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10章 新しい仲間

1話 達郎、忌み人を拾う

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 達郎は、菊の館に来て1か月が経つ。
 はじめは、なれなかったが魔法剣士をしてきたころのように自由でなく息苦しさを感じる。
 達郎は菊をはじめに美女に囲まれている。
 だが、囲まれているだけである。
 千代音は弥次郎と夫婦であるし、残りの菊たちはつなとハーレム状態である。
 達郎にはストレスが溜まってきている。
 達郎は弥次郎に聞く
 「町に出ても大丈夫か。」
 「ああ、大丈夫だ。」
 「そうか。」
 「一緒に行こうか。」
 「来るのか。色街だぞ。」
 「千代音にばれたら大変だ。やめておくよ。」
 「そうか。」
 「みんなに内緒で行くんだぞ。」
 「分かった。」
達郎には、報奨金があり、軍資金は余裕がある。
 彼は館をそっと抜け出すと町に出てゆく。
 そして色街で豪遊して憂さを晴らす。
 裏道を歩いていると男が10人程何かを取り囲んでいる。
 機嫌の良い達郎は、男たちに声をかける
 「何やっているんだい。」
 「これから女をまわすのさ。忌み人の女だがな。」
 「忌み人ならあとくされもない。」
 「お兄さんもどうだい。」
見ると狐の面を付けた女の忌み人が男たちに手足を押さえつけられている。
 男が着物をはだけさせる。
 「いい胸しているな。」
 「面はとるなよ。どうせ見られたもんじゃないからな。」
達郎は、ムカついてくる、清音や千代音と過ごしてきたせいかもしれない。
 以前なら馬鹿らしいと見過ごしていただろう。
 「馬鹿なことはやめろ。」
達郎は怒鳴っていた。
 男たちが振り返る
 「忌み人に何をしようが勝手だろ。」
男が言うと達郎は殴り飛ばす。
 男たちは、達郎に向かってゆく。
 しかし、男たちは達郎にまったくかなわない。
 達郎も驚く、男たりの動きがひどく遅く見えるのだ。
 達郎は男たちを全員殴り倒す。
 羽織っていた着物を忌み人にかけると忌み人を連れて逃げ出す。
 人目がある表通りに出るとゆっくり歩きだす。
 忌み人が達郎に質問する
 「どうして助けてくれたのですか。」
 「忌み人に剣術を習っているからかな。」
達郎は適当に答える
 「ありがとうございます。お礼はいくらほど払えばよいですか。」
 「お金はいらないよ。」
 「返せるものがありません。あとは体しか・・・乱暴にしないでくださいね。」
 「そちらもいいよ。そうしたいからしただけさ。」
 「はぁ。」
忌み人は納得いかないようである。
 「それなら一緒に食事してくれ。」
 「そんなことでいいのですか。」
 「ああ。」
達郎は忌み人を連れて食事処に入る。
 店主が文句を言いに来る。
 達郎は、官9位の証を出す。
 証には帝の家紋板倉巴が刻まれている。
 店主は顔色が変わり
 「姫様の所の方でしたか。どうぞ。」
と言う。
 達郎と忌み人は席に着く。
 忌み人は達郎に
 「忌み人の私が入ってよかったんですか。」
 「構わないよ。俺は達郎と言うんだ。」
 「私は美代みよ、魔法剣士をしています。」
 「魔法剣士をしているのに何であんな目に遭っているんだ。」
 「あの男たちに目を付けられているんです。」
 「どうしてだ。」
 「最初は通りで肩が当たったということで、お詫びにお金を払ったのです。」
 「それから、会うたびに言いがかりをつけられて、お金を払っていたのですが。」
 「今日は体で払えと言われたのです。」
 「魔法剣士なら戦えばいいだろ。」
 「忌み人には許されません。」
 「そんなことないよ。」
 「いさかいになれば忌み人が悪いことになります。」
達郎はこのままでは美代がひどい目に遭うと思う。
 「俺は下級魔法騎士だが菊姫様の所にいるんだ。」
 「すごいですね。」
 「俺と一緒に来るか。」
 「あ、あの。私は忌み人ですよ。」
 「構わないよ。姫様の所には忌み人が3人いるから。」
 「はい、達郎様が来いというなら従います。」
達郎は何か違うような気がするが、美代を連れていくことにする。
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