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5章
指輪
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1.イザベルから戦争の話を訊いたあと裕次郎は一人町に出た。すでに日は暮れていたが、どうしても今日終わらせておかなければいけない用事を思い出したからだ。
そう、それは『右手の封印が解けたことを誤魔化さなければいけない』だ。
今の裕次郎は封印が解けたせいで指輪がはまっていない。このままではマリアやヤコにばれてしまうのも時間の問題だろう。
ならばどうするか。簡単な話だ。偽物の指輪をつけて誤魔化せばいい。裕次郎は右手を見つめながら町を歩いた。
2.裕次郎は指輪を買うため、町を歩き回った。しかし、もうすでに店が閉まっていたり売っていなかったりとなかなか目当ての指輪が見当たらない。
そしてぐるぐると歩き回るうち、裕次郎は道に迷ってしまった。
「・・・・・・ここどこだよ・・・指輪買いにきただけなのに・・・」
裕次郎はついに座り込んでしまった。
・・・こんなことならさっちゃんかベルでも連れてくれば良かった。
そんなことを考えていると突然うしろから肩を叩かれた。びっくりした裕次郎は慌てて振り返る。
そこには白いマントを来た・・・いや、被った何かが立っていた。
頭からすっぽりと白い布を被っていて、表情も見えなければ性別もわからない。
「えっ? なんですか? なにかようですか?」
裕次郎は戸惑いながらもそう尋ねた。
白マントはごそごそと体を動かす。と、マントの隙間から二本の腕をつきだした。その左手には金色に光る指輪が、右手には銀色に輝く指輪が乗せられていた。
その白マントは両手をつきだしたまま詰め寄ってきた。
「裕・・・貴方の落とした指輪はこの金の指輪かニャ? それとも銀の指輪かニャ?」
白マントはそう言いながらさらに近寄ってくる。
気がつけば、手を伸ばせば届く距離に白マントは立っていた。
「いや、俺指輪なんか落としていませんよ?」
裕次郎は困惑しながらもそう答えた。
指輪は欲しいけど、前に封印でつけられた指輪とは見た目が違うし、この白マント怪しいし、早く逃げよう。
裕次郎は急いでその場を離れようとした。が、突然がっしりと手を握られ無理矢理右手に銀色の指輪をはめられた。
するとその白マントはいきなり笑いだした。
「ニャハハ! ひっかかったニャ! 裕次郎の封印が解けたことはすぐにわかったのニャ! ヤコちゃんを甘く見ないでほしいニャ!」
そう言いながら白マントを脱ぎ捨てた奴の頭には、見慣れた猫耳がぴんと生えていた。
「なんで!? なんでまた封印したの! こっちは右目なくなったんだよ!」
裕次郎は自分の右目を指差しながら叫んだ。その様子にうろたえたのか、ヤコが後ろに下がった。
「ち、ちょっと落ち着くニャ! マリアからの伝言があるから先に読むニャ!」
「なんなの! 伝言て!」
「えっと・・・・・・」
ヤコは地面に落ちた白マントから紙を一枚取りだすと、裕次郎に手渡した。その紙には、マリアからの伝言が書いてあった。
『裕次郎さんへ。
まさか右手の封印が解けるとは思っていませんでした。怪我をさせてしまってすみません。封印が解けた理由はわかりませんが、次の封印は安全なはずです。詳しくはヤコから説明を受けてください。
マリアより』
「・・・・・・」
裕次郎は読み終わると無言で紙をヤコに返した。
内容が軽すぎる。そう思っていた。
自分の封印で他人が死にかけたら、もっとこう、『本当にごめんなさい』とか『取り返しがつかないことをしてしまいました』とか言うはずじゃないかな普通はさぁ。
そうか。
裕次郎は当たり前の事実に気がついた。
そうだ。施設を破壊し、バイオン校長を怯えさせていた激ヤバなイザベル。その母親がマリアなのだ。異常じゃないほうが異常だ。
「・・・それで詳しい説明をしてくれるの?」
裕次郎は全てを諦め、ヤコにそう訊いた。ヤコは金色の指輪を見せながら答えた。
「この封印は前のとはちょっと違うニャ! この金色の指輪をした奴が裕次郎の封印を自由に解放できる仕組みニャ! 戦争が始まるみたいニャし、裕次郎の邪力も必要になるはずニャ! そしてこの指輪は・・・」
ヤコはそう言いながら指輪を自分の指にはめようとした。その瞬間、裕次郎は賭けに出た。
「あっ! あんなところにネズミがいる!」
裕次郎は指差しながらそう叫んだ。予想通りにヤコは手を止め、振り向く。その隙を狙って素早く指輪を奪い取った。
「ニャッ! 返すニャ!」
そう言いながら飛びかかってくるが、すでに金の指輪は裕次郎の指にはまっていた。
右薬指に銀の指輪が、右中指に金の指輪が輝いていた。
「ざまーみろ! 二回も封印されてたまるかアホボケカス!」
裕次郎は早速解印しようとするが、やり方がわからない。仕方なくヤコに訊くことにした。
「それで、封印はどうやって解くの?」
そう訊くが、ヤコはそっぽを向いたまま答えない。裕次郎はヤコの肩を掴み、揺さぶった。
「ちょっと! 早く解き方教えてよ!」
