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14章 囚われの菊姫

5話 大治へ行く

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 俺と清音は早朝に国府を出発する。
 俺たちは少しでも早く洞戸村に着きたいと考えている。
 1日目の夕方になり寝る場所を決めて陣を張る。
 今夜も襲撃があるだろう。
 敵の目的は、俺たちの睡眠時間を削って弱らせることにあると考える。
 やはり、深夜になると俺たちは地面からの振動で起きることになる。
 振動は牛鬼が10匹近づいているからである。
 俺は刀に魔力を乗せて力の刃を作り、連続して力の刃を2つ飛ばす。
 力の刃は牛鬼を8匹切り裂く。
 清音は陣を出ると1匹目の牛鬼の胴を深く切り、2匹目が繰り出したこぶしを足場にして、牛鬼の首をはねる。
 俺は10メートルほど離れたところに逃げていく人影を見つけ、力の刃を飛ばして2つにする。
 「この刀、やっぱりすごくいいわ。」
清音は、手にした黒曜を褒める。
 黒鬼の腕を切り落とした刀である。
 良いに決まっているが俺は黙っている。
 2日目も早朝に出発する。
 2日目も夕方になり寝る場所を決めて陣を張る。
 深夜になると人が気配を殺して近づいてくるが足音を消すことが出来ていない。
 俺と清音は刀を手に取り、間合いに入って来るのを待つ。
 足音から4人来ていることが判る。
 俺と清音は不用意に間合いに入った者を切り裂く。
 さらに俺たちは残りの2人を切る。
 相手は俺たちの動きにまったく対応できていない。
 見ると4人は黒装束に顔に墨で模様を描ている。
 4人は能鬼師である。
 俺は清音に言う
 「鬼はいなくなってしまったのか。」
 「戦法を変えたかもしれないわ。」
確かに弥次郎や達郎並みに気配と足音を消されると脅威である。

 その頃、菊と残鬼は、洞戸村についている。
 残鬼は、手当たり次第に村人を殺し始める。
 菊が残鬼に言う
 「目的は私たちでしょ。殺すことはないわ。」
 「俺は楽しくてやっているんだよ。」
残鬼はそういうと殺しを再開する。
 菊は、殺戮の光景を見ているしかない。

 3日目も俺たちは早朝から出発する。
 清音が俺に言う
 「今夜はどんな手で襲って来るのかしら。」
 「いい加減にしてもらいたいけど。」
 「訓練代わりだと思ってら。」
 「なら、もう少し手ごたえのある相手がいいな。」
俺は期待せずに言う。
 3日目も夕方になり寝る場所を決めて陣を張る。
 深夜、地面の振動で目が覚める。
 振動からかなりの数が近づいていることが判る。
 清音が俺に言う
 「数が多すぎない。」
 「固まっているから同じだよ。」
俺は刀に大きな魔力を乗せると巨大な力の刃を作り出す。
 牛鬼が数えきれないほど近づいてきているのが見える。
 俺はそこへ力の刃を飛ばす。
 巨大な力の刃は木々と牛鬼を切り倒していく。
 牛鬼の群れは一撃で全滅する。
 清音は驚いて言う
 「こんなこともできたのね。」
 「やったのは初めてだよ。以前より魔力が強くなっているようなんだ。」
正直、俺も驚いている。
 4日目、俺たちは早朝に出発する。
 そして夕方には大治に着く。
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