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金魚屋の跡取り編
第3話 狙われた鯉屋の跡取りの片割れ
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黒曜の要望通り、結は人払いをした。
雛依は側仕えとしてしっかりしなきゃいけないと思ったのか、椅子には座らず立ったまま結の後ろに控えた。しかし、そんな固いことしなくていいんだよ、と結はいつものように雛依を膝に乗せた。
この和やかな雰囲気は黒曜を苛つかせているのは見て取れたが、あえて結は雛依をべたべたに甘やかしていた。
「言いたいことあるなら言っていいですよ」
「仲睦まじくて大変よろしいかと」
「棒読み~」
黒曜はふんとため息を吐いたけれど、逐一相手にしていてはきりがないと悟ったのかコンコンと机を軽く叩いて話をし始めた。
「まず依都と神威は一緒にいる。これは間違いない」
「依都様からは大切なお出かけだって聞いてます」
「正確には神威がだ。ちょいとばかし魂に問題のある人間がいて、その守りにあたってる」
「へえ。てっきり依都主体なのかと思ってましたけど」
「依都は必要無いんだ。けどあいつらは引き離すわけにいかないしな」
「はあ。それ僕らよりも大事な魂なんですか?優先順位低いなら連れ戻してください」
「最優先だ。何しろ鯉屋の跡取り様の命にかかわるからな」
「え!?結様に?」
ぴくりと結の指が震えた。
現世では既に死んだ結に影響する現世の魂なんてあるわけがない。生死を乗り越え結と繋がる魂があるとすれば、その条件で思いつくのはたった一人だった。
「……まさか」
「棗累だ」
黒曜は結が驚き目を向くと、してやったりとばかりにほくそ笑んだ。
雛依はその表情にむっとしたけれど、結はそんなことは気にも留めず黒曜をぎろりと睨んだ。
「魂に問題ってどういうことですか」
「俺のせいじゃねえよ。双子ってのは魂を共有してる場合がある。何でかは俺も知らん」
「共有?一つを二人でってことですか?」
「そうだ。遺伝子が瓜二つだからか、存在が同一視されることがあるな」
「そっか!それで結様って魂が少ないんですね!」
「少ない?」
首を傾げて不思議そうに語る黒曜とは逆に、雛依はぽんっと手を打って大きく頷いた。
「魂は動力です。動力が少ないから結様は疲れやすいんです」
「もしかして毎日金魚湯飲むのってそれで?」
「そうですそうです。だから彩宮へ行く時も疲れちゃったんですね」
結は魂というのがなんなのか、今ひとつわかっていない。
現世では概念であり物理的に存在するものではないからだ。しかしこの世界は魂が全てを左右している以上、その有無は確実に何らかの影響がある。それが結の場合は肉体疲労というわけだ。
「それで、何から累を守ってるんですか?」
「出目金だ。何でだか棗累だけを狙ってやがる」
「そんなの変です。出目金は現世の人間には見えないし特定の人間を襲ったりしません」
「金魚屋が分からないなら俺なんてもっと分からん」
「結様の片割れだからですかね」
「出目金が自らか?ねえだろ」
「いえ、いますよ。僕を殺したい出目金遣い」
ん、と雛依と黒曜は目を見合わせ首を傾げた。だがすぐに雛依が何かに気付き、シュッと勢いよく手を挙げ飛び跳ねた。
「はいっ!分かりました!虹宮!」
「正解。どうしても鯉屋が欲しいんだろうね」
「またあいつらか……」
はあ、と黒曜は今日何度目か分からないため息を吐いた。
しかし結は嬉しそうにすっくと立ちあがる。
「でもちょうどいいです。黒曜さん、累を連れて来る事はできますか?」
「ああ。依都に往復手段を持たせてる」
「やっぱり跡取りの招待は紫音さん独自のものじゃないんですね」
「道具を使わず素手でやるのは紫音だけだ」
「道具?黒曜さんは道具を使うんですか?」
「ああ。説明するより見た方が早いだろうな。付いてこい」
黒曜はニッと得意げな笑みを浮かべると、結の部屋を出て迷いのない足取りで鯉屋の中を進んで行った。
