チャルメラのラッパ!屋台ラーメン店主、異世界へ

希塔司

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第2話「麺をきるように」

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 わしは見たこともない風景に唖然としていた。外国に一度も旅行などしたことがないからこのような歴史的な街並みなどを見るのも初めてだ。


「いかがかな?」

「ここは一体...」


 言葉を詰まらせていく。グツグツと心の中に宿るスープが煮えたぎるのが感じるがなぜだろう、この王や周りにいる騎士の格好をした連中はわしを見るやヒソヒソといろいろ話している。


「はてさて、そなたの名を教えて欲しいのだ。」

「なんじゃお前、人に名前を聞く時はまず自分から名乗るのが礼儀だろうが。」

「貴様ー!王になんたる無礼な態度を!!」


 騎士やそばにいる側近のじいさんはわしに向かって暴言を吐いてきた。構わずこのまま気に食わんやつらに文句を言ってやりたいとこだったが王が静める合図をしたことにより事なきを得た。


「これは失礼した。わしはイエクワン王国のアッサリ王じゃ。このマーシカーラという世界における二大国の国王じゃ。それでは勇者殿、そなたの名を教えてはくれぬか?」

「わしは田原源三、前まではラーメン屋の店主として日々美味いラーメンを食わせていた。」

「ラー...メン?」


 なんじゃあの顔は、まるで聞いたことがないと言わんばかりの顔。この世で最も美味い料理の名を知らんだと...。


「はて、そのラーメンなるものはどのようなものなのだ?」


 ほんとに知らんのか!?ここは南極じゃないんじゃ、いや南極で働いてる人ですらラーメンを食するんだぞ。なんなんだここは!?

 わしは今までの常識がこの国ではまるで通用しないことをラーメンを通じて知ることになった。そして一体ラーメンを知らん連中にどのようにして教えればいいのか頭を悩ませてしまった。


「麺じゃ、麺というものは知っておるか?」

「それはパスタのことですかな?」

「いや違う、パスタよりもっと太い麺じゃ。」

「なぬ!?パスタよりも太い麺の料理があるのか!それはぜひ食してみたいものだ。すぐに用意はできるのか?」


 これはチャンスというもの。わしの味を知ればきっとこの連中もわしのラーメンの虜になるとこの時は思っていた。だが致命的なものをわしは忘れていた。


 「作りたいのだがちょいと確認したい、お主たちの国ではどんな食材が取れるのかを聞いておきたい。」

「ゲンゾーよ、残念だがこの国では食材が取れぬ事情があるのだ。」

「は?」


 わしはその後、王よりなぜ食材を取るのが困難なのかを聞いた。


 この地では絶え間なく争いが繰り広げられ、その影響で森は焼かれ、海は汚され、そして作物を育てる土地も荒れてしまったことを。

 その作物を飼料にする家畜や森に住む虫が死滅したことにより魚を釣ることが限りなく難しくなってしまったのだ。


「なるほどな。なら尚更今すぐ戦をやめてはどうだ?争いは人の中の欲望を高めていくだけじゃ。高まった欲望はよからぬことをする、いずれ人は失った食によって自ら身を滅ぼすことにもなりかねん。」

「おお、そなたはそのように考えてるのじゃな。ならばどのように?」

「確認するが誰もラーメンを食べたことがないんだな?」

「食せるのならぜひ一度味わってみたいと考えてる。」

「わかった。なら食堂をちと借りたいのじゃが、案内してもらえんか?」

「では案内のものをつけよう。」


 わしは案内役の召使いに案内されて食堂へと向かっていった。


「こら早く歩かんか!」

「すみません、なにぶん城内は非常に広いので歩くだけでも息があがってしまいます。」

「全く最近のは全然歩こうとしないから体力ないのー。」


 ぶつくさと文句を言いながら歩くこと10分くらいでようやく食堂へと辿り着く。見たところレストランの厨房にそっくりな内装ではある。


「さて、まずは食材を確認させてもらうぞ。」

「ちょっちょっと休憩~」

「全くほんとに貧弱なやつだのー。まぁいいわい、えと~...あった。」

 食材が保管されている木箱を見つけ、中を見るとその食材は多少傷んでいるが腐ってはいない。小麦粉やかん水を見つけたなら麺は作れる。豚の頭落としもあったためチャーシューも作れそうだ。調味料も塩や砂糖は見つけた。だがネギやワカメ、メンマが見当たらない。そしてダシとして取る小魚などが見つからない。


「してお主、野菜や小魚などが見当たらないのじゃが...」

「なっ!?そのような高騰品を用いるのですか!?」

「ぬぅ...ん?してこれはなんぞ?」

「こちらは現在我々の国で栽培している『キザミ』といいます。万病に聞く粉末の薬に使われます。」


 その形状はネギに限りなく近い。わしの知らない名前の野菜で代替できそうじゃ。

「してそっちは?」

「こちらは浜辺の近くに打ち上がっていた海藻、『パリパリ』『ヌメンヌメン』にございます。正直使用用途は薄い物になります。そしてあちらは『ニョキン』です。催事などに使用されます。」

