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第二章 アルフェーヴェ王国の咎人
八話 勘違い―明の大きな失敗―
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「けっこう話したな」
話の区切りが着いたところで、俺は外へと視線を向けた。話し始めたのは夕方近くだったはずだが、バルコニーの方を見るとすっかり暗くなっている。二葉の質問に答えつつ話していたとはいえ、いったいどれだけ時間が経ったのやら。
「そろそろ終わりにするか?」
「えっ、私なら大丈夫です!まだまだお聞きしたいです!」
「そうは言ってもな」
だいたい俺のことは話しきった。四年間のことを考えれば、正直あいつらより二葉の方が俺に詳しい可能性がある。
「というかこんな時間なのに誰も来ないな、俺ここで寝てもいいのか」
牢屋に戻るだろうと思っていただけに、あのフカフカなベッドで眠れるならそれ以上はない。と、思っていたのだが、二葉はゆでだこのように顔を真っ赤にした。
「あ、明様がここでお休みに・・・・・・?」
「さっきも寝かせてもらったしな、その延長みたいなものだろ」
「そ、その、延長と言われましても、私はどうすれば・・・・・・」
「ん?一緒に寝ればいいだろ、こんなに広いベッドなんだし」
「いい一緒!!?」
二葉は両手を頬に当てて何故だか涙目になった。赤いのが手に伝播していてなんだか面白い。
しかしどうしたことか、そんなにおかしいことを言ったつもりはないが。ハスト村出る前にもみんなで雑魚寝したときはあったし、師匠とは普通に横に並んで寝てたしな。そりゃ赤の他人ってなったら違和感はあるけど、相手は自分の過去を一番知っている二葉だ。もう仲間みたいなものじゃないか。
「あっ、もしかして王族は一人で寝なきゃいけないみたいなのがあるってこと?」
「いえ、そんな規則はありませんが・・・・・・」
「じゃあ何がダメなんだ?」
狼狽している二葉が理解できずに聞くと、二葉はモジモジしながらこちらを見つめた。
「あ、あの、私、男性としょ、初夜を過ごすなら、しょ、将来を捧げる方にしたいとずっと思っていまして・・・・・・」
「しょ、将来?」
なんだか急にスケールの大きい話になったな。
「もちろん明様に不満があるとかそういうのではないんです!ですが私、男の人と同じ目線で話すこと自体初めてで、まだ男性経験も少ないうちに相手を決めてしまっていいのかという思いもあるというか・・・・・・」
「そういえば二葉お姫様だったな」
普通に話してるから忘れそうになるけど、目の前の俺と同じくらいの年齢の少女はお姫様。対等な付き合いなんていうのはそもそも不可能だ。
「あれ?だとしたら二葉と同じ目線で話せるやつなんていないんじゃないのか、みんな敬語使うんだろ?」
「・・・・・・そうですね。私は不要だと思っているのですが」
「そうもいかんだろ、体裁だってあるんだ。俺だってあんな乱暴な扱いされなきゃ一夜にだって敬語使ってたさ」
「明様が敬語をお使いになってる姿を想像できませんね」
二葉にクスクス笑われてしまった。そんなに俺には敬語のイメージがないだろうか。
「と、ともかく!お前が嫌がろうが俺はベッドで寝たいんだ!」
あのフカフカが忘れられない。今日を逃したらもう体験できないかもしれないし。
「かといってお前に床で寝ろなんて言えない!だから一緒に寝ろ!嫌かもしれんが覚悟を決めるんだ!」
「――っ!」
再び二葉が噴火する。将来というスケールの話をしていた彼女にとってそう簡単に決定はできないのかもしれない。何を悩んでいるかはよく分からないが。
「・・・・・・明様のように同じ目線で話してくれる方、出てこないでしょうか?」
「それはNOとは言い切れないが難しいんじゃないか?」
「そ、そうですよね・・・・・・明様しか・・・・・・いらっしゃらない・・・・・・」
少し俯きながら、二葉は悩んでいるようだった。ここまできたら後は祈るしかない、二葉が俺と寝てもいいと言ってくれるのを――!
