341 / 385
第四章 女神降臨編
転生前ね……って、はぁ?!
しおりを挟む
いつも通りの会話の調子で、とんでもないことを説明しだしたオルフェンズに、ただ目をパチクリするしかない。
「永い年月を掛けて王国中から集め、蓄えられていた黒い魔力ですからね、それはもう膨大な量です。桜の君の稀有なるお力により消えた部分もありますが、大きな塊でなくなっただけで、細切れになってあちこちに飛んで行ったのはご覧になりませんでしたか?」
――確かに見た。
けどあれは朝のヒーロー番組に出てくる巨大化した敵が爆散したのと同じで、倒したことになったんじゃあ……ない……と?
「なんだか裏切られた気分だわ」
「何か?」
薄く笑むオルフェンズは、どこか上機嫌だ。きっとまた、何らかの方法で飛び散った獅子退治にわたしを巻き込む算段でもしているんだろう。
「散り際が潔くないわよ。どこまでも粘り強く残ろうとし続けるなんて現実的すぎるわ!そこはスパンと消え去るので良いんじゃないの?意思の無い魔力の塊の癖にぃ~!」
まだまだ続く獅子の影響を受けた強力な魔物出現の予告に、八つ当たりじみた声を張り上げる。けど、ほっとした気持ちもあるからこその軽口だ。オルフェンズが母とする「かぐや姫」を完全に消滅させたわけではないと分かったから。
「長い間、強い女性の魔力に強制的に抱き込まれていたモノですからね。粗方その女性の影響を受けて人間臭くなったんでしょう」
警鐘の鳴る彼方を見遣ったオルフェンズは、特に感慨深いものは無いらしく、淡々と語っている――けど。
「女性って……オルフェのお母様でしょ」
「えぇ、神楽耶と名乗っていました。転生前の名前らしいですが」
「転生前ね……って、はぁ?!」
聞き捨てならない単語に目を剥いたわたしの反応はさらりと流してオルフェンズが続ける。
「転生者なんて、この国では珍しいことでは有りませんよ?母がそうであったのは、前世の強すぎる魔力があったからこそですが。母が仕掛けた魔法の効果で……―――ね?」
――ね?って言われても!はいそうですかなんて納得できないでしょう!?って云うか、オルフェンズは気付いてるの?!いやいやそれより、わたし以外にも転生者が居るって言うの!?バンブリア商会のピンチ―――!!
他にも居ると云うことは、先の記憶の中のモノをそのまま再現したのでは、競合他社がいっぱい現れると云うことだ。一瞬バンブリア商会の危機が頭を過ったけれど、すぐに思い直す。今のところ手強い競合他社は居ないと云う事実。そして前世には無かった、魔法や魔物を利用した商品開発にかけた長年の実績。
――うん、全く同じものを同じ素材で作っているわけじゃないからうちの商会はまだイケる!
