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第289話 ティアの思い違い
しおりを挟む◆アーチの視点
ここは王都エリウスの教会、もちろん教会と言っても他の町とは規模が違う。巨大な建物であり大聖堂と呼ばれている。この教会で働く信者は千人と非常に多く、イリス教の聖騎士団もここに勤めている。確かここには第10師団のメーデ団長のところだったけ?
「ねぇ~アーチどうしよう……何にも思いつかないよ~」
オロオロするティア、日頃から落ち着いているこの子のこんな姿を見ることはあまりない。つまりそれだけ動揺する程ヤバいと思っているのだろう。
「ま~落ち着きなよ。も~着いちゃったんだから諦めよ。たぶんなんとかなるでしょ」
「そんな~……アーチはなんでそんなに冷静なのよ~」
「私って頭の切り替えが早いって言うか、諦めるのが早いって言うか、考えるのあんまり好きじゃないのよ」
考えるな!感じろってね!ま~ウジウジ悩むのが嫌いなだけなんだけど、ティアが悩むのは分からないでもないけど、相手は教会…そこまでにはならないでしょ。
「アーチは良いよね。私は無理、どうしても気になっちゃって……」
「ふ~ん……分かったよ!ティアがそこまで言うなら……」
アーチはタッタッタと軽く駆けるとミルキーさんに話しかける。
「ミルキーさん、今から教会に行きますけど、何するかスカーレットさんから聞いています?」
「ん?……特に聞いてはいないですよ。情報を手に入れる為に殴り込みに行きましょって、言われただけです」
「「………………」」私とアーチは無言になる。
これって止めないとヤバいじゃない!
私はイリス教の信者として………えーい!ままよ!
私はみんなの前に移動し手を広げて制止した。
「やめましょう!そんなの!絶対にダメです!」
私がみんなを止めるとスカーレットさんがギロッとこちらを見たので思わず私は肩をビクッとさせる。
「はぁー!……そう言えばあなた達には何も言っていなかったわね。ミルキーさんが言ったのはあくまでもそうなるかもしれないと言う話よ。別にいきなり殴り込みに行こうと言う話ではないわ」
「え!?………そう…何ですか」
私は驚く。
「当たり前でしょ、いきなり教会に殴り込みに行くヤツなんてこの世のどこを探してもいるもんですか。もしもいたのならそれは相当クレイジーな人達よ」
「そ!そうですよね。すいません……つい慌てちゃって、でもそれなら一体何をしに行くのでしょうか?」
「あなたはおかしいと思わないの。教会は独立して動く機関よ。王都で反乱が起き、それは人が起こしたことであれど悪魔が関わっていることが分かっているのでしょ、それなら教会がこれだけ静かなのはおかしいわ」
「は!?確かに…………」
王都でこれだけ大きな事件が起き多くの死傷者も出ている。そうなれば住民は不安になり怒り…悲しみ…恨むなどの負の感情が広がる。悪魔はそんな中に紛れ込み取り憑く。だから教会はそれを防ぐ為に住民に寄り添い声をかけ少しでも不安を和らげたり、聖騎士団が巡回することで安心させる。昨日町をあれだけ回ったのにも関わらず教会の人間は見ていない。それは教会として務めを果たしていないと言える。
「そうですね。私も教会の人間として確認する義務があります。スカーレットさん気づかせて頂きありがとう御座います」
私は深々と頭を下げる。
「そんなこと気にしなくて良いわ。さ~行きましょう」
………………▽
大聖堂に入ると本来多くの信者が集う場所にも関わらずシスターが数人見えるだけで非常に静かであった。
「どちら様でしょうか?お祈りに来られたのならそのまま進むとイリス様の像が御座います。そちらへどうぞ」
近くに居るシスターが参拝者と思い案内してくれた。
「いえ、私達は参拝者ではありません。すいません突然で申し訳ございませんが大司教様にお会いしたいのですが」
「それはどの様なご要件でしょうか?それに申し訳ありませんがゼーラント大司教は留守にしておりまして、お戻りになるのにしばらくかかるかと思われます」
あ……そうでした。この教会はゼーラント大司教が担当されていました。彼は先の戦いで悪魔と共謀しタクトくんに倒され亡くなっている。そう言えば聖都マーリンのゴタゴタで王都にはまだ話がいっていないかも、それでは今は一体どなたがこの教会を取り仕切っているのでしょうか?
「分かりました。では今こちらを管理されている方とお話させて下さい。この町の状況についてお聞きしたいのです」
「あの~失礼ですが、お名前を聞いても……」
「失礼致しました。私は聖女候補生で役職は司教になります。ティアと申します。お目通りをお願い致します」
「ティア様!?あの奇跡の聖女と言われた」
「いえ…そこまでは、あの~それでお願い出来ますでしょうか」
「はい!失礼致しました。すぐに応接室にご案内します」
シスターはすぐ側に居る別のシスターに指示を出し私達を応接室に案内してくれた。
「そう言えばあなたは未来の聖女だったのね。正直話を聞くのに怪しまれて追いかいされるのを危惧していたけど助かったわ」
「いえ、私もスカーレットさんに助けられました。本来は私が気づくべきことでしたのに」
「フッ…良いのよ。人が一人でやり切れないことは多くあるのよ。だから協力し合うのでしょ」
「あ!はい、私もそう思います」
私は勘違いしていた。この方は実はとても聡明な方なのです。確かに手荒な面はあったけど、それは民を思ってのこと、きっとそうに違いありません!
それから三十分後……
炎の鎖で天井に吊るされた司教様を見て思う。
私はきっと何かを間違っていたと………
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