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第二章 アルフェーヴェ王国の咎人
六話 休息―それはまさかの人の部屋―
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『・・・・・・私の部屋はダメ。これからは明か太一の部屋にしましょう』
5年ほど前、一緒に遊ぶ場所を決めようとしたとき、姫咲が言った言葉だ。
『えっ、なんで?』
『なんでって、そう言われると困るんだけど』
『なんじゃ?ワシらの前で隠し事か?』
『そういうのじゃなくて・・・・・・』
うまく答えられなくて、姫咲は困った様子だった。ああも冷静じゃない姫咲は珍しいからよく覚えている。
『とにかく!私の部屋はダメ!真帆の部屋も!室内で遊ぶなら二人の部屋か村長の家で――』
『じゃあ村長の家に特攻だ!』
『特攻じゃ!』
俺はあのときまだお子様だったから気にしてなかったけど、今はなんとなく分かる。異性を自室に上げるというのは、なんだか照れくさい行為なのだと。
「あの、我々も一緒じゃなくてよろしいのですか?」
廊下を歩くほど5分、二葉の部屋の扉の前に来たとき、俺を連れてきた男たちが切り出した。
「はい、皆さまにまでお部屋を見られるのはお恥ずかしいですし」
「しかし!この男と二人で何かあれば一夜様に見せる顔が――」
「大丈夫です。私に危害が加わる可能性が少しでもあるなら、お兄様はあの場で私を置いていくことはないですから」
兄を信頼している一言だった。そして、兄が一緒にしても大丈夫と感じた俺への信頼。
危害を加えるつもりはないが、この笑顔を曇らせるわけにはいかないと思った。
「・・・・・・そういうことでしたら。くれぐれもお気をつけください」
男たちは渋々納得したようだった。何度もこちらを気にしながら、元来た道へと帰って行く。
「えーと、それでは、ど、どうぞ」
二葉は声を上ずらせながら自室の扉を開ける。俺はピョンピョン跳ねながら二葉について行く。
「・・・・・・部屋?」
最初の感想はそれだった。とてつもなく大きな空間、天井はそこまで高くないが広さがやばい。ハスト村の一軒より広いかもしれない。
「適当におかけになってください。今お飲み物をお持ちしますね」
二葉は茶の準備をしてくれているようだった。なんというか、本当に気が利く子だな。
俺は座るというより寝転がるために、さきほどからでかでかと存在を主張しているベッドに座り、体を後ろに倒した。牢屋からここまで、さすがに疲れてしまっている。特に用が無ければ、このまま眠ってしまいたいほどだ。
「・・・・・・あ、あの、明様?」
ティーセットを持った二葉は、俺を見てなにやら慌てているようだった。
「申し訳ありません、椅子に座っていただくつもりでしたので・・・・・・まさかベッドで寝ていらっしゃるとは」
「ああすまん。さすがに少し疲れてな」
よくよく考えなくても失礼だった。呼んでくれたということは当然用があるからだろうに、その当人を無視して寝るってそりゃ――
「よろしければ仮眠いたしますか?」
いいんですかい!?今俺すごい無礼だなって反省してたのにいいのか・・・・・・!
「そのかわり、目覚めましたら私のお願いを聞いてくださいませんか?」
優しくて綺麗で笑顔が素敵な二葉さん。ついでに気配り上手とか、お姫様ってすごい。
「分かった。悪いけど30分だけここ使わせてもらうぞ?」
「はい、ごゆっくり」
許可が下りると、眠気が一気に襲ってきた。ふかふかなベッドに身を預け、ゆっくりと目を閉じる。
なあ真帆たち。今の俺、どういう状況なんだ?
5年ほど前、一緒に遊ぶ場所を決めようとしたとき、姫咲が言った言葉だ。
『えっ、なんで?』
『なんでって、そう言われると困るんだけど』
『なんじゃ?ワシらの前で隠し事か?』
『そういうのじゃなくて・・・・・・』
うまく答えられなくて、姫咲は困った様子だった。ああも冷静じゃない姫咲は珍しいからよく覚えている。
『とにかく!私の部屋はダメ!真帆の部屋も!室内で遊ぶなら二人の部屋か村長の家で――』
『じゃあ村長の家に特攻だ!』
『特攻じゃ!』
俺はあのときまだお子様だったから気にしてなかったけど、今はなんとなく分かる。異性を自室に上げるというのは、なんだか照れくさい行為なのだと。
「あの、我々も一緒じゃなくてよろしいのですか?」
廊下を歩くほど5分、二葉の部屋の扉の前に来たとき、俺を連れてきた男たちが切り出した。
「はい、皆さまにまでお部屋を見られるのはお恥ずかしいですし」
「しかし!この男と二人で何かあれば一夜様に見せる顔が――」
「大丈夫です。私に危害が加わる可能性が少しでもあるなら、お兄様はあの場で私を置いていくことはないですから」
兄を信頼している一言だった。そして、兄が一緒にしても大丈夫と感じた俺への信頼。
危害を加えるつもりはないが、この笑顔を曇らせるわけにはいかないと思った。
「・・・・・・そういうことでしたら。くれぐれもお気をつけください」
男たちは渋々納得したようだった。何度もこちらを気にしながら、元来た道へと帰って行く。
「えーと、それでは、ど、どうぞ」
二葉は声を上ずらせながら自室の扉を開ける。俺はピョンピョン跳ねながら二葉について行く。
「・・・・・・部屋?」
最初の感想はそれだった。とてつもなく大きな空間、天井はそこまで高くないが広さがやばい。ハスト村の一軒より広いかもしれない。
「適当におかけになってください。今お飲み物をお持ちしますね」
二葉は茶の準備をしてくれているようだった。なんというか、本当に気が利く子だな。
俺は座るというより寝転がるために、さきほどからでかでかと存在を主張しているベッドに座り、体を後ろに倒した。牢屋からここまで、さすがに疲れてしまっている。特に用が無ければ、このまま眠ってしまいたいほどだ。
「・・・・・・あ、あの、明様?」
ティーセットを持った二葉は、俺を見てなにやら慌てているようだった。
「申し訳ありません、椅子に座っていただくつもりでしたので・・・・・・まさかベッドで寝ていらっしゃるとは」
「ああすまん。さすがに少し疲れてな」
よくよく考えなくても失礼だった。呼んでくれたということは当然用があるからだろうに、その当人を無視して寝るってそりゃ――
「よろしければ仮眠いたしますか?」
いいんですかい!?今俺すごい無礼だなって反省してたのにいいのか・・・・・・!
「そのかわり、目覚めましたら私のお願いを聞いてくださいませんか?」
優しくて綺麗で笑顔が素敵な二葉さん。ついでに気配り上手とか、お姫様ってすごい。
「分かった。悪いけど30分だけここ使わせてもらうぞ?」
「はい、ごゆっくり」
許可が下りると、眠気が一気に襲ってきた。ふかふかなベッドに身を預け、ゆっくりと目を閉じる。
なあ真帆たち。今の俺、どういう状況なんだ?
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