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14章 海から来たもの

プロローグ

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 宇高の島うたかのじまは離島であり他の地域とほとんど交流はない。主に漁業で生活しており、わずかに野菜を育てている者もいた。
 嵐の後、漁師が5人、浜にある番屋の様子を見に浜に来る。するとはあの波打ち際に銀髪の全裸の若い女が立っている。
 漁師たちは女を取り囲み質問する。
 「名前をなんという。」「マビメ。」
 「どこから来た。」
マビメは海を指さす。漁師たちは顔を見合わせる。マビメは島にはいない美しい女だった。漁師たちは欲望のまま、マビメを番屋へ連れ込む。
 漁師たちは入れ替わり、昼夜を問わずマビメを抱き続ける。3日後、漁師の女房たち5人が不審に思い番屋へ来る。
 そして、漁師たちの乱交を見て怒り、マビメを番屋から引きずり出す。
 「とんだ泥棒猫だね。ただじゃ済まさないよ。」「泥棒猫とな。我はマビメじゃ。」
 「うるさいんだよ。」
女房の1人が殴りかかる。しかしマビメは手のひらから水の槍を作りだし、彼女の心臓を貫く。彼女は即死する。
 「こいつ妖術を使うよ。」「銀髪だし人間じゃないよ。」「妖怪に違いないよ。」
4人の女房は木切れを持ち取り囲む。
 「我はマビメと言うておろう。」「うるさい化け物。」
女房辰は一斉に殴りかかる。しかし、浜から水のトゲが飛び出し4人を串刺しにする。
 漁師たちは妻の死に何の反応も示さない。ただマビメに付き従う。マビメは漁師たちに言う。
 「私の物になったからには働いてもらうぞ。」
マビメは島にある山を指さす。その日から漁師たちは山を切り開き社を作る。
 島の人たちは、女房たちの最後を知っており、マビメに逆らう者はいない。そして、マビメは社に祀られる。
 そして社は宇高神社になり、マビメは生き神様としてマビメ様と呼ばれる。
 彼女の世話は5人の漁師が行っている。時が流れ5人の漁師は年老い亡くなって行く。
 そして、いなくなるとマビメは島の中から男を選び、仕えさせる。
 マビメはこれを1500年以上続けている。
 現在、宇高の島には定期航路や海上タクシーはなく、島に行くには宇高の島の漁船に乗せてもらわなければならない。
 また、固定電話や携帯電話は使うことはできず、無線が唯一の連絡手段である。
 そして、マビメ様のことは島の人間だけの秘密になっている。
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