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一話目

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○月○日 晴れでないわけがない!(キリッ)

 お久しゅうございますな!覗き魔君よ!そう!俺だ、ニーナたんだよ!13歳になったの!!
 え?今まで何してたかって?…………結婚相手を探してたんだよぉ!結婚相手をヨォ!!
 何が悲しくて元男の俺が同じ男と結婚しなけりゃならないんだよぉぉぉぉ!!

 とまあ、こんなことを言いながら駄々をこねてたんだけどね。うん、お察しの通り結婚しましたよ!男と!!
 え?相手の名前?えーと、何だっけ…………はい、冗談です覚えてますよだって有名だもの!
 ヴェリア・ヴァレンタインっつーんだよ。なんかさ、社交界ではめちゃくちゃ名前が知られているらしいんだよ。
 えー、と……確か、「王国の紳士の見本」だったか。なんかそんな感じで呼ばれてるんだって。

 ………………うん、もうあれだね。イケメンじゃん(確信)。そんな小っ恥ずかしい名前で呼ばれてるのに不細工とかはないだろ。

 妬ましいな!まったくもって妬ましいぃぃぃ!!!………………ん?俺も美少女だったか。
 それなら妬む必要なくね?













 じゃあ許す!




 と、冗談はこれくらいにしておこう。取り敢えず俺はそのヴェリア・ヴァレンタインと結婚が決まったわけだ。あっ、ちなみにそのイケメン君は16歳だぞ。
 …………ギリギリセーフだな!何だって?何を言ってるのか分からん?…………安心しろ!俺も分からん(困惑)!

 で、だな。実はもうヴェリア某は俺のことを知っているらしい。まあ、俺は有名だからな!俺はお前のこと知らんけど!残念!!
 あいや、別にヴェリア某に恨みとかはないぞ?結婚したくないだけで。
 あれだ、だんだん怖くなってきたわけだ。













 元男で転生者な俺は当然ながら、こっちの世界の両親の他にもにも両親がいるわけだ。
 でもな、そのあっちの世界の両親のことをな、だんだんと忘れてきてるんだよ。

 大切な人達だってことは覚えてるんだよ。でも、
 もう、どんな顔で、どんな声で、どんな人達だったのかすら思い出せないわけよ。
 今でもこんなザマなんだぞ?もしかしたら、結婚したら何もかもを忘れてしまうかもしれない。
 本当の意味でこちらの世界の人間になってしまうかもしれない。
 最後の向こうの世界の残滓がこの手からこぼれ落ちてしまうかもしれない。

 それが嫌だ、ヴェリア某と結婚するのが嫌なんじゃない。
 ただ、忘れてしまうのが怖いだけなんだよ。

 それでも、俺は、結婚する。

 それが貴族の宿命らしい。
















 くそったれ。












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