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聖女としての次なる目標
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ーー
感謝祭も無事に終わり、また日常が繰り返される。アレイスター様のお屋敷にて、私は聖女の力についての勉強と訓練に励んでいた。
宮廷魔術師であるアレイスター様はもちろんのこと、ロココさんもその助手として時折お手伝いをしているらしく、二人ともお屋敷を不在にすることも多い。
そしてイアンも、ロココさんから首根っこを掴まれて一緒に来いと引っ張られているのを、割と頻繁に目にする。嫌そうに身を捩るイアンの元にアレイスター様が近付き、穏やかな表情のまま何かを耳打ちする。
すると彼は途端に大人しくなり、アレイスター様とロココさんについて出掛るという流れ。
(いつも思うけど、あれは何を言っているのかしら)
あまり詮索するのも良くないので、本人に確認したりはしない。
アザゼル様といえば彼もまたアレイスター様に誘われているのだけれど、絶対に首を縦に振らない。それから、私を連れて行こうとすることにも強い難色を示す。
それが私を慮ってのことだと分かっているから、私もアレイスター様に謝罪をして彼の仕事に同行するようなことはしない。以前のような緊急事態であれば、きっとそう説明してくれるはずだろうから。
代わりと言うと語弊があるかもしれないけれど、私はアレイスター様を通し国王陛下からある許可を頂いた。
それは、街で聖女の力を使うこと。
許可など必要ないとアレイスター様はおっしゃっていたけれど、余計な火種を産まない為にもそうする方がいいと判断してのこと。
私は旅人としてこの国に身を寄せさせて頂いているのだし、聞くところでは聖女は稀有な存在で、どの国でも喉から手が出る程に欲しているのだと。
それでも国王陛下は、私に無理強いすることはなしない。だから私も、出来るだけ勝手な行動は慎みたいのだ。
午前中はレイリオと(もちろんアザゼル様も)山や川辺で遊び、午後は街を散策する。
そして何日かに一度のペースでこの辺りで一番大きな教会や修道院を訪ね、怪我や重い病気で苦しんでいる人がいれば、聖女の力を行使する。
もちろん力を使わない日もあって、子供達と遊んだり井戸端のお話しに混ぜていただいたりして、楽しく過ごす。
パレードで存在を認知されている為に、私はどこに行っても崇められてしまい、最初はとても困った。以前のように地味で目立たない格好をしているつもりでも、力を使えば嫌でも露見してしまう。
アザゼル様にはくれぐれも凄んだり睨んだりしないようにお願いをして、街の人達に「どうか普通に接してほしい」と何度も説得した。
その甲斐もあってか、今では街に繰り出しても手を合わせられることはなくなり、気軽に名前を呼んでもらえるようにもなった。
(とても楽しい)
たくさんの笑顔に囲まれる毎日は本当に幸せで、それが夢ではないことを時折無意識に確認してしまうほどだ。自身の頬をつねる度に、アザゼル様から叱られてしまうのだけれど。
「そもそも魔術と聖女の力は、性質が全く異なるものだからね。魔力には際限があるが、聖女の力にはおそらくそれがない。存在が稀有な上に、スティラトールのように隠そうとする国も昔は多かったようだから、まだ解明されていないことも多いけれど」
アレイスター様は時間があれば、私に聖女のなんたるかを教えてくださった。
それは私が、彼に頼んだからだ。
ーー以前のような爆発的な力を、意識的に支えるようになりたい
と。
それは大神官様と対峙した時のこと。アザゼル様を守りたい一心、無我夢中で繰り出した一撃。
治癒しか出来ないと思い込んでいた私が、戦う唯一の術。
(…大切な人を、私が守りたい)
この先も使わなくて済むのなら、もちろんそれが一番だと思うけれど。
感謝祭も無事に終わり、また日常が繰り返される。アレイスター様のお屋敷にて、私は聖女の力についての勉強と訓練に励んでいた。
宮廷魔術師であるアレイスター様はもちろんのこと、ロココさんもその助手として時折お手伝いをしているらしく、二人ともお屋敷を不在にすることも多い。
そしてイアンも、ロココさんから首根っこを掴まれて一緒に来いと引っ張られているのを、割と頻繁に目にする。嫌そうに身を捩るイアンの元にアレイスター様が近付き、穏やかな表情のまま何かを耳打ちする。
すると彼は途端に大人しくなり、アレイスター様とロココさんについて出掛るという流れ。
(いつも思うけど、あれは何を言っているのかしら)
あまり詮索するのも良くないので、本人に確認したりはしない。
アザゼル様といえば彼もまたアレイスター様に誘われているのだけれど、絶対に首を縦に振らない。それから、私を連れて行こうとすることにも強い難色を示す。
それが私を慮ってのことだと分かっているから、私もアレイスター様に謝罪をして彼の仕事に同行するようなことはしない。以前のような緊急事態であれば、きっとそう説明してくれるはずだろうから。
代わりと言うと語弊があるかもしれないけれど、私はアレイスター様を通し国王陛下からある許可を頂いた。
それは、街で聖女の力を使うこと。
許可など必要ないとアレイスター様はおっしゃっていたけれど、余計な火種を産まない為にもそうする方がいいと判断してのこと。
私は旅人としてこの国に身を寄せさせて頂いているのだし、聞くところでは聖女は稀有な存在で、どの国でも喉から手が出る程に欲しているのだと。
それでも国王陛下は、私に無理強いすることはなしない。だから私も、出来るだけ勝手な行動は慎みたいのだ。
午前中はレイリオと(もちろんアザゼル様も)山や川辺で遊び、午後は街を散策する。
そして何日かに一度のペースでこの辺りで一番大きな教会や修道院を訪ね、怪我や重い病気で苦しんでいる人がいれば、聖女の力を行使する。
もちろん力を使わない日もあって、子供達と遊んだり井戸端のお話しに混ぜていただいたりして、楽しく過ごす。
パレードで存在を認知されている為に、私はどこに行っても崇められてしまい、最初はとても困った。以前のように地味で目立たない格好をしているつもりでも、力を使えば嫌でも露見してしまう。
アザゼル様にはくれぐれも凄んだり睨んだりしないようにお願いをして、街の人達に「どうか普通に接してほしい」と何度も説得した。
その甲斐もあってか、今では街に繰り出しても手を合わせられることはなくなり、気軽に名前を呼んでもらえるようにもなった。
(とても楽しい)
たくさんの笑顔に囲まれる毎日は本当に幸せで、それが夢ではないことを時折無意識に確認してしまうほどだ。自身の頬をつねる度に、アザゼル様から叱られてしまうのだけれど。
「そもそも魔術と聖女の力は、性質が全く異なるものだからね。魔力には際限があるが、聖女の力にはおそらくそれがない。存在が稀有な上に、スティラトールのように隠そうとする国も昔は多かったようだから、まだ解明されていないことも多いけれど」
アレイスター様は時間があれば、私に聖女のなんたるかを教えてくださった。
それは私が、彼に頼んだからだ。
ーー以前のような爆発的な力を、意識的に支えるようになりたい
と。
それは大神官様と対峙した時のこと。アザゼル様を守りたい一心、無我夢中で繰り出した一撃。
治癒しか出来ないと思い込んでいた私が、戦う唯一の術。
(…大切な人を、私が守りたい)
この先も使わなくて済むのなら、もちろんそれが一番だと思うけれど。
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