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15章 音鳴村

9話 沙衣たちの潜入

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 沙衣は、その晩、祖父母の古馬竜弥ふるまたつや古馬沙夜ふるまさやに話をする。
 「私、今度の仕事で生きて帰って来れないかもしれないからこれ預けておくね。」
彼女は小切手を2人に預ける。沙夜が言う。
 「必ず帰って来なさい。私たちはあんたの両親のことも諦めていませんよ。」「私も帰ってくるつもりよ。」
沙衣は両親はもう戻ってこないだろうと考えていた。しかし、祖父母は諦めていない。
 翌日、沙衣と祐二は、ロードスターに乗ってダム湖へ行く。湖畔の道路にはテレビ局の車が待っていた。
 彼らはAD2人と挨拶をかわし、首無し地蔵が現れるのを待つことにする。
 3日過ごすが首無し地蔵は現れない。祐二が焦れて言う。
 「現れるまでこのままですか。」「そうよ、このまま現れるまで待つのよ。」
沙衣は断言する。4日目の夕方、鳴沢村址の入り口に首無し地蔵が現れる。沙衣たちは準備をして村の入り口に向かう。ADが村の入り口にロープ止めの金属製の金具を地面に打ち込みロープを縛る。
 もう1人のADが黄色のスプレー缶で目印を付ける。目印は5分ごとに付けることにしている。彼らはゆっくり歩いて村の中を進む。光景は生中継の番組と同じである。
 しばらくすると沙衣に笛の音や鈴の音が聞こえてくる。
 「笛の音が聞こえてきたわ。」「僕には聞こえません。」
祐二が言う。2人のADにも聞こえない。さらに歩くとADにも笛の音や鈴の音が聞こえてくる。しかし、祐二には聞こえない。
 「僕だけ聞こえないなんて変ですね。」「あなたは鈍感でしょ。」
 「僕、耳は悪くないですよ。」「これは霊現象なんだわ。」
 「じゃあ、霊が笛を吹いたり、鈴を鳴らしているんですか。」「そうかもしれないわね。」
沙衣はADとこのまま進むか検討する。ADの1人が言う。
 「このまま近づいたら鬼が出てくるかもしれませんよ。」「鬼は私が対処します。」
 「それならば、進みましょう。」「そうですね。このまま帰っても行方不明になるだけですから。」
沙衣は祐二に言う。
 「ペットボトルを出して。」「はい、1本でいいかな。」
 「次のをすぐに出せるようにしておいて。」「分かった。」
沙衣は2リットルのペットボトルの蓋を開けると水の刀と水の盾を作りだす。
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