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1章
なんだかんだぁぁぁぁぁぁ!
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1.「大絶氷塊散弾!」
『カランカラン』
裕次郎が呪文を唱えると、小さな氷が二つ床に落ちた。
「パパ! こおりおいしい!」
サキがしゃがみながら床に落ちた氷を口に入れ、ガリガリと食べ始めた。
床に落ちたけど、おなか壊さないかな・・・裕次郎は少し心配になる。
「裕次郎! いつまで遊んでいるのだ! 学校にいくぞ!」
イザベルが玄関から顔だけを出して、裕次郎を呼ぶ。
「わかった!」
裕次郎はそう言いながら、バッグを背負う。
はあ・・・魔法か魔術が使えれば、これ要らないんだけどなぁ・・・でもどうしても昨日みたいには魔術が発動してくれないんだよなぁ。
そう思いながらも、無理矢理気合いを入れ玄関へ向かう。
「裕次郎はいつもギリギリだな。もう少し余裕を持って行動した方が良いぞ」
イザベルが呆れたように裕次郎を見る。
「パパ! ママ! いてらっしゃい!」
「わんわん!」
サキが天使の笑顔で送ってくれる。豆芝ももふもふな笑顔? で送ってくれているようだ。
昨日イザベルと話し合った結果、サキは豆芝と一緒にお留守番してもらうことにしたのだ。流石にクエストに連れていくには危なすぎる。
「それでは行ってくるぞ。あとこれを渡しておく。何かあればこのスイッチを押すんだ。これを押したら、私と裕次郎がすぐに駆け付ける。しっかり留守番していてくれ」
イザベルはサキに小さな箱を渡した。
「はい!」
サキは元気に手を上げながら返事をする。裕次郎達は、少し心配になりながらも玄関の扉を閉めた。
2.裕次郎とイザベルはいつものように並んで道を歩く。
「少し聞きたいことがあるけどいい?」
裕次郎はイザベルの凛々しい横顔を見ながら尋ねる。
「なんだ?」
イザベルも裕次郎の方を見る。すると、お互いに見つめ合う形になってしまった。
「そ、その昨日魔術が使えたんだけど、今日は全然だったんだ。何でだと思う?」
裕次郎はイザベルのきれいな瞳に狼狽え、視線を慌てて逸らした。
「そうだな。魔術は私も詳しくない。そもそも魔術が使える人間がいると聞いたこともない」
イザベルは腕を組ながらそう言った。
「そうですか・・・」
まあ、知らないのも無理はないよなぁ。魔術は50年前滅んだそうだし、しょうがない。地道に道具を使いこなしていくか!
裕次郎はそう覚悟を決め、前を向いた。
2.いつものようにやる気の無さそうな表情でザークが出席をとった後、裕次郎達はいつものようにクエスト発注のカウンターへ集合していた。
「今日はなんのクエスト行くの?」
「そうだな・・・探してくるから、少し待っていてくれ」
イザベルはそう言うと、カウンターへ走っていった。
裕次郎はイザベルの後ろ姿を見ながら、昨日のヘンリーとの戦いを思い出す。
まあ俺は昨日、あんな怖い人と闘ったんだ。みんなと力を合わせれば、なんちゃらドラゴンごとき何匹でも倒せるさ!
「どうせ昨日みたいには、魔法使えないんでしょ?」
裕次郎の心を読んたかのように、ルイーゼが少しバカにしたように話しかけてきた。
「・・・そうだけど、頑張るからいいの!」
裕次郎は、せっかくやる気に満ち溢れていたのに・・・と、ルイーゼを睨む。
「死にそうになったら助けてあげるわよ」
ルイーゼがそう言いながら、裕次郎の肩を叩いてきた。
・・・ちくしょう! もし魔術が使えたら、服だけ全部燃やしてやるのに! スッポンポンだぞ!
