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66話 玉枝、怨霊と戦う

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 九郎が、朝目覚めると玉枝が九郎を抱き枕にしている。玉枝の顔が近い、形の良い桜色の唇が目の前にある。少し頭を動かせばキスできるだろう。
 彼は、これは怨霊、これは怨霊・・・と色欲を抑える呪文を頭の中で唱える。彼は抱き着かれて玉枝の柔らかい体が気持ちいい。
 九郎は、精神統一して起き上がる。毎晩一緒に寝ているがいまだに玉枝の色香にはなれない。彼女の色香は猛毒である。
 九郎が起きると玉枝が目を覚ます。
 「九郎ちゃんおはよう。エッチなことしなくていいの。」「しません。」
玉枝は起き上がると朝食を作り始める。そして、朝食をテーブルに並べる。
 シラスの冷やし茶漬けに梅干を和えたものに小鯵の南蛮漬けである。
 九郎は「いただきます」をして食べる。玉枝がお味を聞く。
 「どお?」「食べやすくておいしいよ。」
九郎は、朝食を食べ終えると着替える。玉枝は、ネグリジェ姿から巫女の姿になる。
 今日は一久のお祓いを手伝う日である。九郎は玉枝に言う。
 「その姿で神社に行くの。」「そうよ。九郎ちゃんがいやらしい目で見てくれるから、これがいいわ。」
 「頼みますから、行く途中は姿を消してください。」「九郎ちゃん、私が他の人に見られるのが嫌なのね。」
 「そうです。恥ずかしいです。」「独占欲強いのね。」
玉枝は九郎の気持ちを無視する。2人は久沓神明社に歩いていく。鳥居の所まで来ると玉枝は気配を強くして人に見えるようになる。
 九郎があやめの家のインターフォンを鳴らすと一久が出てくる。
 「おはよう、今日はよろしく頼むよ。」「はい、お願いします。」
九郎と玉枝は居間に通される。居間には、あやめがいて九郎に言う。
 「今日は、お父さんをお願いね。」「あやめ、心配なの。」
 「ええ、前のお祓いで神主が亡くなっているから。」「あやめちゃん、任せて、私がいるでしょ。」
 「玉枝さん、お願いします。」「はい、お願いされました。」
玉枝は軽い感じで引き受ける。九郎も玉枝がいれば大丈夫だと思っている。
 一久が神主の姿で居間に入って来る。一久は九郎と玉枝に言う。
 「後、30分ほどで依頼人が来るよ。2人とも危険だったらお祓いは中断するから迷わずに言ってください。」「分かりました。」
九郎たち3人は、拝殿に行く。しばらく待つと依頼人が来る。依頼人は、夏なのにパーカーを着てフードで顔を隠している。
 一久は依頼人に言う。
 「暑くありませんか。」「暑いです。パーカーを脱ぎますが驚かないでください。」
依頼人がパーカーを脱ぐと両腕と顔の半分がただれている。
 「病院に行きましたか。」「これは呪われているんです。」
 「そんなに強く恨まれているのですか。」「はい、私は今の夫を付き合っていた彼女から奪って結婚しました。」
 「その彼女はどうしたのですか。」「自殺しました。遺書には私を呪うと書いてあったそうです。」
九郎には、恐ろしい顔をした女が依頼人に憑いているのが見える。九郎は玉枝に聞く。
 「随分、恐ろしそうだけど大丈夫?」「強力な怨霊よ。でも私の敵ではないわ。」
 「お祓いはどうかな。」「だめよ。私が戦うわ。」
依頼人に憑いている怨霊が、九郎と玉枝の方を見る。玉枝が九郎に言う。
 「目を合わせてはだめよ。」「はい。」
彼女は怨霊に向かって燐火を放つ。しかし、怨霊は燐火をはじく。一久が玉枝に言う。
 「玉枝さん、話しの途中ですよ。」「怨霊が九郎に害を加えようとしたわ。」
玉枝は9個の燐火を作りだす。怨霊は気配を大きくして、一久にも見えるようになる。
 彼女は怨霊に9個の燐火を打ち出す。怨霊は再び燐火を9個はじく。怨霊は玉枝に右手を突き出し力を込めて手を握る。
 玉枝の首が絞められる。彼女は怨霊を睨みつける。するとバチッと大きな音がして怨霊の右手がはじける。
 玉枝の体が青く光り出す。怨霊ははじけ飛んだ右手を再生する。玉枝は怨霊を睨みつけながら右腕を前にかざす。
 すると、怨霊が青い炎に包まれる。依頼者が叫び声を上げる。
 「きやあぁぁー、熱い、熱い、熱い・・・」
依頼者は気絶する。怨霊は青い炎に包まれて燃えて消えていく。玉枝が独り言を言う。
 「九郎に手を出そうなんて許さないわよ。」
一久が玉枝に聞く。
 「依頼者は大丈夫なんですか。」「大丈夫よ。皮膚のただれも治っているでしょ。」
一久が依頼者を見ると皮膚のただれがなくなっている。彼は依頼者を起こす。
 「終わりましたよ。」「私、助かったんですか。」
依頼者は、命が助かったことと皮膚のただれがなくなったことを喜ぶ。
 九郎は玉枝と怨霊の戦いを見て感心する。
 「玉枝さん、本当に強いですね。」「まだ、力の10分の1も出していないわよ。」
 「そうですか。」「私は強いのよ。」
九郎は、力の10分の1と言われてもどんなにすごいか想像できない。
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