「見てください。この国の峻嶺をただの黒い魔力の封印の結果出来たものだとでも思いますか?もっと上から全体を眺めれば、面白いモノが見えたはずです」
心の中はいつの間にか商会の将来構想に飛んでいるわたしに向かって、オルフェンズが滔々と語る様子を、ヘリオスとハディスが胡乱な目で見ている気がする。ぱっと振り返ると、ヘリオスとハディスは揃って苦笑する。
「バンブリア嬢!今のオルフェンズ卿の話が事実なら……いや、事実なのだろうが俄には飲み込めんが。その様な転生を辿った人間が存在することも信じられんが……その……国を継ぐ身としては確認しておきたく、だな」
何やらアポロニウス王子がごにょごにょ言い始める。
「いや、だから何でセレに頼むかな?可愛い甥っ子一人くらい僕が運ぶよ?」
ハディスが黒い圧を纏った笑顔で王子に詰め寄る。けど、まぁ、王子の言いたいことは分かった。青龍に乗って、上空から確認したいと。わたしも転生云々の話が出た後でオルフェンズから出たその話がとても気になっている。
「けど、だとしてもわたしかポリンド講師が青龍に乗らなきゃ、動きの指示は出来ないんじゃないですか?それに、今まで以上の高所に行くのでしたら念のため発生源のポリンド講師も同行願った方が良いと思うんですよ。高所恐怖症だっていうのがネックになりますけど」
だから、わたしがポリンドを運ぶ必要があると説明すると、それぞれが黙り込んで思案顔になった。
「兄上?ここは漢を見せて自力でご同行願いたいんだけど」
「はぁ!?おまっ……私にあんな肝が冷えて、目も眩んで、頭がクラクラする場所へ一人で!落下の恐怖に慄きながら!付いて来いって言うの!?」
王弟2人が必死の攻防を始めた。
「だとしたらやっぱり、ポリンド講師はわたしが運ぶことになるんですよね」
「「「えぇぇ!??」」」
色々声が揃った。多分、オルフェンズと王子以外全員分くらいじゃないかなと思う。オルフェンズは上空へ行くことに興味が無いだけで、アポロニウス王子はそんな結論になることが分かっていたんだろう。だから、王子の計画では、わたしが王子を同行し、ハディスにポリンドを同行させようとしたってところか。王子とオルフェンズの組み合わせが不味いことはさっきで実証済みだしね……。
そんな訳で『フージュ王国峻嶺観察ツアー~青龍に乗って~』の参加者は、わたし、ポリンド、アポロニウス王子、ハディスの4人になった。
「永い年月を掛けて王国中から集め、蓄えられていた黒い魔力ですからね、それはもう膨大な量です。桜の君の稀有なるお力により消えた部分もありますが、大きな塊でなくなっただけで、細切れになってあちこちに飛んで行ったのはご覧になりませんでしたか?」
――確かに見た。
けどあれは朝のヒーロー番組に出てくる巨大化した敵が爆散したのと同じで、倒したことになったんじゃあ……ない……と?
「なんだか裏切られた気分だわ」
「何か?」
薄く笑むオルフェンズは、どこか上機嫌だ。きっとまた、何らかの方法で飛び散った獅子退治にわたしを巻き込む算段でもしているんだろう。
「散り際が潔くないわよ。どこまでも粘り強く残ろうとし続けるなんて現実的すぎるわ!そこはスパンと消え去るので良いんじゃないの?意思の無い魔力の塊の癖にぃ~!」
まだまだ続く獅子の影響を受けた強力な魔物出現の予告に、八つ当たりじみた声を張り上げる。けど、ほっとした気持ちもあるからこその軽口だ。オルフェンズが母とする「かぐや姫」を完全に消滅させたわけではないと分かったから。
「長い間、強い女性の魔力に強制的に抱き込まれていたモノですからね。粗方その女性の影響を受けて人間臭くなったんでしょう」
警鐘の鳴る彼方を見遣ったオルフェンズは、特に感慨深いものは無いらしく、淡々と語っている――けど。
「女性って……オルフェのお母様でしょ」
「えぇ、神楽耶と名乗っていました。転生前の名前らしいですが」
「転生前ね……って、はぁ?!」
聞き捨てならない単語に目を剥いたわたしの反応はさらりと流してオルフェンズが続ける。
「転生者なんて、この国では珍しいことでは有りませんよ?母がそうであったのは、前世の強すぎる魔力があったからこそですが。母が仕掛けた魔法の効果で……―――ね?」
――ね?って言われても!はいそうですかなんて納得できないでしょう!?って云うか、オルフェンズは気付いてるの?!いやいやそれより、わたし以外にも転生者が居るって言うの!?バンブリア商会のピンチ―――!!
他にも居ると云うことは、先の記憶の中のモノをそのまま再現したのでは、競合他社がいっぱい現れると云うことだ。一瞬バンブリア商会の危機が頭を過ったけれど、すぐに思い直す。今のところ手強い競合他社は居ないと云う事実。そして前世には無かった、魔法や魔物を利用した商品開発にかけた長年の実績。
――うん、全く同じものを同じ素材で作っているわけじゃないからうちの商会はまだイケる!
