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第378話 VSトリスタン⑥
しおりを挟む姿が変異したトリスタンを相手にノルンは戦う姿勢を崩さない。しかしそれをイグニスが止めた。
「お前はこの辺にしとけ、こっからは師匠である俺に任せておけ!」
「………なんか偉そうでムカつくけど」
「えぇ!?師匠たぞ!ちょっとは偉ぶってもいいじゃねぇ~かよ」
イグニスは納得いかないとムスッとボヤく。それを見てノルンは笑いを堪らえようとしたけど我慢出来なかった。
「プフッ、ごめん!だってイグニスってからかいたくなるんだもん」
「おいおい!そんなの納得いかないぞ!」
「ま~ま~、私が何度も弟子にしてって言ったのに弟子にしてくれなかったじゃん!だからお返し。分かってる。イグニスは私の師匠ですごく強いって、だからあとは任せるよ」
ホッと安心してノルンはまた座りこむ。
イグニスは満足したのか、トリスタンを見据え腕をブンブンと回し身体をほぐす。
「さ~~って!やっちゃるかい。お前は俺がへし折ってやるよ!」
「待った!」
「おえ!?」
イグニスは気合を入れまくっていたので突然止められ動揺、変な声が漏れた。
「おい!どう言うつもりだ!バロン」
「悪いなイグニス、娘があんなに頑張ったんだ。父親として少しはカッコいいところを見せたい。引いてくれ!」
「俺も師匠としてカッコいいところを見せたいんだが」
「フフッ、師匠より父親が優先させる。潔く引こうかイグニス」
「なんだよ!いつになく本気(マジ)じゃないかよ。久しぶりに剣士の血が騒ぐかよ」
「いや、そんなのではない。あいつは元ではあるが部下だった男だしな、私の剣で救ってやりたいと思ったまでよ」
「頑張ってくださいお父様!」
「あれ~?ノルンさん、師匠の出番は?」
コロッと手のひら返し?
さっきまでは俺が行く感じだったよ~
イグニスはショックを受ける。
「悪いわね。イグニス、ちゃんとお父様が強いってトリスタンに見せてあげたいの。だから今回は堪えて」
「ん~~……しゃ~ない。今回は譲るわ。ちゃんとやれよ~バロン」
イグニスは軽く手を振りながら歩き、城壁に背をもたれさせタバコを取り出し一服する。
イグニスはバロンに任せることにした。
◆トリスタンの視点
ぐっぐっがぁ……苦しい。
私は剣に身体を操られてしまった。
一年前、私は国の最強の騎士として認められ、その名が他国でも聞かれるようになった頃だった。私は国王に呼ばれ、そしてそれを授かった。
聖剣アロンルード
私の為に特別に作られた最高の剣……
持った瞬間にしっくりと手に合う。
とても不思議な剣だと……その時は思った。
数々の任務の中、私は剣を振り敵となる者を倒した。
(この剣、なんて斬れ味をしているんだ。闘気(オーラ)を纏わせなくても鉄の盾を切断出来る)
剣を見ながら私は自然と笑みを浮かべていた。
魔物を斬り、人を斬る。
斬るのが楽しくなった。
斬れば斬るほど自分の強さを実感出来る。
その頃には自信過剰な私が形成されていた。
誰にも負けはしない!……この剣がある限り!
だけど………
私はノルンと言う少女にに負けてしまった。
それでも私は諦めきれず……
醜く、情けなく、それでも足掻いた。
しかしそんなことをしても無駄。
ここに居る人達は甘くはない。
暴走している私などに遅れは取らない。
認めなければいけない。私が弱いのだと。
少し前の私なら認めることで、また歩き出せたのに。
ショックに耐えられなかった。
今まで積み上げて来たものが崩れていく。
そして囁く、悪魔の誘(いざな)い
この剣が悪魔だったなんて………
ボルジア公爵……あなたと言う人は!
身体が熱い、そして息が出来ない。く…クルシい…
(誰か~助けてくれ~)
私の身体は変異した。悪魔憑きとなり、私の意思に反して身体が動いてしまう。
(バロンさん………)
私の前に立ちはだかったのはバロンさん。
(………ダメだ!バロンさん逃げてください)
悪魔は私の命を使って無理やり力を引き出している。膨大な力だ。このままだとバロンさんを殺してしまう!?
剣に闘気(オーラ)が吸われていく。
悪魔は試すように剣を振らせると、地面が大きく抉れる。確実に私より強い。
(くっそーー!このままで良いのか?……ダメに決まっている。バロンさんを助けるんだ!)
「に…に…にげて……」
「ん?トリスタンなのか……」
私は悪魔に逆らいたどたどしくも声を発した。
そしてバロンさんも気づいてくれた。
「バロンさん……ごめん…あんなにお世話になったのに、ワタシはなにてことを……お願いだ……逃げて……」
私は必死に悪魔に抵抗して訴えた。
しかしバロンさんの反応は意外なものだった。
苦笑い?どうしてそんな顔をしているんだ。
「トリスタン、お前は……いつも調子に乗るなと言っただろ。強さって言うのは技術だけではない。心の強さも必要だ。まだ指導が必要だな」
バロンさんはゆっくりとこちらに歩いて来る。
逃げるつもりはないようだ。
(バロンさん、あなたは……こんな私を助けようとしているのか?)
私の目から涙が流れた。
「どうやってやろうか……やはり寄生体の悪魔を排除するのが早い」
「あぁ!お前如きが大きな口を利くな!トリスタンに負けたお前が、今のコイツに勝てるとでも思っているのか!」
「うむ!剣の悪魔よ。お前は剣の振り方を知っているのか?」
「なに!?オマエ~殺す!」
剣の悪魔は怒りだす。やはり剣である自分にプライドがあるのだろう。なんせ自身が剣なのだから、でもバロンさんの言う意味、さっきの一振りが物語っていたことに私も気がついた。
「跡形もなく消してやろう」
悪魔は背を反らし大地斬の体勢を取る。
「うむ。久し振りだからな。緊張する」
スーーッと流れるように腕を引き突き体勢を取る。
これはノルンが神紅天を放つ体勢によく似ていた。
闘いは一瞬だった。
私が動いたとほぼ同時に真上にあった剣の刀身が切断され後ろに飛んで地面に刺さる。
なんて速さだ。前より速くなっている。
バロンさんの二つ名『光剣のバロン』の剣ですか、私は剣の柄を手から手を離し、膝をついて頭を下げた。
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