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第125話 それぞれの決断
しおりを挟むあれから元の世界に戻るとオカマが目の前に居た。咄嗟に逃げようとしたけど、すぐに捕まり抱き締められる。心配はかけたけど、これはないわ。
それからジェーさんには腕を治した件で涙を流しながら感謝された。良いことはするもんだね!
ジェーさんと話をしているとアポロンとノルンが迎えに来てくれた。バロン様が俺達に話がしたいとのこと、急ぎバロン様が居る村長の家へ向かった。
「バロン様お待たせしました」
「いや、いきなり呼び出して済まないタクトくん、これで全員かな」
ここにはバロン様親子、アポロン親子、イグニス、ジェーさん、そして父さん、母さん、俺と………一体何の話をするのだろうか?
「みんなに集まってもらったのは他でもない。私は貴族の立場をおり領主をやめようと思う」
な、なんだって!?それってバロン様……どうして。
「みな驚いているようだか、もちろん理由はある。一つは町の再生は恐らく難しいだろう。あれだけの惨状ではみなが幸せに暮す為の環境を整えるのに十年以上かかると思う」
確かに家の約8割がもう住める家の状態じゃない。補修でどうこう出来るレベルでもない。そうなれば一から建直すことになる。人や資材の確保を考えれば現実的ではないのかもしれない。
「二つ目は、シャックス侯爵の件だ。アイツ自身は動けない状態だが恐れる他の貴族が報復に来る可能性がある。私と一緒にいれば巻き込まれ大惨事になるだろう」
う~ん、しまったな~これならシャックス侯爵とジャックを殺しておけばよかった。あの時はシャックスの配下の魔物達が攻めてくると思ってテンパってたから、アイツラのことをすっかり忘れていた。これはオレの失態だ。
「そして三つ目、私自身やはり何らかの責任を取らなければならないと思っている。もちろん町の住民を放っておくと言っている訳じゃない。出来る限りの支援はする。とは言っても私の財産はほとんど燃えてしまったがね」
確かにバロン様が言っている意味は分かるけど恐らく町の住民は誰一人としてバロン様に領主をやめて欲しいとは思っていない。だからやめる必要はないんだけど、バロン様自身がケジメをつけたいと思っているなら、止めるのはなかなか難しいな~
「以上のことから私は貴族をやめ、領主と言う立場をやめさせて貰いたい」
う~ん……今ここにいるみんなはやはりバロン様にやめて欲しくないのだ。誰一人として良い顔をしている者はいない。そんな中一人だけ別のことを考えていた者が居た。
「バロン、四つ目を言ってないわよ」
スカーレット様は他にも理由があると言い出した。それを聞いたバロン様は明らかに動揺している。実は他にも理由があったのか!もしかしたら
それこそがバロン様がやめる最大の理由!