「それもこっちへ、スープまではなんとかいくの。あとは醤油のダシが欲しいとこじゃ、豆類は何かあるかのー?」

「豆類はこちらです。」


 見せてもらったが大豆代わりになるものがない。味を付ける切り札が存在しないんじゃマズイと思ったが、その横に見覚えのあるものがある。


「これはまさか、ココナッツか?」

「はい、最近新しく発見された大陸にて見つかった新種の果実になります。」


 匂いを嗅ぐと、発酵されておる。これならいけるとわしの経験は語った。

 「ではさっそく調理するかのう。」


 まずはダシとスープ作りから。ダシはココナッツを使用する、発酵したココナッツを切り実を取り出す。それに塩と水を加えてかき混ぜる。そうすれば完成だ。実は風味はあっさりとした醤油に近いものになる、昔果物屋の親父に聞いた話だ。


「なっ!?ココナッツを使用されるのですか?」

「そうじゃ、何か不満か?」

「い、いえ...」


 いちいち口出しおってと思いながらも次はスープとチャーシューを作る。

 スープの元にはすりつぶしたニンニクとこのヌメンヌメンを使用する。形はなんだかコンブとワカメを合体させたような見た目になっており2つに別れている。まずは根本を切りコンブ状のものをスープの元として使う。鍋の一つに水を入れて2時間煮込んで味を染み込ませる。

 その間にチャーシュー作り。豚肉の使う部位を切り落とし、糸を使ってネット状に網目をつける。煮込みの時間や味付けをより早めたりしやすくするために。縛った肉を次にフライパンで焼いていく。焼き目が付いたら今度はもう一つの鍋に水を入れてそのまま水の状態から煮込んでいく。匂い消しにギザミなるものを入れる。まずは1時間。


「ふぅー...」


 さすがに久しぶりに作るから疲れるがやはり楽しい。


「すごい速い手捌きですね。」

「当たり前じゃ、この道数十年の職人をなめるな。」


 ツッコミを入れたところで次にチャーシューの味付けの下準備、塩と砂糖と先ほどの醤油ダシを使っていく。それぞれを容器に入れて5分ほどじっくりとゆっくりとかき混ぜる。空気を含ませればよりコクが出せるのだ。


「さて、次は麺じゃな。」


 まずは小麦粉の確認。見たところ硬質と軟質どちらも使われている。これはわしのいた場所では『強力粉』『薄力粉』の原料になる。容器に塩水を作り、その二つを強4:薄1の割合で混ぜて容器にぶっこみひたすらこねる。


「えっと、パンを作ってるのですか?」

「ええい、やかましいやつじゃな!」


 さてさて、生地ができたら表面が滑らかになるまでひたすら伸ばしていく。大体10回くらい同じ作業をしたら1時間待つ。その間にチャーシューの味付け。先ほど作った味付けタレを鍋に入れてさらに1時間。

 具材を用意する。先ほどの『ギザミ』を薄く刻み、『ヌメンヌメン』も合わせて茹でていたから均等に切る。『ニョキン』の皮を剥き洗ったら切って茹でていく。『パリパリ』はなおそのまま使用。

 ~1時間後~


「生地ができたかな?」
 

 生地を確認したら最後にわしの匙加減で麺上に切って鍋で茹でていく。その間にチャーシューもしっかりと味が染み込んでいる。引き上げて少し厚切りに切っていく。残りはわしの戦利品じゃ。


 何やら食堂の前には先ほどの騎士たちに加えて王までいるじゃないか。


「ゲンゾーよ、早よ食わせておくれ。」

「今集中してんだ、もうちょい待ちな。」

「貴様ゲンゾーとやら、王はチンタラしているお主を待ち侘びているのだぞ!いいかげんに...!」


 側近は怒りのあまり食堂に入ろうとして来たからわしはカチンときて...


「ここは料理人の戦場なんだい!本当に美味いもんが食いたいなら黙って待ちやがれぃ!」

「なっ、なんと無礼な...」

「まぁよいではないか。味に自信があるのだろう?ゆっくりと待とうではないか?」

「王...」


 わしは一礼し、最後の仕上げにかかった。
思えばこうしてわしの仕込みからを間近で誰かに見せるのは初めてのことだった。

 さてさて、スープも麺も完成していよいよ盛り付けに入った。容器に順番としてスープ、麺、具材、チャーシュー、そして最後にバジルをのせて完成。


「ふぃー...完成じゃ。」

「やっとできたか!ではいただこう。」


 王はスプーンとフォークを持っており、まずは麺を一口。

 ゴクリと唾を飲み込んだ。よくよく考えたら一国の王に無礼な言葉遣いを乱用しまくってしまった。もし口に合わなければ投獄、最悪処刑されてしまうのではと不安になってしまった。


「ゔっ...」

 濁音がこもった声が聞こえた。そして少しの間城中が沈黙に陥り...







「美味い!美味いぞゲンゾーよ!このようなものは初めて食したぞ!!

やはりそなたはまごうことなき勇者!皆のもの、宴を開くのじゃ!世界を救う勇者がここに降臨なされたぞー!」

 「うぉー!勇者様が降臨したぞー!!」

「勇者様ー!!」

「お前ら声がでかいんじゃ!?」


 城中がそれはそれは大歓声で響きまくった。耳が遠くなってきたわしがうるさいと思うくらいの声量で、そして宴の準備をするためにそこから皆が大騒ぎになっていった。

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