「嫌ニャ! ヤコちゃんの指輪奪ったくせに! 絶対絶対教えないニャ! ばーか!」
裕次郎とヤコはお互いの肩を掴み合い、揺さぶった。
続く。
そう、それは『右手の封印が解けたことを誤魔化さなければいけない』だ。
今の裕次郎は封印が解けたせいで指輪がはまっていない。このままではマリアやヤコにばれてしまうのも時間の問題だろう。
ならばどうするか。簡単な話だ。偽物の指輪をつけて誤魔化せばいい。裕次郎は右手を見つめながら町を歩いた。
2.裕次郎は指輪を買うため、町を歩き回った。しかし、もうすでに店が閉まっていたり売っていなかったりとなかなか目当ての指輪が見当たらない。
そしてぐるぐると歩き回るうち、裕次郎は道に迷ってしまった。
「・・・・・・ここどこだよ・・・指輪買いにきただけなのに・・・」
裕次郎はついに座り込んでしまった。
・・・こんなことならさっちゃんかベルでも連れてくれば良かった。
そんなことを考えていると突然うしろから肩を叩かれた。びっくりした裕次郎は慌てて振り返る。
そこには白いマントを来た・・・いや、被った何かが立っていた。
頭からすっぽりと白い布を被っていて、表情も見えなければ性別もわからない。
「えっ? なんですか? なにかようですか?」
裕次郎は戸惑いながらもそう尋ねた。
白マントはごそごそと体を動かす。と、マントの隙間から二本の腕をつきだした。その左手には金色に光る指輪が、右手には銀色に輝く指輪が乗せられていた。
その白マントは両手をつきだしたまま詰め寄ってきた。
「裕・・・貴方の落とした指輪はこの金の指輪かニャ? それとも銀の指輪かニャ?」
白マントはそう言いながらさらに近寄ってくる。
気がつけば、手を伸ばせば届く距離に白マントは立っていた。
「いや、俺指輪なんか落としていませんよ?」
裕次郎は困惑しながらもそう答えた。
指輪は欲しいけど、前に封印でつけられた指輪とは見た目が違うし、この白マント怪しいし、早く逃げよう。
裕次郎は急いでその場を離れようとした。が、突然がっしりと手を握られ無理矢理右手に銀色の指輪をはめられた。
するとその白マントはいきなり笑いだした。
「ニャハハ! ひっかかったニャ! 裕次郎の封印が解けたことはすぐにわかったのニャ! ヤコちゃんを甘く見ないでほしいニャ!」
そう言いながら白マントを脱ぎ捨てた奴の頭には、見慣れた猫耳がぴんと生えていた。
「なんで!? なんでまた封印したの! こっちは右目なくなったんだよ!」
裕次郎は自分の右目を指差しながら叫んだ。その様子にうろたえたのか、ヤコが後ろに下がった。
「ち、ちょっと落ち着くニャ! マリアからの伝言があるから先に読むニャ!」
「なんなの! 伝言て!」
「えっと・・・・・・」
ヤコは地面に落ちた白マントから紙を一枚取りだすと、裕次郎に手渡した。その紙には、マリアからの伝言が書いてあった。
『裕次郎さんへ。
まさか右手の封印が解けるとは思っていませんでした。怪我をさせてしまってすみません。封印が解けた理由はわかりませんが、次の封印は安全なはずです。詳しくはヤコから説明を受けてください。
マリアより』
「・・・・・・」
裕次郎は読み終わると無言で紙をヤコに返した。
内容が軽すぎる。そう思っていた。
自分の封印で他人が死にかけたら、もっとこう、『本当にごめんなさい』とか『取り返しがつかないことをしてしまいました』とか言うはずじゃないかな普通はさぁ。
そうか。
裕次郎は当たり前の事実に気がついた。
そうだ。施設を破壊し、バイオン校長を怯えさせていた激ヤバなイザベル。その母親がマリアなのだ。異常じゃないほうが異常だ。
「・・・それで詳しい説明をしてくれるの?」
裕次郎は全てを諦め、ヤコにそう訊いた。ヤコは金色の指輪を見せながら答えた。
「この封印は前のとはちょっと違うニャ! この金色の指輪をした奴が裕次郎の封印を自由に解放できる仕組みニャ! 戦争が始まるみたいニャし、裕次郎の邪力も必要になるはずニャ! そしてこの指輪は・・・」
ヤコはそう言いながら指輪を自分の指にはめようとした。その瞬間、裕次郎は賭けに出た。
「あっ! あんなところにネズミがいる!」
裕次郎は指差しながらそう叫んだ。予想通りにヤコは手を止め、振り向く。その隙を狙って素早く指輪を奪い取った。
「ニャッ! 返すニャ!」
そう言いながら飛びかかってくるが、すでに金の指輪は裕次郎の指にはまっていた。
右薬指に銀の指輪が、右中指に金の指輪が輝いていた。
「ざまーみろ! 二回も封印されてたまるかアホボケカス!」
裕次郎は早速解印しようとするが、やり方がわからない。仕方なくヤコに訊くことにした。
「それで、封印はどうやって解くの?」
そう訊くが、ヤコはそっぽを向いたまま答えない。裕次郎はヤコの肩を掴み、揺さぶった。
「ちょっと! 早く解き方教えてよ!」
「嫌ニャ! ヤコちゃんの指輪奪ったくせに! 絶対絶対教えないニャ! ばーか!」
裕次郎とヤコはお互いの肩を掴み合い、揺さぶった。
続く。
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