「何を言っているんだスカーレット、そんな物はないから」
「あら!あなたが言わないなら私が言いましょうか?」
「いや~アハハハ、スカーレットは私のことを良く分かっているな~……諦めるか」
ガックリするバロン様、そしてその姿を冷めた目で見ている父さん、神父様、イグニス、もしかして3人は分かったのか。
「前から言ってるが私は貴族のようなかしこまった生き方は性に合わない。出来ればやめたいです」
バロン様……
俺も父さん達みたいな目でバロン様を見ていた。
「ダメよ!バロン…………と本当でしたらそう言いたいところですが、四つめはともかく最初の三つ目の件を考えれば、あなたの考えは妥当よ。私としてはムチで縛りつけてでもやめさせなくたいのだけれど、今回は仕方ないわね」
「おー!スカーレット~」
相当以外だったんだな。バロン様の表情は喜びではなく驚きの顔になっていた。
話がまとまりそうになっている。しかしよくよく考えると問題点のいくつかはどうにかなることに気がつく。
「あの~バロン様一つお話があるのですが、宜しいですか」
「あ~もちろんだよ!なんだい!タクトくん」
バロン様は上機嫌の様でテンションがそこはかとなくいつもより高い。
「お金の件なんですけど、あてがありまして、少しはお役に立てます。カンナ例のヤツを」
「任しとき~………オェ~」
「てぇ!なんでぇやねん!」
カンナが口から大量の金貨を吐き出す。それを見た俺はツッコミを入れて止めるのだ。
「口じゃなくても出せるんだろうが!ワザとか!」
「いや!ちゃうねん!ついクセでな~……」
カンナはそれから金銀財宝、高価な美術品など金目の物を出す。
「タクトくん……これはなにかな?」
バロン様をはじめ皆さん目が点である。
それはそうかも知れない。何故かって、それは山積みになった金貨なんて一生見ることなんて一般市民や其辺の貴族でもない。そのくらいの量が積まれていたからだ。
「これはですね~。慰謝料ですかね!」
「慰謝料?何の慰謝料かな?」
「そりゃ~町に与えた損害ですよ。あれだけやったんですから当然ですね」
「当然って……まさか!?……タクトくんは意外と抜け目ないね」
「いえ、むしろ当然のことをしたまでです」
出した金貨の傍に行き、手に取りスカーレット様は納得する。
「うん、これだけあれば足りるわね。流石はがめつさで有名なシャックス侯爵、ちゃんと溜め込んでいるじゃない」
良かったスカーレット様の反応から住民がしばらく暮らして行けるだけのお金にはなりそうだ。偶然だったけど財宝が隠された部屋を見つけれて良かった。
「タクトくん、その良いのかい。これはある意味君が勝ち取ったお金だよ。これだけのお金があれば一生遊んで暮らせるほどの、君はこれが欲しくないのかい?」
「いや、それは欲しいですけど、それよりみんなが困っているなら、そっちで使って欲しんです。お金はまた稼ぎます。遠慮なく使って下さい」
「まったく君は……借りがまた出来てしまった。ありがとうタクトくん。遠慮なく使わせてもらう」
「はい、お願いします。あともう一つ、さっきの話を聞いて思ったんですけど、多分バロン様は大丈夫ですよ。町を襲われた理由、それに恨みを買っているのはボクです。狙われるとしたらボクだ。だからバロン様達はマルクトに行って下さい。あとはボクがやります」
そう、これは俺の戦いだ。周りのみんなを巻き込むな!ゴエティア。絶対にお前達を壊滅させてやるよ!
「バッカじゃないの!ダメに決まってるでしょ」
ノルンは俺に突き刺さるくらい近くで指を差して言った。
「そんなの私が放っておくとでも思ってるの!タクトが嫌だって言ってもついて行くわよ私、あなたを一人には絶対にしない」
「うむ!流石は我が娘だ!私が言う前に言われてしまったな。タクトくん、私もだよ!言っただろ。私は君を守ると、君がターゲットにされたのならなおのこと私は貴族をやめてついて行く意味があるというものさ」
「いや、でも、みんなを巻き込むのは、ボクの本意ではありません。ですから……」
そこに先程まで沈黙を貫いていた神父様が割って入った。
「タクトくん聞いて下さい。ここに居る誰もがあなたを大切に思っています。ですからその様なことを言われても誰も納得はしませんよ。むしろ困っていれば助けてと声をかけてくれた方が喜ぶ者達しかここにはいません」
「はぁ~しゃねぇ~付き合ってやるよ」
「アポロンまで……」
「世話の焼ける弟子じゃ」
「タクトは友達なのだ!」
「先生、ニキもかよ」
後ろからギュッと抱き締められる。
「タクちゃん、お母さんはタクちゃんが死ぬまで一緒よ!」
「もちろん父さんもだぞ!タクト」
「父さん、母さん……」
その姿を見たジェーさんは感動して出来るだけ静かに泣くのだ。
こうしてバロン様は領主と言う立場を降り、町の住民達はマルクトに移住した。
そして俺達は新たな生活を送ることになる。
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