天端湯源玉

湯殿たもと

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天端湯源玉2

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「ふっふーん!良いこと聞いちゃった!」

八代家のお屋敷。もう日も高く登ったころ、主のさくらがこう叫ぶ。

人吉がどうしたのか聞こうとするけど拒否。私の部屋にはいって鍵をかける。この屋敷のなかでさくらに一番信頼されているのはこの私だと思う。

「永久機関って存在すると思う?」

「・・・・・・人類が利用できるところには無い?」

「そう!じゃあ人類が行ってないところにはあるかもしれないよね?」

「まあそうですね」

「それが、隕石に乗ってやって来たら?」


天端湯源玉2


さくらの目は輝いていた。お金が絡むとこうやって目が輝くのがさくら。

「しかし、それをどこから?」

「お兄ちゃんの電話を盗聴!」

永久機関をさくらは以前から口にすることがあった。永久機関を手に入れたらならば、それを解析して、複製する。それが実現出来れば、世界最大、史上最高のコンツェルンの誕生だと目を輝かせて語っていた。

もしも、これで永久機関が産まれたら・・・・・・これ以上何を求めるつもりなのか、多少気になる。


その頃。泉宮のある公園にて。府屋が手に赤い玉を転がす。

「この玉なかなか暖かいですね」

「どういう原理なんだろう、核かな」

何気なく言葉を発すると府屋は驚く。

「府屋も村上も安心して、これが放射線を測る装置、ガイガーカウンター。針が動かないでしょ、ほら、安心」 

「じゃあ大丈夫だね」

中条先輩がなぜガイガーカウンターを持ってるのか知らないけど、とにかくこの玉のことは心配無いよう。

その先輩が今度はケータイを取り出すとワンセグを見はじめた。私達にも映像を見せてくれる。隕石のニュースだった。隕石が落ちた山をヘリで空撮している。そこには山にあいた大きなクレーター。周りは木がなぎ倒されて、そしてさらにその外側に人が集まっている。地上からの中継に切り替わる。こちらは人の山が映っているだけだけど。

「この玉が隕石の一部だなんて思わないよね、深夜に忍び込んだときは人いなかったけれど、こんなになったら持ち出すのは無理だろうな」

中条先輩は少し嬉しそうな顔で語る。

「しかしこの玉はいったいどんな物質で出来ているんでしょうね・・・・・・」

府屋が小さな声で呟いた。

と、その時姉御が神社にやってくる(まあ待ち合わせしてたから来ることは解ってたけど)。普段学校で仲良くしているという松島さんも一緒。他に近くに見ている人がいないか、確認してから二人に見せる。別に誰のものでもないけど、なんとなく。

「きれい・・・・・・」

「すごい・・・・・・」

姉御は普段はクールで感情もあまり出さないのだけど、たまに素の感情を見せることがある。例えば今日のような日。息をのみ、目を輝かせる。

「これは隕石のところから?」

「はい、昨晩他に人が駆けつけるまえに」

中条が答える。続けて熱を発していることも伝える。

「これが・・・・・・宇宙の神秘」

私は姉御にその玉を手渡す。手から離れるとなんとなく寂しいような、不思議な感じ。

「天の落とし物?星のしずく?」

姉御は宝玉に語りかける。当然返事はないけれど、少しだけ瞬いた気がした。


続きます。

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