元英雄 これからは命大事にでいきます

銀塊 メウ

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第六章 伝える想いと伝わる想い 

元英雄 これからは命は大事にでいきます

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 八雲と結城は手をつなぎ佇んでいた。

「八雲!僕は僕が許せないんだ、
でもそれはあゆみが望んでいないことは
分かっていた。八雲!お前の気持ちを
ぶつけてくれて、どうやら少し冷静に
なれたようだ感謝する」
 結城はそう言って両膝をつき倒れる。
それを八雲はしっかりと支えるのだ。

「結城さん、あゆみちゃんに会わせて
くれませんか!僕もしっかりと謝りたい
から、間に合わなくて、
力が足りなくてごめんって!」

 結城はゆっくりと頷き、異次元の
ゲートを開く。そこから、昔と姿の
変わらない、そして穏やかな顔をした
あゆみちゃんがベットに乗せられ
ゆっくりと地面に降ろされていく。

「あゆみちゃん………」
 僕はあゆみちゃんが寝ているベットに
足を進める。そしてあゆみちゃんの顔を
見て目頭が熱くなった。

 あの時、あの時、今くらいの力が
あれば助けられたはず
なのに、僕は僕は、なんて無力なんだ!

 僕の目から涙が溢れた。

「八雲!お前は私と同じ様になるな!
後悔はしても良いが立ち止まるな!
お前は俺にそう言いたかったんだろ、
そのお前がそんなんだと私がまた闇の中に
落ちてしまうぞ良いのか!」

「ダメに決まってるでしょ!僕がどれだけ
苦労したと思っているんですか、
もう進んで下さい」

「あ、分かっている!ただし私は多くの
罪を冒した。だからしばらくは、
その罪を償う旅に出ようと思う」

「結城さん、それなら僕も一緒に!」

「それはダメだ!これは私の罪、
八雲は背負うことでは
ない。だから行かせてくれ!」
 結城は八雲に笑いかけ、その表情から
八雲は安堵した。

「分かりました。結城さん必ず
また会いましょう」

「あ~もちろんだ!まずはあゆみを
今度こそ安らかに眠らせてやらないとな。
埋葬する場所が決まったら連絡する。
もう決して裏切らない皆にもそう伝えて
くれ」
 結城は前とは違う清々しい顔で八雲を
しっかりと見た。

「結城さん、また会える日を楽しみに
しています!今度は皆であゆみちゃんに
あい!?あいあい!?」
 八雲は急に驚きの表情に変わり指を指す。

「どうしたんだ!?別れの挨拶には
似つかない顔だぞ」
 そう言いながら指を指す方向を見て
結城も同じ状態になる。何故ならそこには
目を擦るあゆみが座っていたからだ。

「あれ?お兄ちゃん、八雲、どうしたの
はぁ~あ!なんか、すごく眠いしダルいよ!
何でだろう」
 あゆみちゃんは目をこすりながら
ぼーっとこちらを見て考えている。

 その頃、八雲と結城はそれどころでは
なく混乱して身体が動かなくなっていた。
しかし時間がそれを解決してくれた。
先に回復したのは八雲、理由は分から
ないがあゆみちゃんは生きている。
八雲は結城さんの肩を持ち揺らして
正気に戻そうとしたが全く戻って
来さないので往復ビンタで対応、なんとか
目に光が戻ったので顔をあゆみちゃんの
方向に向ける。

「あ、あゆみ、お前本当にあゆみなのか?」

「お兄ちゃんどうしたの?凄い顔を
しているよ!」
 あゆみちゃんはやや引いているが、
結城さんはお構いなしにあゆみちゃんに
向かい抱きしめた。あゆみちゃんは理由が
わからず困惑していたが、結城さんを
抱きしめゆっくりと頭を撫でた。

「なんであゆみちゃんが生きているんだ?
確かに死んだはずなのに」

「誰も気がついて無かったんだよ!
彼女が死んでなかったことに」

「あ、あんたは」
 いつの間にかそこには一人の少年が
立っていた。見た目はなんの変哲もない
のに、その気配は異様
そこに居るのになにも感じない。

「ただそこに存在する者」
 八雲の口から自然と出てきた。

「そうだよ!僕はただ存在するだけさ~
それにしても良かったね彼女が生きてて、
ま~そもそも君の『ライフ』の力なん
だけど!」

「そんな!?あの時確かにあゆみちゃんは
死んだはず……」

「そうだね!死んだはず、だけど死んで
なかった。君の力は黄泉の世界に行く前に
彼女を救ったんだ!ただそれは凄く
大変な事、効果が現れるまでにかなりの
時間を要したみたいだね!やっと
生き返った。勇者くんが異次元に
閉じ込めて時を止めていたのも良かったね!
あれのお陰で肉体も保つことが出来た。
万々歳だね八雲!」

「そうか、そうか、良かったよ」
 八雲は安堵して再び涙を流す。

「八雲、お客さんだよな」視線を
向けた先には、

「女神ヘル!あんたがまだ居たか!」

 女神ヘルはつまらなさそうに結城さんと
あゆみちゃんを見てから八雲に視線を
向ける。

「つまらないはね!もう少しで
面白そうなものが
見れると思っていたのに」

「そうかい、それは残念だったな!
女神ヘルもうあんたは逃さない!あんたが
諸悪の根源なんだからな!」

「逃さないですか!人間風情が随分と
偉そうですね神の力の一旦に触れた程度の
人間が私をどうにかしようと
思っているとはおこがましい!」
 女神ヘルから恐ろしいオーラが放たれる。
確かにこれを人間が対抗出来る力ではないと
八雲は感じたけど、

「諦めるわけにはいかないんでね!
それになんの策もなしにこんな事は
言わないよ!」

 八雲はポケットから取り出したのは
正三角錐の水晶、
それを女神ヘルの真上に投げた。

 水晶は光の線を出し女神ヘルを囲うと、
四隅にそれぞれ人影が現れる。

「まさか!?ここまでやるとは
思わなかったわ」

 現れたのはガイヤ様を含めたこの世界を
守護する神々。

「八雲、良くやった!ここからは
私達がなんとかしよう。
しかし、ヘルとの話は長くなりそうだ!
君と話ができるのはこれで最後だ!
私達がしばらくいなくなるがこの世界を
しっかりと支えてくれたまえ!」
 
 女神ヘルそれでガイヤ様達は光の柱を
発生させ天へと登り消えた。

「これで最後だな!」
 
「違うよ!こんな事で終わらない!
君はまだ進まなければいけない。
これは終わりであって次の始まりなんだよ!
また会えるのを楽しみにしているよ
八雲……じゃーね!」

 存在する者は軽く手を振り消えて行った。
 
 八雲は様々な戦いの中で人の命が
尊い事を学んだ!そして親しい者たちの為
なら命をかける価値がある事も知ることが
出来た。だから俺は命を大事にでいきます!

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