勇者失格宣告~魔王と静かに暮らしたい

ぽとりひょん

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第2章 建国

第22話 オグル

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 15層に降りて、トウヤたちはより慎重に進む。前方にゴブリンを2匹発見するが、どこか様子が違う。サチがみんなに言う。
 「あのゴブリン、身長が高くて、筋肉質だし、顔つきも違うわ。」「あれは、ホブゴブリンだ。ゴブリンの上位種だ。ゴブリンより素早いし、力が強いぞ。」
アンドレアスが説明する。ユキコが言う。
 「上位種でも、やることは変わらないわ。」「そうだな。」
トウヤが剣を構えながら答える。サチが炎熱魔法を撃ちこむ。ホブゴブリンは驚いたように動きを止める。
 サチと同時に動いたケンゴが気配を隠して接近してホブゴブリン2匹の足を短剣で切りつける。トウヤ、ユキコ、ヒナタが飛び出しホブゴブリンに切りつける。
 トウヤはホブゴブリンを袈裟切りにして倒す。ユキコの打ち込みはホブゴブリンの持つ棍棒で受け止められる。そこへヒナタが斧をホブゴブリンの腹へ撃ち込む。
 斧は深く刺さり、腹から血を出しながら腸が飛び出る。ホブゴブリンは膝をつく。ユキコが剣で首をはねる。
 トウヤたちは息を吐きだしてホッとする。すると護衛の兵の1人はうめき声を上げる。トウヤたちが見ると黒い大蛇が兵に巻き付いている。
 「ブラックスネークだ。毒は無い。首をはねるんだ。」
アンドレアスが指示するとケンゴが素早く動いて首をはねる。ブラックスネークは首をはねられた後も兵を締め付け「バキ、バキ」と骨の折れる音がする。
 トウヤたちはブラックスネークを引きはがしにかかる。力が強くてびくともしなかったが、やっと体の動きが止まり兵からブラックスネークを引きはがす。
 セネカは、護衛の兵をハイヒールで治療する。
 「こいつは天井に潜んでいて獲物が下に来ると音もなく降りて来て体に巻き付いて、獲物を絞め殺して飲み込むんだ。」
アンドレアスの説明にトウヤたちは上を見る。するともう1匹ブラックスネークがこちらを見ている。トウヤたちは足早にその場を移動する。
 ダンジョンの中を進んで聞くと身長3メートル近い巨体の魔物と遭遇する。
 「オグルだ。気を付けて戦うんだぞ。」「分かっています。みんなやるそ。」「「「おう」」」
オグルはトウヤたちに気づくとゆっくり近づいて来る。まだ、炎熱魔法の射程まで距離がある。オグルは勝利を確信しているのか、悠々と自然体で歩みを進める。
 威嚇する必要はない。ただ、蹂躙するだけだと言わんばかりに見える。トウヤの額に汗が流れる。彼はオグルがこれまでの魔物とは全く違うと感じる。
 ユキコ、ヒナタ、ケンゴ、サチも同じように感じているようだ。セネカが言う。
 「いつもと同じよ。倒したら冒険者ギルドに行って報告しましょ。」
トウヤ、ユキコ、ヒナタ、ケンゴ、サチは肩の力を抜いていう。
 「「「その通りだ」」」
5人の声がハモる。トウヤたちに笑顔が戻る。オグルが炎熱魔法の射程に入る。
 「いくよー」
サチが炎熱魔法をオグルに撃ち込む。同時にケンゴが気配を消して走り出し、炎熱魔法に紛れてオグルの目を狙う。短剣がオグルの左目に突き刺さるが抜けなくなる。
 ケンゴはとっさに短剣を手放してオグルの胸を蹴って離脱する。その瞬間、オグルの右こぶしが眼前を通過する。ケンゴは2本目の短剣を抜く。
 トウヤが左腕を狙って剣で切りつける。オグルは左腕を振るとトウヤは飛ばされる。オグルの方を見たまま着地するがその姿勢で地面を5メートルほど滑る。
 ユキコはオグルの右腕を狙って切りつける。ユキコは右腕を振られて、弾き飛ばされ、壁に背中から打ち付けられ地面にずり落ちる。
 ケンゴは斧で右足に一撃入れると離れて、ユキコの所に駆け付けて、ユキコを引きずってオグルから離れてセネカに預ける。トウヤが言う。
 「本当に化け物だな。」「もう一度、チャンスをくれ。」
ケンゴが言うとサチが答える。
 「2射目行くよ。」「おう。」
炎熱魔法をオグルに撃ち込む。ケンゴは再び炎熱魔法に紛れてオグルの右目を狙う。短剣を右目に刺すと離脱しようとするがオルグの右手に捕まってしまう。
 オグルは手にしたケンゴを地面にたたきつける。トウヤたちが思わず叫ぶ。
 「ケンゴーーー」
ケンゴは血を吐きその場から動かない。オグルはケンゴを踏みつぶそうとする。セネカがケンゴの所に滑り込み、防御シールドを張る。
 セネカは唯一冷静に判断して、ユキコの治療を中断して飛び出していた。防御シールドを張りながらハイヒールでケンゴを治療する。
 「右足をやるぞ。」「分かっている。」
トウヤとヒナタは防御シールドを壊そうとするオグルの右足を狙う。トウヤが剣で足の筋肉を切り付け、ヒナタが斧でアキレス腱を断ち切ろうとする。
 オグルは右足の痛みに後ずさる。その時、アキレス腱が切れる。ヒナタの斧の一撃が効いたのだ。ケンゴは、セネカのハイヒールで賦活する。
 セネカはユキコの治療に戻る。オグルは両眼をつぶされ、右足も使えなくなり、仰向けに倒れたまま両腕を振り回す。
 オグルの腕は当たればただでは済まない凶器だが、足をつぶされて動けないので、あとはとどめを刺すだけだ。トウヤとヒナタはオグルが振り回している両腕を封じることにする。
 トウヤとヒナタは、剣と斧で腕を切りつけるが振り回しているため、手こずる。復活したケンゴがオグルの胸に飛び乗ると同時に3本目の短剣で首をかき切る。
 ケンゴは左腕にはじかれて飛ばされるが受け身を取ってけがを防ぐ。オグルの首から多量の血が噴き出す。そして、動きが緩慢になり、腕を振り回すことをやめる。
 ヒナタが斧をケンゴに渡して言う。
 「オグルを倒せるのはケンゴのおかげだ。止めを刺してくれ。」「僕がとどめを刺すけど、倒したのはみんなが協力したからだよ。」
ケンゴは斧でオグルの首をはねる。トウヤはホッと胸をなでおろす。戦いが終わって緊張が解けたのだ。
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