「見てください。この国の峻嶺をただの黒い魔力の封印の結果出来たものだとでも思いますか?もっと上から全体を眺めれば、面白いモノが見えたはずです」
心の中はいつの間にか商会の将来構想に飛んでいるわたしに向かって、オルフェンズが滔々と語る様子を、ヘリオスとハディスが胡乱な目で見ている気がする。ぱっと振り返ると、ヘリオスとハディスは揃って苦笑する。
「バンブリア嬢!今のオルフェンズ卿の話が事実なら……いや、事実なのだろうが俄には飲み込めんが。その様な転生を辿った人間が存在することも信じられんが……その……国を継ぐ身としては確認しておきたく、だな」
何やらアポロニウス王子がごにょごにょ言い始める。
「いや、だから何でセレに頼むかな?可愛い甥っ子一人くらい僕が運ぶよ?」
ハディスが黒い圧を纏った笑顔で王子に詰め寄る。けど、まぁ、王子の言いたいことは分かった。青龍に乗って、上空から確認したいと。わたしも転生云々の話が出た後でオルフェンズから出たその話がとても気になっている。
「けど、だとしてもわたしかポリンド講師が青龍に乗らなきゃ、動きの指示は出来ないんじゃないですか?それに、今まで以上の高所に行くのでしたら念のため発生源のポリンド講師も同行願った方が良いと思うんですよ。高所恐怖症だっていうのがネックになりますけど」
だから、わたしがポリンドを運ぶ必要があると説明すると、それぞれが黙り込んで思案顔になった。
「兄上?ここは漢を見せて自力でご同行願いたいんだけど」
「はぁ!?おまっ……私にあんな肝が冷えて、目も眩んで、頭がクラクラする場所へ一人で!落下の恐怖に慄きながら!付いて来いって言うの!?」
王弟2人が必死の攻防を始めた。
「だとしたらやっぱり、ポリンド講師はわたしが運ぶことになるんですよね」
「「「えぇぇ!??」」」
色々声が揃った。多分、オルフェンズと王子以外全員分くらいじゃないかなと思う。オルフェンズは上空へ行くことに興味が無いだけで、アポロニウス王子はそんな結論になることが分かっていたんだろう。だから、王子の計画では、わたしが王子を同行し、ハディスにポリンドを同行させようとしたってところか。王子とオルフェンズの組み合わせが不味いことはさっきで実証済みだしね……。
そんな訳で『フージュ王国峻嶺観察ツアー~青龍に乗って~』の参加者は、わたし、ポリンド、アポロニウス王子、ハディスの4人になった。
0
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤
凪子
恋愛
私はローラ・クイーンズ、16歳。前世は喪女、現世はクイーンズ公爵家の公爵令嬢です。
幼いころからの婚約者・アレックス様との結婚間近……だったのだけど、従妹のアンナにあの手この手で奪われてしまい、婚約破棄になってしまいました。
でも、大丈夫。私には秘密の『ポイント帳』があるのです!
ポイントがたまると、『いいこと』がたくさん起こって……?
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
「不吉な黒」と捨てられた令嬢、漆黒の竜を「痛いの飛んでいけー!」で完治させてしまう
ムラサメ
恋愛
漆黒の髪と瞳。ただそれだけの理由で「不吉なゴミ」と虐げられてきた公爵令嬢ミア。
死の森に捨てられた彼女が出会ったのは、呪いに侵され、最期を待つ最強の黒竜と、その相棒である隣国の竜騎士ゼノだった。
しかし、ミアが無邪気に放った「おまじない」は、伝説の浄化魔法となって世界を塗り替える。
向こう見ずな天才騎士に拾われたミアは、隣国で「女神」として崇められ、徹底的に甘やかされることに。
一方、浄化の源を失った王国は、みるみるうちに泥沼へと沈んでいき……?
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる