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結果的にさらに煩くなり
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アザゼル様の身体、とても熱い。眠っているせいなのか、それとも自分の身体が熱いのか。この人の距離感はおかしいと言っても、ここまで密着するのは初めてだ。
「んん…」
彼の吐息が、滑らかな黒髪が、私の耳や顔にかかる。びくりと私の身体が反応し、アザゼル様が一層強くぎゅうっと抱き締めてくる。
こんなの、無理だ。とてもじゃないけれど、耐えられない。
「あっ、アザゼル様!離して、離してください…っ!」
「んー」
必死にじたばたと体を捩らせても、彼の瞼は開く気配を見せない。んん、と息を吐く度にそれが私の耳にかかるから、余計に顔が熱くなる。
「無理です!アザゼル様、こんなの無理です…っ!」
両腕でがっちりと抱き締められていて、体が動かせない。というよりも、私が下手に動くと余計にあちこちが擦れて逆効果な気がする。
(もう、こうなったら…っ)
どきどきと脈打つ心臓の鼓動と羞恥心を必死に抑え、私は彼の耳に唇を寄せながら肺いっぱいに息を吸い込んだ。
「アザゼル様、いい加減に起きてください!!」
自分でも喉がびりびりと痺れる程、腹の底から声を張り上げる。その瞬間、彼の身体が大きく反応を示した。
「なんだうるせぇっ…!!」
輝く金の瞳をこれでもかと見開き、何が起きたのか分かっていない様子できょろきょろと顔を左右に振っている。驚きが強いのか、彼の腕には更に力が込められた。
「はな、離して、早く離してくださいっ!」
「は…?イザベラ…?」
そこでようやく、アザゼル様は私がいることに気が付いたらしい。下を見下ろし、ぽかんと口を開けている。私は彼を見上げ、思い切り睨めつけた。
「う、うわぁぁっ!」
ズササッ!ドンッ!
まるで化け物にでも遭遇したような表情で瞬時に私から手を離したかと思うと、彼は勢いよくベッドから落下してしまった。
身体まで真っ赤に上気させ、ふるふると震える指で私を指差す。
「なな、なんでお前が俺の部屋に…っ」
「あっ、アザゼル様が仰ったのではないですか!朝は起こしてほしいと!」
「だ、だからってこんな起こし方はさすがに」
「貴方のせいでしょう!!」
涙目になりながら思いきり頬を膨らませた。私はこんなにも恥ずかしい思いをしたというのに、そんな言い方をされるなんて…!
「い、イザベラ…その…」
「もう知りませんっ!」
ぷいっとそっぽを向いて立ち上がると、私はそのままドアまで駆け出した。
「…結局煩いんですね、貴方達は」
「私のせいではありません!」
冷ややかな視線を浮かべるイアンに、私は初めて言い返したかもしれない。だってこんなのはあんまりだ。
「イザベラ、悪かったって!謝るから機嫌直せよ、な?」
「嫌です!もう知りません!」
私の隣で顔を覗き込んでくるアザゼル様を、私は見もしない。身体の熱は未だに治らず、彼が側に寄るだけでつい身構えてしまう。
「明日からは起こしませんから!」
「嘘だろ!?」
「本当です!」
次またあんなことになったら、私の身体は爆発するか溶けてなくなってしまうはずだ。
「イアンと二人になんのか?そんなん危ねぇだろ!?」
「貴方の方がよっぽど危ないわよ!」
お互い指を突きつけ合いながらぎゃいぎゃいと言い争いを繰り返す私達の隣では、ついにイアンが頭を抱えていたのだった。
「んん…」
彼の吐息が、滑らかな黒髪が、私の耳や顔にかかる。びくりと私の身体が反応し、アザゼル様が一層強くぎゅうっと抱き締めてくる。
こんなの、無理だ。とてもじゃないけれど、耐えられない。
「あっ、アザゼル様!離して、離してください…っ!」
「んー」
必死にじたばたと体を捩らせても、彼の瞼は開く気配を見せない。んん、と息を吐く度にそれが私の耳にかかるから、余計に顔が熱くなる。
「無理です!アザゼル様、こんなの無理です…っ!」
両腕でがっちりと抱き締められていて、体が動かせない。というよりも、私が下手に動くと余計にあちこちが擦れて逆効果な気がする。
(もう、こうなったら…っ)
どきどきと脈打つ心臓の鼓動と羞恥心を必死に抑え、私は彼の耳に唇を寄せながら肺いっぱいに息を吸い込んだ。
「アザゼル様、いい加減に起きてください!!」
自分でも喉がびりびりと痺れる程、腹の底から声を張り上げる。その瞬間、彼の身体が大きく反応を示した。
「なんだうるせぇっ…!!」
輝く金の瞳をこれでもかと見開き、何が起きたのか分かっていない様子できょろきょろと顔を左右に振っている。驚きが強いのか、彼の腕には更に力が込められた。
「はな、離して、早く離してくださいっ!」
「は…?イザベラ…?」
そこでようやく、アザゼル様は私がいることに気が付いたらしい。下を見下ろし、ぽかんと口を開けている。私は彼を見上げ、思い切り睨めつけた。
「う、うわぁぁっ!」
ズササッ!ドンッ!
まるで化け物にでも遭遇したような表情で瞬時に私から手を離したかと思うと、彼は勢いよくベッドから落下してしまった。
身体まで真っ赤に上気させ、ふるふると震える指で私を指差す。
「なな、なんでお前が俺の部屋に…っ」
「あっ、アザゼル様が仰ったのではないですか!朝は起こしてほしいと!」
「だ、だからってこんな起こし方はさすがに」
「貴方のせいでしょう!!」
涙目になりながら思いきり頬を膨らませた。私はこんなにも恥ずかしい思いをしたというのに、そんな言い方をされるなんて…!
「い、イザベラ…その…」
「もう知りませんっ!」
ぷいっとそっぽを向いて立ち上がると、私はそのままドアまで駆け出した。
「…結局煩いんですね、貴方達は」
「私のせいではありません!」
冷ややかな視線を浮かべるイアンに、私は初めて言い返したかもしれない。だってこんなのはあんまりだ。
「イザベラ、悪かったって!謝るから機嫌直せよ、な?」
「嫌です!もう知りません!」
私の隣で顔を覗き込んでくるアザゼル様を、私は見もしない。身体の熱は未だに治らず、彼が側に寄るだけでつい身構えてしまう。
「明日からは起こしませんから!」
「嘘だろ!?」
「本当です!」
次またあんなことになったら、私の身体は爆発するか溶けてなくなってしまうはずだ。
「イアンと二人になんのか?そんなん危ねぇだろ!?」
「貴方の方がよっぽど危ないわよ!」
お互い指を突きつけ合いながらぎゃいぎゃいと言い争いを繰り返す私達の隣では、ついにイアンが頭を抱えていたのだった。
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