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一章
見知らぬお爺さん
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再びS・L・Oの世界へ降り立った僕の前に現れたのは、テカテカの髭面だった。
「っぁ!」
「おいおいそんなにキモがらんでくれ…。」
そりゃこんな髭面目の前にあったらキモがるに決まってるだろ。
お昼を過ぎた時間だからか、噴水には人が溢れている。僕達のようにご飯を食べた組だろう。
「せっかくの休み、気分よく広場に来たと思ったらすぐにキモがられる…。ジジイの運命じゃな…。」
「そっ、そんなに落ち込まないでくれよ…。急に来たからビックリしただけでさ、お爺さんの顔にビックリした訳じゃないから。」
「ホントか?」
「ああ。」
実際は7:3くらいなんだけどね。
「それじゃ僕は仲間を探さなきゃならないので。」
「待つのじゃ!」
ちょうど広場から出ようとした時にお爺さんに呼び止められた。
「こんな事を言ってくれた者はお主が初めてじゃ。老い先短いワシを気遣ってくれるその心、胸に響いた。」
「ワシの技術、お主に伝授したい。」
「え?」
急にどうしたんだ?このお爺さん。
「そうか!OKしてくれるか!いやぁ助かった!後継者をどうしようか悩んでた所なんじゃ。」
「ちょっ、ちょっと待ってください!僕には用事が!」
手を振り払おうとするが、お爺さんの割に力がめちゃくちゃ強い。これ、俗に言う強制イベントってやつなのか…?
「お主には素質を感じる。時間は取らせんよ。」
お爺さんに連れられて(強制)やってきた場所はいわゆる路地裏だった。
「お爺さん、こんな所で何を…。」
「まあ見とれ。」
そう言うとお爺さんはマンホールを開け、中に入った。
「マンホールなんかに入ってどうするんですか?」
「こういう事をじゃよ。」
後ろを振り向くとマンホールに入ったはずのお爺さんがいた。
「え?」
今、何が起きた?
急いでマンホールを覗き込む。
「ふぉっふぉっ。そこには何も無いぞ。何故ならワシはその中に入ってないのじゃからな。」
入ってない!?でも僕は今、お爺さんが入るのを…まさか。
「これがお爺さんの言う技術ですか。」
「どうじゃ?欲しくなったじゃろう?」
欲しい。心の底から欲しい。こんなイカした技術ゲームでしか出来ないからな。
「そこまで言うなら仕方ないのう。教えてやろう。」
「え?」
口には出していないはずだ。これも技術なのか?
「どうじゃかな。さ、こっちに来い。」
街で偶然出会った見知らぬお爺さんに未知の技術を教えてもらおうとしている。
お爺さんは歩きながら僕に語る。
「この技術の名は『空間接続(穴)』じゃ。スキル名通り穴と穴を繋ぐことが出来る。」
「これはワシが独自に開発したもの。初めは簡単なものじゃった。せいぜいトイレへ歩く手間が省けるくらいじゃ。」
「この技術は使えば使うほどその力を強めていった。しかし、まだ発展途上じゃ。お主ならこの力、色々な形に進化させられるじゃろう。」
しばらくするとある家の前に案内された。
「入れ。」
ドアを開けられ、言われるがままに入ると…
奇妙な感覚。さっきまで前に建っていた家の中とは思えない。
「これで分かったかの?この技術の感覚が。」
これが空間を移動した感覚…やはり移動してたのか。
「使い方は念じればいい。入る穴から出る穴へ物が移動する事を。そうすればこのスキルは発動されおる。」
「しっかりとスキルを手に入れ、育てるんじゃぞ。ワシはここを出ていくから自力で帰るんじゃな。」
念じれば発動するのか。
…ん?今なんて言った?自力で帰れ?
