勇者失格宣告~魔王と静かに暮らしたい

ぽとりひょん

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第3章 ヴァルハラ王国侵攻

第17話 オムライス

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 バシュラール魔王国からリースの食卓の料理人がやって来る。彼は城の厨房を使ってカレーライスを作る。ロックとリースは味見をする。ロックが言う。
 「これ、ちゃんとしたカレーライスだよ。おいしいよ。」「ありがとうございます。」
カレーの匂いにつられてディートハルトたちがやって来る。彼らにもカレーライスを振る舞うとおいしいと高評価を得る。リースはヴァルハラ支店での成功も確信する。
 次に料理人はオムライスを作る。乗っている卵は半熟のトロトロである。オムライスには小皿に入れたケチャップが添えられている。自分でケチャップをかけるようだ。
 ロックはリースにハートマークを書いて欲しかった。ルースがロックの心を読んだように言う。
 「お前様、何か物足らないのか。」「う~ん、ケチャップでリースにハートマークを描いて欲しかったと思っただけだよ。」
 「絵を描くのですか。」
料理人は少し考えると袋に小さな穴を開けてケチャップを入れてロックのオムライスにハートマークを描く。
 「どうでしょう。」「うん、ありがとう。」
ロックはリースに描いて欲しかったのだが今さら違うとは言えない。リースが料理人に言う。
 「これは、恋人がメッセージを書いたりすると面白いわ。」「そうですね。専用の容器を考えましょう。」
 「女性が男性客にハートマークを描くんだよ。」
ロックが自分の欲望を乗せて言う。すぐに料理人が反応する。
 「これは受けますよ。」「そうね、女性客には男性給仕にハートを描かせましょう。」
料理人とリースは盛り上がる。ロックは2人の議論を無視してオムライスを食べ始める。
 「美味しいよ。これ。」「ありがとうございます。苦労した甲斐がありました。」
 「完璧だよ。」「では、開店の準備に入ります。」
料理人はロックに褒められてやる気を出す。一方、パン屋では菓子パン作りに苦戦していた。できた物は十分においしいが職人は納得していない。
 このパン屋が経営不振に陥ったのは職人の完璧主義のため、納得のいった物しか売りに出さないので商品の数が少なく収益が上がらなかったのだ。
 町では幻のパンを売る店として知られていた。数個のパンを売るだけなので買うことが出来ないのだ。
 ロックとリースはパン屋へ行く。職人はロックとリースに言う。
 「まだ、納得の行く者が出来ていない、出直してくれ。」「そこにパンがあるけど。」
 「これは失敗作だ。」「とりあえず食べさせてよ。」
ロックが失敗作を手に取って食べる。そして言う。
 「これ十分おいしいよ。形もいいし、これなら大丈夫だよ。」「これだから素人は、こんなもの客に出せねー」
 「大丈夫だよ。他の店に負けていないよ。」「いいや、だめだ。」
リースが失敗作を食べる。そして感心する。レシピだけでここまでおいしい物を作ったのだ。リースが職人に言う。
 「この失敗作を売りますよ。」「そんな、私に恥をかけというのですか。」
 「素晴らしい出来ですよ。」「しかし・・・・・」
 「そこまで言うなら1週間待ちましょう。それで納得できなくてもパンを出してもらいます。」「分かりました。」
職人は1週間かけてパンを作りふわふわの菓子パンを作りだす。こうしてリースのパンが開店するとすぐに街中の話題になって客が殺到する。
 しかし、職人はまだ納得していなかった。だが、パンは焼いたらすぐに飛ぶように売れていく。職人は複雑な気分だった。
 リースの食卓は内装が完成していた。今は従業員の指導をしている。料理人は、雇った料理人たちにリースの食卓の料理を叩き込んでいる。
 給仕はオムライスにハートマークを描く練習をしている。ロックは、ハートを描くときに言う言葉として
 「美味しくなーれ、萌え萌えキュン」
を提案するが、リースと料理人に却下される。リースはロックに言う。
 「お前様、遊びでやるのではないぞ。」「分かっているよ。僕の世界ではこういうのがあるんだよ。」
 「お前様には、今度やってやろう。」「本当、うれしいよ。楽しみだな。」
リースの食卓は、リースのパンに半月遅れて開店する。給仕がハートを描くオムライスは話題になり、好調な出だしになる。
 ゼーテ商会ヴァルハラ支店は、さらに1カ月遅れて開店する。リースはその間、貴族や裕福層と顔つなぎをしていた。ゼーテ商会ヴァルハラ支店は2階に喫茶店のスペースを作り、リースは貴族や裕福層の女性たちとお茶会をする。
 ロックはリースに質問する。
 「リース、お茶会に忙しいようだけど何をしているの。」「我はお前様の妻だから店に顔を出せば、店の格が上がることになる。そうすればドレスなどが売れるであろう。」
 「リース自身が広告塔になっているのか。」「そうじゃ、セリアを呼ばねばなるまい。」
 「セリアには恨まれていないかな。」「これからは良好な関係を築いていかなばな。」
ロックはリースの行動がバシュラール魔王国のためにもなっていると考える。
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