そう思いながら、裕次郎が妄想していると、
「豆芝ちゃん~どこですか?」
とシャルロットが、キョロキョロしながら辺りを見回している。
「ああ、今日はお留守番だよ」
裕次郎は、何気なくそう言った。
「え? なんで?」
シャルロットは、絶望したような表情で裕次郎を見る。よく見ると目の端に涙が溜まってきている。
すごい顔だ。今にも泣いてしまいそう・・・裕次郎は少しかわいそうになった。
「あ、明日は連れてくるから!ね?」
裕次郎は必死でシャルロットを慰める。
「・・・本当ですね?」
シャルロットは袖で溜まった涙をぬぐい払う。
「うん! だから今日のクエスト頑張ろうね!」
裕次郎がそう言った所で、イザベルがクエストを決めたようだ。用紙を握りしめ、こちらへ走ってくる。
「決めたぞ! これにした!」
イザベルは用紙を裕次郎に見せる。
「氷龍」
そう書いてあるのが見えた。まあみんなで挑めば大丈夫だろう。
裕次郎がそう思っていると、イザベルが信じられない言葉を口にする。
「それでは今日も、裕次郎が一人で倒すんだ!」
・・・は? 俺また一人なの?
裕次郎はイザベルに質問する。
「なんでまた俺だけ?」
「ん? 裕次郎は強くなりたいんだろう?」
「そうだけど・・・一人はちょっと・・・」
「大丈夫だ! 死にそうになったら助けてやる! それに死にそうになったら魔術が使えるかもしれん!」
「・・・そんなもんかな?」
・・・もういいや。また一人で死にかけながら頑張ろう。どうせ俺が死んでも、イザベルがシングルマザーになるだけだし。困るのはイザベルだし!!!
裕次郎は開き直り、裏庭へ向かう。
「裕次郎、ちょっと待って!」
ルイーゼが、さっさと行こうとしていた裕次郎を引き止める。
「なに?」
裕次郎は何事かと、振り返る。
「そういえば昨日、おじさまのお屋敷で忘れ物していたわよ。ほら」
ルイーゼはそう言うと手を出しながら、裕次郎に何かを渡そうとする。
裕次郎もそれを受け取ろうと、手を伸ばす。が、
「魔力吸収」
ルイーゼが、にやにやしながら呪文を唱える。
「ちくし・・ょ・・・う・・・」
裕次郎は力が抜け、地面にうつ伏せで倒れる。
また騙されてしまった!! もしかして俺、バカなんじゃないかな・・・俺のバカ・・・
そう思いながらルイーゼを見ると、口に手を当てて、『プッ』とバカにしたように笑っていた。
続く。
『カランカラン』
裕次郎が呪文を唱えると、小さな氷が二つ床に落ちた。
「パパ! こおりおいしい!」
サキがしゃがみながら床に落ちた氷を口に入れ、ガリガリと食べ始めた。
床に落ちたけど、おなか壊さないかな・・・裕次郎は少し心配になる。
「裕次郎! いつまで遊んでいるのだ! 学校にいくぞ!」
イザベルが玄関から顔だけを出して、裕次郎を呼ぶ。
「わかった!」
裕次郎はそう言いながら、バッグを背負う。
はあ・・・魔法か魔術が使えれば、これ要らないんだけどなぁ・・・でもどうしても昨日みたいには魔術が発動してくれないんだよなぁ。
そう思いながらも、無理矢理気合いを入れ玄関へ向かう。
「裕次郎はいつもギリギリだな。もう少し余裕を持って行動した方が良いぞ」
イザベルが呆れたように裕次郎を見る。
「パパ! ママ! いてらっしゃい!」
「わんわん!」
サキが天使の笑顔で送ってくれる。豆芝ももふもふな笑顔? で送ってくれているようだ。
昨日イザベルと話し合った結果、サキは豆芝と一緒にお留守番してもらうことにしたのだ。流石にクエストに連れていくには危なすぎる。
「それでは行ってくるぞ。あとこれを渡しておく。何かあればこのスイッチを押すんだ。これを押したら、私と裕次郎がすぐに駆け付ける。しっかり留守番していてくれ」
イザベルはサキに小さな箱を渡した。
「はい!」
サキは元気に手を上げながら返事をする。裕次郎達は、少し心配になりながらも玄関の扉を閉めた。
2.裕次郎とイザベルはいつものように並んで道を歩く。
「少し聞きたいことがあるけどいい?」
裕次郎はイザベルの凛々しい横顔を見ながら尋ねる。
「なんだ?」
イザベルも裕次郎の方を見る。すると、お互いに見つめ合う形になってしまった。
「そ、その昨日魔術が使えたんだけど、今日は全然だったんだ。何でだと思う?」
裕次郎はイザベルのきれいな瞳に狼狽え、視線を慌てて逸らした。
「そうだな。魔術は私も詳しくない。そもそも魔術が使える人間がいると聞いたこともない」
イザベルは腕を組ながらそう言った。
「そうですか・・・」
まあ、知らないのも無理はないよなぁ。魔術は50年前滅んだそうだし、しょうがない。地道に道具を使いこなしていくか!
