天端怪奇伝

湯殿たもと

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天端怪奇伝EX3

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天端怪奇伝EX3


「こんばんはっ!」

小柄な体にぱっちりとした目。なんの変哲もない(と言ったらおかしいか)女の子。黒い翼にちょこんと生えた角。それが普通の女の子ではなく悪魔という事実を証明する。

「何だもう寝るところだよ」

時計は午前一時の十分前。流石に寝ないと明日の授業に支障が出る。ほんのちょっとだけ、拒絶するような反応をとってみる。

「せっかく地獄から休みを取ってきたんだよ」

「週に二回も来てるじゃないか」

「それは最低限保証された権利だよ」

本当はこうして彼女が来てくれるのは嬉しいこと。しかし今は眠い。歯を磨いてもうまさにいま寝るところなのだ。

「いま本当に寝ないといけないんだよ、あした学校だから」

「そっか」

すこししょげたような顔をする。しかし事情は解ってくれたらしい。そして自分と同じ布団を被る。おやすみなさい。・・・・・・。


いろはは静かな寝息をたてている。いろはとは相思相愛の関係にあるのは確かなのだが、実際はただ仲の良い友達にとどまっている、という実感だ。いろはにしたって何か変に戸惑うこともなくこうやってくっついている。中学三年生の年なのだから多少は意識しそうなものだが・・・・・・。でも現にこうやって友達か、親戚か、あるいは兄妹のように寝ているのが何とも思っていない証明になるのかもしれない。

しかしそれだったらいろはは母のところに行くべきであろう。家族で過ごした方が良い。それでもこちらを選ぶというのはそれは嬉しいことかも知れないけど、不思議に思う。

目が冴えてきた。カーテンを開けると月明かりが差し込む。綺麗ななお月様がこちらを覗いてくる。変わらずいろはの寝息が聞こえる。この夜空のしたにはいったいいくらの家族がいるのだろうか。どんな思いをしてくらしているのか。そんなこと考えたってわからない。道ですれ違った車のドライバーそれぞれに人生があっても交わることはないように、ひとの家族の事を知ることなんて無い。

いろはにしたって家族ではないし、明智の家として家族があるはずだ。

ははは、何を考えてるんだろうな。柄でもない。そんなこと考えたってなんにもならない。思った通りに素直に、また同じ布団に入った。寝る!いま寝ないと明日がきついからな。

・・・・・・

・・・

「お父さん」

心地よい眠りの中で、いろはがうっすらそう呟いたような気がした。


おしまい。
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