「おい!待て!おい!」
呼びかけにも反応せず、お爺さんは姿を消した。やられた。
「どうしろってんだよ…。」
周りにあるのはフラフープ2個とお手玉が幾つか。
特訓しろと言わんばかりのシロモノだ。
「とりあえず念じてみるか。」
フラフープ2つを壁に立て掛け、そこにお手玉を投げ入れる。
繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ
お手玉が壁に当たる。失敗だ。
繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ
失敗。
繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ
失敗。
繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ
失敗。
何度やっても成功しない。
あの奇妙な感覚…あれを意識してやってみよう。
繋がれ
そう念じた瞬間、あの奇妙な感覚が襲ってきた。
しかし、お手玉は壁に当たる。
イケる。そう確信できた。何かを掴んだ。
【スキル・空間接続(穴)を獲得しました】
繋がれ
簡潔に、1度だけ念じる。あの感覚に襲われながらもお手玉の行方を見守る。
お手玉はフラフープの穴を通り抜ける瞬間、消えた。否、移動した。
成功したのだ。
「おっしゃ!」
これも称号のおかげと考えると称号には頭が上がらないな。スキルLv.の件は許してないけどな。
早速自分が通れるか確認する。
興奮して、頭が壁に激突したのは言うまでもない。
こうして、空間接続(穴)を手に入れた俺は、再びアインスへと戻った。
「っぁ!」
「おいおいそんなにキモがらんでくれ…。」
そりゃこんな髭面目の前にあったらキモがるに決まってるだろ。
お昼を過ぎた時間だからか、噴水には人が溢れている。僕達のようにご飯を食べた組だろう。
「せっかくの休み、気分よく広場に来たと思ったらすぐにキモがられる…。ジジイの運命じゃな…。」
「そっ、そんなに落ち込まないでくれよ…。急に来たからビックリしただけでさ、お爺さんの顔にビックリした訳じゃないから。」
「ホントか?」
「ああ。」
実際は7:3くらいなんだけどね。
「それじゃ僕は仲間を探さなきゃならないので。」
「待つのじゃ!」
ちょうど広場から出ようとした時にお爺さんに呼び止められた。
「こんな事を言ってくれた者はお主が初めてじゃ。老い先短いワシを気遣ってくれるその心、胸に響いた。」
「ワシの技術、お主に伝授したい。」
「え?」
急にどうしたんだ?このお爺さん。
「そうか!OKしてくれるか!いやぁ助かった!後継者をどうしようか悩んでた所なんじゃ。」
「ちょっ、ちょっと待ってください!僕には用事が!」
手を振り払おうとするが、お爺さんの割に力がめちゃくちゃ強い。これ、俗に言う強制イベントってやつなのか…?
「お主には素質を感じる。時間は取らせんよ。」
お爺さんに連れられて(強制)やってきた場所はいわゆる路地裏だった。
「お爺さん、こんな所で何を…。」
「まあ見とれ。」
そう言うとお爺さんはマンホールを開け、中に入った。
「マンホールなんかに入ってどうするんですか?」
「こういう事をじゃよ。」
後ろを振り向くとマンホールに入ったはずのお爺さんがいた。
「え?」
今、何が起きた?
急いでマンホールを覗き込む。
「ふぉっふぉっ。そこには何も無いぞ。何故ならワシはその中に入ってないのじゃからな。」
入ってない!?でも僕は今、お爺さんが入るのを…まさか。
「これがお爺さんの言う技術ですか。」
「どうじゃ?欲しくなったじゃろう?」
欲しい。心の底から欲しい。こんなイカした技術ゲームでしか出来ないからな。
「そこまで言うなら仕方ないのう。教えてやろう。」
「え?」
口には出していないはずだ。これも技術なのか?
「どうじゃかな。さ、こっちに来い。」
街で偶然出会った見知らぬお爺さんに未知の技術を教えてもらおうとしている。
お爺さんは歩きながら僕に語る。
「この技術の名は『空間接続(穴)』じゃ。スキル名通り穴と穴を繋ぐことが出来る。」
「これはワシが独自に開発したもの。初めは簡単なものじゃった。せいぜいトイレへ歩く手間が省けるくらいじゃ。」
「この技術は使えば使うほどその力を強めていった。しかし、まだ発展途上じゃ。お主ならこの力、色々な形に進化させられるじゃろう。」
しばらくするとある家の前に案内された。
「入れ。」
ドアを開けられ、言われるがままに入ると…
奇妙な感覚。さっきまで前に建っていた家の中とは思えない。
「これで分かったかの?この技術の感覚が。」
これが空間を移動した感覚…やはり移動してたのか。
「使い方は念じればいい。入る穴から出る穴へ物が移動する事を。そうすればこのスキルは発動されおる。」
「しっかりとスキルを手に入れ、育てるんじゃぞ。ワシはここを出ていくから自力で帰るんじゃな。」
念じれば発動するのか。
…ん?今なんて言った?自力で帰れ?
「おい!待て!おい!」
呼びかけにも反応せず、お爺さんは姿を消した。やられた。
「どうしろってんだよ…。」
周りにあるのはフラフープ2個とお手玉が幾つか。
特訓しろと言わんばかりのシロモノだ。
「とりあえず念じてみるか。」
フラフープ2つを壁に立て掛け、そこにお手玉を投げ入れる。
繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ
お手玉が壁に当たる。失敗だ。
繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ
失敗。
繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ
失敗。
繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ
失敗。
何度やっても成功しない。
あの奇妙な感覚…あれを意識してやってみよう。
繋がれ
そう念じた瞬間、あの奇妙な感覚が襲ってきた。
しかし、お手玉は壁に当たる。
イケる。そう確信できた。何かを掴んだ。
【スキル・空間接続(穴)を獲得しました】
繋がれ
簡潔に、1度だけ念じる。あの感覚に襲われながらもお手玉の行方を見守る。
お手玉はフラフープの穴を通り抜ける瞬間、消えた。否、移動した。
成功したのだ。
「おっしゃ!」
これも称号のおかげと考えると称号には頭が上がらないな。スキルLv.の件は許してないけどな。
早速自分が通れるか確認する。
興奮して、頭が壁に激突したのは言うまでもない。
こうして、空間接続(穴)を手に入れた俺は、再びアインスへと戻った。
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