声を掛けると、下唇を嚙み締めた半泣き顔で「あれを見よ!」と根であった物が細く伸びた先を視線で示している。
前脚2本を肩までがっちりと一括りにされたベヒモスは、不快気に咆哮を上げ続けている。目を潰されたことによる恐慌状態のどさくさに紛れて自由を奪われ、更に怒りを募らせているけれど、藻掻けば藻掻くほど体勢が崩れてしまい、今は身体を支えるためだけに前足を地面に突っ張っている状態だ。
「何がまずいの?!むしろ動きが鈍くなって好機じゃない!」
「ちがうっ!!後脚を抑えられんっ!身体が届かん!!これではベヒモスの動きは抑えられんのだ!!」
切羽詰まったムルキャンの叫びに、どう云う事?と首を傾げかけたところで、視界が急上昇する。一瞬、上方へ放り投げられたかと思う位の勢いだったけど、わたしの手は変わらずベヒモスの前肢に絡み付いたムルキャンをしっかりと掴んでいる。けれどもわたし達の場所はぐんぐん上昇してあっという間に3階建ての窓よりも高い景色を見下ろす格好になってしまった。
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