短編集 君への思い

みか

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シャツを着た君

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彼はいつも白いシャツを着ていた。何かの習慣か、それとも単に好みなのか。彼自身には理由はなかった。ただ、シャツを着ることで自分を整えているような気がしていた。

彼はある日、いつものように白いシャツを着て出かけた。駅前には大勢の人がいた。彼は人ごみをかき分けて進んでいくと、ふと目が止まった。そこにいたのは、かつての彼女だった。

彼女は今でも彼の心の中に生きていた。彼女と別れてからも、彼は彼女のことを忘れられなかった。彼女もまた、彼を忘れられなかったのか。彼は不意に彼女に話しかけた。

「久しぶりだね。元気にしてた?」

彼女は少し驚いた様子で彼を見つめたが、やがて笑顔を浮かべた。

「元気だよ。あなたも変わらないね。まだ白いシャツを着ているんだ」

彼は自分でも気づかなかったが、確かにいつもと同じ白いシャツを着ていた。彼女の言葉に、彼は不思議な感覚を覚えた。

「そうだよ。白いシャツが好きなんだ」

彼女は微笑んで言った。

「私も覚えてるよ。いつも白いシャツを着て、おしゃれに気を使っていたのが。あの時のあなたが好きだったんだ」

彼は彼女の言葉に戸惑った。彼女が自分を好きだったということに、今更ながら気づいたのだ。

「本当に?」

彼女は再び微笑んで言った。

「本当だよ。あなたが着ている白いシャツが好きだったんだ」

彼女の言葉が彼の心に染み込んでいく。彼はふと、自分が何をしているかわからなくなった。

「でも、もう遅いよね。僕たちはもう別れたんだから」

彼はそう言いながら、彼女の手を握った。彼女も彼の手を握り返した。

「でも、私たちの気持ちは変わっていないでしょう?」

二人は結婚してからも、幸せな日々を送っていた。彼は仕事にも励み、彼女を大切にすることを忘れなかった。

ある日、彼女が妊娠したことが分かった。彼は喜びを隠せず、彼女に対して更に優しくなった。

彼は白いシャツを着たままで、妊娠中の彼女を手伝い、彼女のために料理を作ったり、買い物に行ったりした。彼女は彼の優しさに感動し、彼をますます愛するようになった。

そして、長い待ち時間の末、ついに赤ん坊が生まれた。彼は父親としての喜びを噛みしめながら、白いシャツを着たままで子育てにも積極的に関わった。

時が経ち、子供も成長し、家族はますます大きくなっていった。彼は白いシャツを着たまま、家族と一緒に過ごす日々を大切にし、家族の幸せを守り続けた。

そして、老いていく彼は、白いシャツを着たまま、孫たちにも優しく接し、家族の絆を深めた。彼は彼女との思い出を胸に、一生愛し続けた。

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