裕次郎はそう覚悟を決め、前を向いた。
2.いつものようにやる気の無さそうな表情でザークが出席をとった後、裕次郎達はいつものようにクエスト発注のカウンターへ集合していた。
「今日はなんのクエスト行くの?」
「そうだな・・・探してくるから、少し待っていてくれ」
イザベルはそう言うと、カウンターへ走っていった。
裕次郎はイザベルの後ろ姿を見ながら、昨日のヘンリーとの戦いを思い出す。
まあ俺は昨日、あんな怖い人と闘ったんだ。みんなと力を合わせれば、なんちゃらドラゴンごとき何匹でも倒せるさ!
「どうせ昨日みたいには、魔法使えないんでしょ?」
裕次郎の心を読んたかのように、ルイーゼが少しバカにしたように話しかけてきた。
「・・・そうだけど、頑張るからいいの!」
裕次郎は、せっかくやる気に満ち溢れていたのに・・・と、ルイーゼを睨む。
「死にそうになったら助けてあげるわよ」
ルイーゼがそう言いながら、裕次郎の肩を叩いてきた。
・・・ちくしょう! もし魔術が使えたら、服だけ全部燃やしてやるのに! スッポンポンだぞ!
そう思いながら、裕次郎が妄想していると、
「豆芝ちゃん~どこですか?」
とシャルロットが、キョロキョロしながら辺りを見回している。
「ああ、今日はお留守番だよ」
裕次郎は、何気なくそう言った。
「え? なんで?」
シャルロットは、絶望したような表情で裕次郎を見る。よく見ると目の端に涙が溜まってきている。
すごい顔だ。今にも泣いてしまいそう・・・裕次郎は少しかわいそうになった。
「あ、明日は連れてくるから!ね?」
裕次郎は必死でシャルロットを慰める。
「・・・本当ですね?」
シャルロットは袖で溜まった涙をぬぐい払う。
「うん! だから今日のクエスト頑張ろうね!」
裕次郎がそう言った所で、イザベルがクエストを決めたようだ。用紙を握りしめ、こちらへ走ってくる。
「決めたぞ! これにした!」
イザベルは用紙を裕次郎に見せる。
「氷龍」
そう書いてあるのが見えた。まあみんなで挑めば大丈夫だろう。
裕次郎がそう思っていると、イザベルが信じられない言葉を口にする。
「それでは今日も、裕次郎が一人で倒すんだ!」
・・・は? 俺また一人なの?
裕次郎はイザベルに質問する。
「なんでまた俺だけ?」
「ん? 裕次郎は強くなりたいんだろう?」
「そうだけど・・・一人はちょっと・・・」
「大丈夫だ! 死にそうになったら助けてやる! それに死にそうになったら魔術が使えるかもしれん!」
「・・・そんなもんかな?」
・・・もういいや。また一人で死にかけながら頑張ろう。どうせ俺が死んでも、イザベルがシングルマザーになるだけだし。困るのはイザベルだし!!!
裕次郎は開き直り、裏庭へ向かう。
「裕次郎、ちょっと待って!」
ルイーゼが、さっさと行こうとしていた裕次郎を引き止める。
「なに?」
裕次郎は何事かと、振り返る。
「そういえば昨日、おじさまのお屋敷で忘れ物していたわよ。ほら」
ルイーゼはそう言うと手を出しながら、裕次郎に何かを渡そうとする。
裕次郎もそれを受け取ろうと、手を伸ばす。が、
「魔力吸収」
ルイーゼが、にやにやしながら呪文を唱える。
「ちくし・・ょ・・・う・・・」
裕次郎は力が抜け、地面にうつ伏せで倒れる。
また騙されてしまった!! もしかして俺、バカなんじゃないかな・・・俺のバカ・・・
そう思いながらルイーゼを見ると、口に手を当てて、『プッ』とバカにしたように笑っていた。
続く。
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