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94話 月ヶ瀬村

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 一久は、車を1時間ほど運転して、月ヶ瀬村へに入る。村の民家のあるところに近づくと九郎が言う。
 「何か変な感じがしますよ。何か重苦しいような・・・」「九郎君、大丈夫かい。」
 「はい、大丈夫です。」「九郎ちゃん、これは鬼の瘴気よ。」
一久が玉枝に確認する。
 「玉枝さん、これは大丈夫なのかい。」「ええ、九郎ちゃんには分かったようだけど、まだ大丈夫よ。」
 「だったら、このままいくよ。」「はい。」
一久は村の中を車で走る。途中、まったく村人を見かけないし、車ともすれ違うことがない。
 到着すると蛇抜家の前に車を止める。九郎たちが車から降りると蛇抜が家から迎いに出てくる。
 彼は一久に挨拶する。
 「ようこそお出で下さいました。」「こんにちわ、村に鬼の瘴気が漂っているようです。」
 「そうですか、蛇神様の所に案内します。」「おねがいします。」
九郎たちは、彼の案内で村の中を歩く。そして、10分位歩くと大きな沼に出る。
 「ここが月ヶ瀬と言う沼です。ここに蛇神様がおられます。」
沼は水がかなり少なくなっているようで岸から水のあるところまで100メートル位ある。沼はほとんど干上がっている。
 九郎は、沼の中央の水面上に白い着物を着た少女を見つける。
 「沼の上に女の子がいますよ。」「本当かい、九郎君、私には見えないよ。」
玉枝が九郎たちに言う。
 「あの少女は蛇神様よ。」「蛇神様がおられるのですか。村を救ってくださるように頼んでください。」
蛇抜が玉枝に頼み込む。玉枝は困った顔をして言う。
 「私、蛇神が何考えているかよくわからないの。頼むのは無理よ。」「そこを何とかお願いします。」
そうしているうちに少女はこちらへ歩いて来る。少女は水や泥に沈むことなく歩いて来る。そして、九郎たちの前に来ると気配が大きくなる。
 これまで見えなかった一久と蛇抜にも少女の姿が見えるようになる。少女は白い着物を着て、肌も着物に劣らず白く、赤い瞳をしている。
 九郎は、少女が霊とかとは違う異質のもののように感じる。
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