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15章 町の発展

2話 馬車は無いんだ

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 その頃、四宮では菊が攫われてから3週間を過ぎている。
 宗七と影平はそろそろ菊の救出の結果が届けられると考える。
 2人は、菊が無事に帰ってくると信じている。
 菊姫が攫われたことは、村の調査の護衛から帰ってきた弥次郎、千代音、達郎、美代にも伝えられる。
 4人は驚くができることはない。
 4人には新しい仕事ができる。
 宗七は兵10人単位で村を巡回することを決める。
 四宮には1000人の兵がいるが実戦を経験しているのは、四條道隆の乱に参加した500人だけである。
 宗七は兵の実力を上げるため、兵に村を巡回させることにしたのである。
 村を巡回するためには、野営で化け物と戦う必要があり、一人一人が剣士並みの腕を持つ必要がある。
 さらに村では村人の要望を聞き取り、小さなものは自分たちで解決する機転が必要になる。
 もちろん、情報収集も重要である。
 そのためには兵の訓練は重要になる。
 4人には1人10人を受け持ち、2週間づつ訓練をすることになる。
 訓練は午後に行い、訓練が終了すれば10人単位の調査団になる。
 宗七には考えがある。
 1000人の兵を調査団にすることで、戦力の底上げは当然で、兵の中から腕の立つ者、小隊の指揮を任せる者を見つけるのである。
 村の調査は終了して、情報を精査しているところである。

 俺たちは馬で走り旅をしている。
 菊は俺に言う
 「旅は馬の方が良いわ。これからは牛車をやめようかしら。」
 「人の目があります。せめて馬車にしてください。」
 「馬車って何かしら。」
菊の言葉に倭には馬車がないことに気づく。
 「牛のように馬が車を引くものですが。」
 「馬にそのようなことはさせられないわ。」
 「どうしてですか。」
 「馬は数が少ないのよ。一部の貴族が乗るだけよ。」
俺は菊の言葉に流通の革命を思いつく。
 馬を増やして馬車を作れば、早く移動ができる。
 兵員も輸送が早くなる。
 四宮へ帰ったら宗七に相談することにする。
 「どうしたの。」
菊が考え込んだ俺に聞く。
 「良いことを思いつきました。」
 「どんな事。」
 「内緒です。」
菊はむくれる。
 1日目が夕方になり、寝る場所を決めて陣を張る。
 この日の夜は化け物は来なかった。
 2日目も朝から馬で走る。
 この日も夕方になり、寝る場所を決めて陣を張る。
 俺たち3人は肩を寄せ合って寝ている。
 深夜、大牙が2匹近づいてくる。
 2匹は群れの斥候である。
 俺と清音は、気がついている。
 菊は寝ているので、そのままにして静かにして斥候をやり過ごすことにする。
 大牙は陣の周りをうろつくがしばらくして去って行く。
 3日目になり朝から馬で走ると昼前に扶桑に着く。
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