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8章 たまより様

3話 沼頭

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 沙衣は樹に電話する。
 「たまより様の退治の依頼を受けました。」「そうですか、依頼が来ましたか。」
 「あれから、たまより様の情報はありますか。」「あれから1件あります。」
 「これまで、女の霊の被害があった場所を教えてください。」「わかりました。」
沙衣は、被害場所を調べて、たまより様の活動範囲を特定しようとする。
 樹は離れで美月に報告する。
 「先日のたまより様の件ですが、沙衣が依頼を受けました。」「依頼が来ましたか。」
 「はい、沙衣なら何とかするでしょう。」「そうですね。」
沙衣は、祐二と活動を開始する。沙衣が夜の街を歩いていると若い男が声をかけてくる。
 「君、何しているの。」「あなたに関係ないわ。」
 「俺と遊ばない。」「ごめんなさい、恋人と一緒なの。」
沙衣は、祐二の腕を引っ張る。
 「そんなさえない男、君にふさわしくないよ。」「あら、あなたよりましよ。」
男は、文句を言いながら去って行く。祐二が沙衣に言う。
 「僕、沙衣の恋人になったんだね。」「違うわよ。振りだけよ。」
 「そんな、そろそろ恋人に格上げしてよ。」「あなたは、ただの虫よけよ。」
祐二の期待はかなえられない。
 沙衣と祐二は夜の町を探し回るがナンパ男が寄って来るだけである。
 何日か過ぎていく、沙衣はナンパ男に辟易する。追っ払っても次からとわいてくるのである。
 そんな中、妙齢の女性を介抱する若い男性を見つける。祐二には女性が見えていないので男が何をやっているのかわからない。
 沙衣が声をかける
 「お姉ちゃん、こんなところのにいたんだんね。」
男は女性に聞く
 「妹さん。」「いいえ違います。」
男は沙衣に言う
 「違うって言っているけど、君は誰。」「警察に通報しますよ。姉を攫おうとしたって。」
 「俺はそんなことしてないよ。」
男は逃げていく。沙衣は女性に近づく。
 「たまより様の所まで連れて行ってもらうわよ。」「知らないわ。」
女の霊は逃げようとするが体が動かない。気がつくと首に水の輪が巻き付いている。
 「見逃してよ。」「たまより様はどこ。」
沙衣は手のひらをかざす。すると陽の光が出る。女の霊は慌てて言う
 「案内するからやめて。」「嘘ついたら分かるよね。」
沙衣は念を押す。
 女の霊は、山の中に沙衣たちを案内する。しばらく進むと沼に出る。女の霊が大声で言う
 「沼頭ぬまがしら出ておいで若い女がいるわよ。」「だましたわね。」
 「若い女は私の敵なのさ。」「消えなさい。」
水の首輪は女の霊の首を落とす。女の霊は霧散する。
 沼が波立ち始める。沙衣は水の刀と盾を作りだす。沼の中から何かが飛び出し沙衣の足に絡みつく。
 祐二は沙衣を倒れないように抱きかかえる。2人は沼の中に引きずり込まれる。そして、大きな口に飲み込まれる。
 沙衣は口の中を切りつける。傷口から口の中に多量の沼の水がはいってくる。沙衣は水の槍を作って口の中を刺す。
 沙衣と祐二は口の中から吐き出される。沙衣は、祐二を抱え沼の水をコントロールして水から飛び出す。
 沼頭が姿を現す。姿は巨大なカエルのようだが手足には鋭い爪がある。沼頭は鋭い爪で沙衣を引き裂こうとする。
 沼から水の槍を飛ばして沼頭に突き刺そうとするが体表面がぬめぬめしたいるため滑って刺さらない。
 沙衣と祐二は逃げ出す。沼頭は沼から離れて追ってくる。山の中に霧が発生する。沙衣は沼頭の体表面の水分を使って霧を発生させている。
 沼頭の体表面はからからに乾く。沙衣は水の刀を作って動きの弱った沼頭を切る。沼頭は鋭い爪を振るって抵抗する。
 沙衣は水の刀で沼頭の右腕を切り落とす。すると沼頭は沼へ逃げようとする。沙衣は沼頭を逃さない。背中に飛び乗り手中に水の刀を刺すとそのまま尻の方に向かって走り出す。
 傷口からは多量の血が噴き出る。沼頭は動きを止める。沙衣は言う。
 「ただ働きしちゃった。」「服ねばねばですよ。」
沙衣は服の水分をコントロールして乾かす。しかし生臭い匂いは取れない。
 「散々ね。」「今日はここまでにしましょうよ。」
 「そうねこれでは仕事にならないわ。」「そうですよ。」
2人は、ひどい目に遭ってこの夜の調査を終える。
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