結は雛依を抱っこしたまま黒曜の背をじっと見つめ、また、雛依も同じように黒曜を見つめていた。
雛依は側仕えとしてしっかりしなきゃいけないと思ったのか、椅子には座らず立ったまま結の後ろに控えた。しかし、そんな固いことしなくていいんだよ、と結はいつものように雛依を膝に乗せた。
この和やかな雰囲気は黒曜を苛つかせているのは見て取れたが、あえて結は雛依をべたべたに甘やかしていた。
「言いたいことあるなら言っていいですよ」
「仲睦まじくて大変よろしいかと」
「棒読み~」
黒曜はふんとため息を吐いたけれど、逐一相手にしていてはきりがないと悟ったのかコンコンと机を軽く叩いて話をし始めた。
「まず依都と神威は一緒にいる。これは間違いない」
「依都様からは大切なお出かけだって聞いてます」
「正確には神威がだ。ちょいとばかし魂に問題のある人間がいて、その守りにあたってる」
「へえ。てっきり依都主体なのかと思ってましたけど」
「依都は必要無いんだ。けどあいつらは引き離すわけにいかないしな」
「はあ。それ僕らよりも大事な魂なんですか?優先順位低いなら連れ戻してください」
「最優先だ。何しろ鯉屋の跡取り様の命にかかわるからな」
「え!?結様に?」
ぴくりと結の指が震えた。
現世では既に死んだ結に影響する現世の魂なんてあるわけがない。生死を乗り越え結と繋がる魂があるとすれば、その条件で思いつくのはたった一人だった。
「……まさか」
「棗累だ」
黒曜は結が驚き目を向くと、してやったりとばかりにほくそ笑んだ。
雛依はその表情にむっとしたけれど、結はそんなことは気にも留めず黒曜をぎろりと睨んだ。
「魂に問題ってどういうことですか」
「俺のせいじゃねえよ。双子ってのは魂を共有してる場合がある。何でかは俺も知らん」
「共有?一つを二人でってことですか?」
「そうだ。遺伝子が瓜二つだからか、存在が同一視されることがあるな」
「そっか!それで結様って魂が少ないんですね!」
「少ない?」
首を傾げて不思議そうに語る黒曜とは逆に、雛依はぽんっと手を打って大きく頷いた。
「魂は動力です。動力が少ないから結様は疲れやすいんです」
「もしかして毎日金魚湯飲むのってそれで?」
「そうですそうです。だから彩宮へ行く時も疲れちゃったんですね」
結は魂というのがなんなのか、今ひとつわかっていない。
現世では概念であり物理的に存在するものではないからだ。しかしこの世界は魂が全てを左右している以上、その有無は確実に何らかの影響がある。それが結の場合は肉体疲労というわけだ。
「それで、何から累を守ってるんですか?」
「出目金だ。何でだか棗累だけを狙ってやがる」
「そんなの変です。出目金は現世の人間には見えないし特定の人間を襲ったりしません」
「金魚屋が分からないなら俺なんてもっと分からん」
「結様の片割れだからですかね」
「出目金が自らか?ねえだろ」
「いえ、いますよ。僕を殺したい出目金遣い」
ん、と雛依と黒曜は目を見合わせ首を傾げた。だがすぐに雛依が何かに気付き、シュッと勢いよく手を挙げ飛び跳ねた。
「はいっ!分かりました!虹宮!」
「正解。どうしても鯉屋が欲しいんだろうね」
「またあいつらか……」
はあ、と黒曜は今日何度目か分からないため息を吐いた。
しかし結は嬉しそうにすっくと立ちあがる。
「でもちょうどいいです。黒曜さん、累を連れて来る事はできますか?」
「ああ。依都に往復手段を持たせてる」
「やっぱり跡取りの招待は紫音さん独自のものじゃないんですね」
「道具を使わず素手でやるのは紫音だけだ」
「道具?黒曜さんは道具を使うんですか?」
「ああ。説明するより見た方が早いだろうな。付いてこい」
黒曜はニッと得意げな笑みを浮かべると、結の部屋を出て迷いのない足取りで鯉屋の中を進んで行った。
結は雛依を抱っこしたまま黒曜の背をじっと見つめ、また、雛依も同じように黒曜を見つめていた。
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