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17章 大治防衛戦

10話 敗走の先

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 副将と10人の兵は、草原を抜け、奴国に出る。
 副将は、10人の兵を解散させる
 彼は兵に言い含める
 「戦のことは話すんじゃないぞ。しばらく身を隠すんだ。」
8人の兵は、自分の村に帰って行く。
 しかし、2人の兵が残る。
 副将は彼らに聞く
 「どうしたんだ。早く行け。」
 「私たちは、佐山の町の者です。」
 「そうか、佐山に戻れば殺されるぞ。」
 「はい、どうすればよいか。」
 「他の町に行け。佐山には戻るなよ。」
 「分かりました。」
2人は去って行く。
 副将は佐山に向かう。
 彼は鬼柳が人間でないことを知っている。
 仕えていた孟鬼も鬼柳と同じ鬼人である。
 鬼柳は失敗を許さないであろう。
 副将は町の門に着く。
 彼はそこで兵たちに拘束される。
 兵は言う
 「我慢してください。鬼柳様の指示です。」
 「分かっている。」
副将は、おとなしく従う。
 彼は、鬼柳の前に引っ立てられる。
 鬼柳は言う
 「おまえ1人か?」
 「そうです。あとは皆、戦場で死にました。」
 「おまえは、なぜ生きている。」
 「鬼柳様に報告するためです。」
 「申してみよ。」
 「最初、わが軍は優勢でした。」
 「1万の兵だ優勢で当たり前だ。」
 「しかし、200ほどの部隊が2つ加勢してから状況が変わりました。」
 「当たり前だ。つなと清音が率いる部隊だからな。」
鬼柳の言葉に副将は茫然となる。
 あのつなと清音が戦場にいたなど知っていなかったのである。
 副将の口から洩れる
 「どうしてですか?」
 「何のことだ。」
 「知っていたら、なぜ知らせてくれないのですか。」
 「おまえたちがどうなるか楽しんでいたのさ。」
 「兵の命をなんと思っているのですか。」
 「精鋭が来た時、全軍で突撃すればよかったのだ。」
 「私もそう進言しました。」
 「分かっているではないか。玉砕すれば、つなと清音を葬れたかもしれないぞ。」
 「私は、玉砕なんて考えていないぞ。」
 「そうだったな、兵を10人逃がすくらいだからな。」
副将は、青くなる鬼柳にすべてを見透かされているように感じるのだ。
 彼は黙り込む、もう言葉が出てこないのだ。
 鬼柳は、副将が黙り込むとつまらなそうな顔になり言い放つ
 「おまえは、鬼の餌になれ。」
副将は連れていかれる。
 鬼柳は密偵を放ち、戦の状況を知り尽くしている。
 当然、孟鬼の最期も知っている。
 つなが1人で孟鬼に勝ったのだ。
 彼が恐ろしく腕を上げていることが判る。
 つなたちが鬼人と渡り合うだけの剣の腕を持っている。
 鬼柳は、彼らに恐怖を感じる。
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