――そして、二葉は少し泣きそうな、それでいて覚悟を決めた表情で言った。
「分かりました!明様、ふつつか者ですがよろしくお願いいたします!」
「おお、分かってくれたか!」
「は、はい。あまりに唐突すぎて実感もわかないのですが、勇者様を支えるのは私の一つの夢でしたので・・・・・・」
「支えるなんて大げさだな」
ただベッドを少しお借りするだけだ、そんなに気合い入れなくてもいいだろうに。
「一夜も看守も誰も来ないし、もう寝るか」
「は、は、はい!そそ、その前に着替えてもよろしいでしょうか!?」
「ああドレスだもんな、どうぞどうぞ」
二葉はカーテンで仕切られた空間へと進んでいく。どうやらあそこで着替えるようだ。
はああ、仮眠とったとはいえ疲れたし、今日はもう寝るか。
二葉には悪いと思いつつ、俺はベッドにダイビングを決めるのだった。
話の区切りが着いたところで、俺は外へと視線を向けた。話し始めたのは夕方近くだったはずだが、バルコニーの方を見るとすっかり暗くなっている。二葉の質問に答えつつ話していたとはいえ、いったいどれだけ時間が経ったのやら。
「そろそろ終わりにするか?」
「えっ、私なら大丈夫です!まだまだお聞きしたいです!」
「そうは言ってもな」
だいたい俺のことは話しきった。四年間のことを考えれば、正直あいつらより二葉の方が俺に詳しい可能性がある。
「というかこんな時間なのに誰も来ないな、俺ここで寝てもいいのか」
牢屋に戻るだろうと思っていただけに、あのフカフカなベッドで眠れるならそれ以上はない。と、思っていたのだが、二葉はゆでだこのように顔を真っ赤にした。
「あ、明様がここでお休みに・・・・・・?」
「さっきも寝かせてもらったしな、その延長みたいなものだろ」
「そ、その、延長と言われましても、私はどうすれば・・・・・・」
「ん?一緒に寝ればいいだろ、こんなに広いベッドなんだし」
「いい一緒!!?」
二葉は両手を頬に当てて何故だか涙目になった。赤いのが手に伝播していてなんだか面白い。
しかしどうしたことか、そんなにおかしいことを言ったつもりはないが。ハスト村出る前にもみんなで雑魚寝したときはあったし、師匠とは普通に横に並んで寝てたしな。そりゃ赤の他人ってなったら違和感はあるけど、相手は自分の過去を一番知っている二葉だ。もう仲間みたいなものじゃないか。
「あっ、もしかして王族は一人で寝なきゃいけないみたいなのがあるってこと?」
「いえ、そんな規則はありませんが・・・・・・」
「じゃあ何がダメなんだ?」
狼狽している二葉が理解できずに聞くと、二葉はモジモジしながらこちらを見つめた。
「あ、あの、私、男性としょ、初夜を過ごすなら、しょ、将来を捧げる方にしたいとずっと思っていまして・・・・・・」
「しょ、将来?」
なんだか急にスケールの大きい話になったな。
「もちろん明様に不満があるとかそういうのではないんです!ですが私、男の人と同じ目線で話すこと自体初めてで、まだ男性経験も少ないうちに相手を決めてしまっていいのかという思いもあるというか・・・・・・」
「そういえば二葉お姫様だったな」
普通に話してるから忘れそうになるけど、目の前の俺と同じくらいの年齢の少女はお姫様。対等な付き合いなんていうのはそもそも不可能だ。
「あれ?だとしたら二葉と同じ目線で話せるやつなんていないんじゃないのか、みんな敬語使うんだろ?」
「・・・・・・そうですね。私は不要だと思っているのですが」
「そうもいかんだろ、体裁だってあるんだ。俺だってあんな乱暴な扱いされなきゃ一夜にだって敬語使ってたさ」
「明様が敬語をお使いになってる姿を想像できませんね」
二葉にクスクス笑われてしまった。そんなに俺には敬語のイメージがないだろうか。
「と、ともかく!お前が嫌がろうが俺はベッドで寝たいんだ!」
あのフカフカが忘れられない。今日を逃したらもう体験できないかもしれないし。
「かといってお前に床で寝ろなんて言えない!だから一緒に寝ろ!嫌かもしれんが覚悟を決めるんだ!」
「――っ!」
再び二葉が噴火する。将来というスケールの話をしていた彼女にとってそう簡単に決定はできないのかもしれない。何を悩んでいるかはよく分からないが。
「・・・・・・明様のように同じ目線で話してくれる方、出てこないでしょうか?」
「それはNOとは言い切れないが難しいんじゃないか?」
「そ、そうですよね・・・・・・明様しか・・・・・・いらっしゃらない・・・・・・」
少し俯きながら、二葉は悩んでいるようだった。ここまできたら後は祈るしかない、二葉が俺と寝てもいいと言ってくれるのを――!
――そして、二葉は少し泣きそうな、それでいて覚悟を決めた表情で言った。
「分かりました!明様、ふつつか者ですがよろしくお願いいたします!」
「おお、分かってくれたか!」
「は、はい。あまりに唐突すぎて実感もわかないのですが、勇者様を支えるのは私の一つの夢でしたので・・・・・・」
「支えるなんて大げさだな」
ただベッドを少しお借りするだけだ、そんなに気合い入れなくてもいいだろうに。
「一夜も看守も誰も来ないし、もう寝るか」
「は、は、はい!そそ、その前に着替えてもよろしいでしょうか!?」
「ああドレスだもんな、どうぞどうぞ」
二葉はカーテンで仕切られた空間へと進んでいく。どうやらあそこで着替えるようだ。
はああ、仮眠とったとはいえ疲れたし、今日はもう寝るか。
二葉には悪いと思いつつ、俺はベッドにダイビングを決めるのだった。
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