タイマン専門魔術師で何が悪い!!

ただの置物

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タルトスの冒険者

冒険者ギルド

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 入り口に『冒険者ギルドへようこそ‼︎』と書かれた看板がある建物。
 俺はその建物の入り口に立っていた。

一昨日届いた手紙によると、今日の14時にギルドで待ち合う予定らしい。
 学院を出たのが13時半だから、今はたぶん待ち合わせ5分前ってところか。

 そんな事を考えながら、俺はギルドに足を踏み入れた。
 そこにいたのは冒険者らしき人、商人らしき人など様々。

「あ、いらっしゃいませー。っと、もしかしてレイ・ワーグナーさんですか?」

 ギルドの職員らしき女の人が、俺に近づいてきてそう問い掛けてきた。

「そうです……。えっと、なんで俺の名前を……?」
 
 確かに今は魔術学院の制服を着てるけど、個人名まで特定できる訳がない。
 俺がそう疑問に思っていると、職員はとある席を指差した。

「名前はあの方々に教えてもらいました。では、こちらへ」

 指差した席に向かう職員についていくと、そこには2人の男女がいた。
 机の上には食べ終えた皿やグラスがある事から、昼食をとっていたのだろう。

 頭を下げ「では、ごゆっくり」と言って去っていく職員を見届けてから、俺は2人の方を見る。

 男性の方は綺麗な茶髪に整った顔立ち、それに鎧越しでもわかるくらいに筋肉がすごい。さぞモテるんだろうな。

 女性の方はブロンドの髪を肩のあたりまで伸ばしている。美女って感じ。椅子にたて掛けている杖は見るからに高そうな代物だ。

「あなた達が俺を誘ってくれた2人で合ってますか?」

 男は「あぁ」と頷き、右手をこちらに差し出してきた。

「これからよろしくな。俺はベル・バッククロージャー。こっちがニーナ・エイナルだ」

 俺は差し出された手を取り、頭を下げた。

「俺はレイ・ワーグナーです。これから1年間よろしくお願いします」

「よろしくね。私も3年前に魔術学院を卒業したばっかりだから、敬語とかは大丈夫だよ」

 ニーナさんが微笑みながらそう言った。
 3年前に卒業って事は、21歳? 
 ……これ、大丈夫か? 

 ベルさんは俺が考えている事を察したのか、

「心配するのも分かるが、大丈夫だ。俺たちの冒険者歴は確かに3年だが、実力はかなりある方だと思うぞ」

 と言ってきた。
 確かに魔術学院が、変なパーティに生徒を入れさせる訳ないもんな。

「よし。それじゃあ、俺のパーティー内の役割ってのを教えておこうと思う」

 その言葉に俺が頷くと、ベルさんは腰にさげた剣を指差した。

「まず俺。俺は見ての通り、剣士だ。簡単に言うと、お前ら魔術師を守る前衛だな」

 ベルさんは見た目の通り、パーティで最も重要と言っても過言ではない剣士のようだ。
 
「私は大体ベルを回復してるわ。ベルが余裕そうだったら、モンスターを攻撃するかも」

 ニーナさんはハイブリッド魔術師みたいな感じだな。

 確かパーティーにはモンスターの注意を引く盾役と、状況に応じて盾役にもなれる剣士、モンスターを攻撃する黒魔術師、盾役を回復する白魔術師が必須って教師が言ってたよな。

「じゃあモンスターへの火力ってのは、ニーナさんの黒魔術だけ……? それって、モンスター倒せるんですか……?」

 俺が訝しむように聞くと、ベルさんが「あー」と言う。

「うちのパーティ、レイがいなかったら2人な訳だ。そうすると、俺がモンスターから守るべきはニーナだけなんだよ。だから、俺も結構余裕があって、頻繁にモンスター斬りつけたりしてる」

 あぁ、なるほどな。
 パーティーメンバーが少ないからと言って、1人あたりの負担が少なくなる訳じゃないのか。
 
「納得してくれたか? それと、お前の役割だが……」

「あ、ちょっと待ってください。俺は黒魔術はある程度使えるけど、白魔術は全く使えないんですよね。だから、それも考慮して欲しいです」

 攻撃魔術と呼ばれる黒魔術と、補助魔術と呼ばれる白魔術。
 本来なら両方の才能があるはずなんだけど、俺には黒魔術の才能しかなかったのだ。

「……なるほどな。じゃあ、しばらくの間レイは俺たちの指示の通りに行動してくれ」

「えっと、それはどうして……?」

 さっき余裕とは言ってたけど、いちいち俺に指示出すなんて面倒だろう。
 俺がその理由を見つけられずにいると、ベルさんが真面目な表情を作った。

「レイはまだ冒険者としては駆け出しだ。そんな状態で自分勝手に行動してると、いざって時に逃げ出せない、みたいな危ない事になるかもしれない。それが理由だな」

 なるほど。
 確かに魔力を使いすぎて、逃げなくちゃいけない時に疲れてるとヤバそうだな。
 でも……、

「じゃあ、指示がない時は何したら良いんですか? ただただ2人のしてる事を見てる訳にもいかないし……」

「いや、今日はそれで良い。レイは基本的に俺たちの動きを見ていてくれ。それで指示が来たら、その指示に従ってくれ」

 いや、え? それはなんだか非効率な気がするんだけど。
 俺が気になって理由を聞こうと口を開くと、ベルさんが先に口を開いた。

「こればっかりは一回戦闘しないと、俺が説明しても納得いかないと思うからな。これから街の外出るから、その時説明する」

「あっ、はい。わかりました」

 これで話は終わりだ、とでも言うようにベルさんとニーナさんが外に出る準備を始める。
 立ち上がったベルさんは、にこやかに笑って言う。

「よし、それじゃあ会計はニーナがしてくれるから。俺たちは先に外に出るぞ」

「は? わたし昨日夕食奢ったわよね? 今度はあんたが奢りなさいよ」

 と、ニーナさんが立ち上がりながら言う。
 って、え? ニーナさん話した感じだと温厚で良い人そうだったけど……。
 
「え? いや、俺ちょっと飲み過ぎて金が……」

「はぁ? 一昨日10万GIL支給されたばっかでしょ。払ってよ」

 そう言って、ニーナさんは額に青筋を立てる。

「いや、待ってくれ。普段ニーナを守ってるのは誰だ? そう、俺だ。じゃあさ、守ってあげてるわけだし、その分――」

「『流動は輪廻の円環へと収束せし・漆黒は常闇へ・真紅はーー」

 ニーナさんが唱え出したのは、聞いた事もない魔術の詠唱。
 それを耳にしたベルさんは、目を見開いて慌て始めた。

「ちょっ、待てって。それ、こんなとこで使って良い魔術じゃないから‼︎ わかった! 払うから! 詠唱を止めろ‼︎」

 そう言って渋々会計をしに行くベルさん。
 ニーナさんはそれを見届けてから、俺のことを見て微笑んだ。

「会計はベルがしてくれるみたいだし、私たちは先に外に行ってよっか」

 ……とりあえず、ニーナさんは怖いってのは分かった。
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