成長する殺人鬼1(完結)

一二の三太郎

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二章 明弘くんの覚醒

『六人目』毒殺

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 俺は『六人目』『七人目』『八人目』を殺すため、実家へ向かっていた。より芸術的に殺したい。その一心で、徹夜で殺害方法を思考し、道具も揃えた。後は殺すだけだ。
 興奮に打ち震えながら、車のハンドルを操作する。
 そうだ、現最高傑作の『五人目』も元気にしているだろうか。多少劣化してはいるだろうが、まだ十分遊べるはずだ。死してなお、凌辱される気分はどんな気分だろうか。おそらく最高に違いない。俺が最高の気分なのだから間違いない。
 俺は、これから起こるであろう最高のショーを想像しながら車を走らせる。脚本は俺、主役は家族達だ。感動と興奮のストーリーを用意してある。
 そんな事を考えていると実家の屋根がフロントガラス越しに見えてきた。

「ただいま」
 俺はそう言いながら玄関を開けた。今は夕方の7時半。帰ってくると連絡をしていたからか、鍵は閉まっていなかった。
「遅かったね、待ってたのよ。ご飯食べる?」
 台所から頭だけを覗かせ、『六人目』である母が、実の息子に殺されるとも知らず、呑気に料理などを作っている。
「あ! お兄ちゃん! お帰り!」
 お風呂上がりだろうか、頭にバスタオルを巻いていた。今回の主役、『八人目』が堂々登場だ。『八人目』は、走り寄って来ると、俺に抱きついてきた。
「お兄ちゃん帰ってくるなら、一緒にお風呂入れば良かった~」
 シャンプーの良い香りを漂わせながら、『八人目』が口を尖らせる。まあ、この後のショーで、最高の香りを付けてるつもりだが。
「お兄ちゃん? どうしたのボーッとして?」
 ショーの段取りを考えていた俺は、『八人目』の呼び声で我に返る。
「ごめん。葵の事を考えてたんだよ」
 俺は抱きついてきたままの葵の頭を撫でてやった。
「私も大好き~」
『八人目』は嬉しそうに俺の胸元に顔を埋めてきた。

「ごちそうさま」
『六人目』が用意した夕食を食べた後、俺は計画を実行する。
「じゃあ、俺がお茶を持ってくるよ」
 そう言うと台所へ入り、家族全員のお茶を用意する。俺の実家では、食後のお茶は定番だ。
 俺は三つのコップにお茶を入れ、二つのコップに睡眠薬を入れた後、居間へ持っていく。みんな俺の事を信用しているのか、疑いもせず飲み干した。後は深夜にショーの始まりだ。

深夜、俺は静かに起き上がる。隣には静かに寝息を立てている『八人目』が目に入った。どうしても一緒に寝たいと駄々をこねて、しょうがなく了承した。まったく、可愛い奴だ。
 俺は静かにベッドを抜け出し、車に向かうと、トランクに乗せていた服に着替える。服を沢山重ね着し、体型を変える。次に小さいボイスチェンジャーを装着した後、目出し帽を被った。包丁と懐中電灯を持ち、腰には刑事から奪った拳銃をさした。他にも色々な小道具が入った袋を持っていく。
 俺は家に戻り、『六人目』を確認しに行った。静かに横になっている。脈を確認すると、すでに息絶えていた。
 これで、『毒殺』成功だ。地味だが、全員違う殺し方をしなけらばいけない。正直、芸術にはほど遠いが、しょうがない。
 しかし、次からは今までで最高傑作になる予定だ。俺は『七人目』のいる寝室へ向かった。

『七人目』の寝室へ入り、手足を動かせないように、タイラップで縛る。睡眠薬が効いているせいか、起きる気配が無い。ほとんど身動きが取れないよう縛り、布団の上に転がしておく。
 次は『八人目』だ。自分の部屋に入ると、幸せそうな顔の『八人目』が、猫のように体を丸くして眠っていた。
 先ほどと同じように縛り、優しく抱き上げる。
「......ううん」
 寝言だろうか、『八人目』が何か言った気がした。




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