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第63話 鬼子母神堂1

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 佐々木夏希ささきなつきは、ようやく子供を授かり、男の子を出産する。
 夫は、子供を伊織いおりと名付ける。
 しかし、伊織は生まれつき心臓に病気があり生まれてから病院に入院したままである。
 そして、2歳の時、心臓の手術を受けることになる。
 医者には、手術の成功率は五分五分と言われ、手術を受けなければ3歳まで生きることも難しいと言われる。
 夏希は桐生院きりゅういんにある鬼子母神堂きしぼじんどうにお百度参りをする。
 すると最後の日、どこからか声が聞こえてくる
 「子供を助けたいか。」
 「はい。」
 「願いをかなえるが、子供が15になったら我に捧げるのだ。」
 「15ですか。」
 「このままだと子供は死ぬぞ。」
 「分かりました、子供を助けてください。」
夏希は相手が何ものかも知らず約束をする。
 伊織の手術は成功する。
 それからは、伊織は医者が驚くほど回復し退院する。
 夏希は伊織を大切にして幸せな時間を過ごす。
 伊織が中学生になった時から夏希は夢を見るようになる。
 お百度参りの時に聞こえた声が言う
 「お前の子は13になったか待ち遠しいのう。」
夏希は声とかわした約束を思い出す。
 子供が15になったら捧げる。
 誰に・・・
 考えても思い浮かばない。
 夫にお百度参りのことを話すが信じてもらえない。
 彼は言う
 「そんな声、無視すればいいさ。」
夏希も伊織を渡す気はない。
 しかし、あの声が頭の中にこびりついている。
 夏希は寺の住職や神社の神主に相談するがまともな回答は得られない。
 伊織が14歳になると夏希は夢の中で声を聞く
 「お前の子は14になったか、あと少し、あと少しじゃ。」
彼女が目を覚ますと寝汗でぐっしょり濡れている。
 夏希は情報番組のオカルト相談コーナーに電話することにする。
 そのコーナーには稲荷の使いを名乗る少女も出ているし、たけるという男はスタジオで鬼を倒したり、霊を消したりしているのだ。
 彼女は2人にかけてみることにする。
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