上 下
93 / 105
15章 音鳴村

5話 潜入

しおりを挟む
 ディレクターは、音鳴村の仕事を引き受けてくれる霊能者を見つける。メンバーは、タレントと自称音鳴村研究家、霊能者、カメラマン、そしてディレクター本人である。
 彼らは、ダム湖の湖畔の道路に車を止め、空き地にテントを設営して、鳴沢村の入り口に5体の首無し地蔵が現れるまで待つことにする。
 夕方の情報番組で彼らが音鳴村を目指していることを紹介される。スタジオから彼らに呼び掛ける。
 「どうですか。音鳴村へは行けそうですか。」「まだ、首無し地蔵が現れていません。私たちは現れるまで待つつもりです。」
 「まだのようですね。首無し地蔵が現れ次第、生中継をすることになっています。」
事務所では沙衣と祐二がテレビを見ている。祐二が沙衣に言う。
 「テレビでやっていますよ。」「私は止めたわよ。」
祐二はテレビに出られたのにと思うが、沙衣はテレビに出ることはNGなので黙っておく。
 ディレクターたちは二晩過ごしたが首無し地蔵は現れない。彼らは1週間粘ることにする。
 4日目の夕暮れ時、カメラマンが村の入り口に首無し地蔵が現れていることに気づく。それは夕方の情報番組を放送している時間だった。
 番組のキャスターが突然、しゃべりだす。
 「ダム湖に首無し地蔵が現れたようです。現場からの映像に切り替わります。」
タレントが話し始める。
 「たった今、村の址の入り口に首無し地蔵が現れました。私たちはこれから村に潜入します。」
 「音鳴村研究家の辻本つじもとさん、これが音鳴村だと危ないですか。」「音鳴村は異次元に繋がっていると思います。迷ったら帰って来られないでしょう。」
 「ありがとうございます。私たちは、ロープを何本か持って来ています。これが私たちの命綱になりそうです。」
事務所では、ちょうど事務所を閉める準備をしているところだったが、沙衣はテレビの前に陣取り見始める。祐二が沙衣に言う。
 「テレビ、家に帰ってから見ても間に合うと思うよ。」「祐二、先に帰っていいわよ。」「付き合うよ。」
祐二は沙衣と一緒にいる時間が長くなるので文句はない。
 テレビは生中継に切り替わる。タレントとディレクターが村の入り口にロープ止めの金属製の金具を地面に打ち込みロープを縛る。
 「これで私たちはロープを使って戻ることが出来ます。では中に入ります。辻本さん危険になったら教えてください。」「分かりました。」
彼らは生中継しながら村へ入って行く。
しおりを挟む

処理中です...