成長する殺人鬼1(完結)

六章 被害者さんへのお手紙

『二人目』

 『二人目』へ。

   こんにちは！ 久しぶりですね。元気に過ごしていますか？
 やんちゃな君が、ジャングルジムから落ちて死んだと聞いて、少しビックリしています。
 ただ落ちただけで死ぬなんて、よっぽど運が良いんですね。前世で人殺しでもしたのかな？
 でも、もし君が運悪く死んでいなかったら、将来はどんな風になっていたんでしょうかね。
 社会人になって、初任給でお母さんにプレゼントを買ったり、お父さんと一緒にお酒を呑みながら世間話をしたり、結婚して子供を育てていたかも......。
 色々妄想がはかどりますよね。
 でも残念ながら、君はもう骨になってしまってます。親孝行する事も結婚する事もできませんね。
 君の両親は、面会に来た時にはいつも泣いています。話を聞いてみると、一人息子を殺されとても悲しんでいるようです。君は本当に親不孝者ですね。死んだほうがいいんじゃないですか？
 ああ、そういえばもう死んでいましたね。殺したんでした。
 一応、君の両親にも、新しい子供を作ったほうが手っとり早いですよ、と忠告はしてやったけど、全く聞いてくれないんです。何を考えているのか理解できませんね。
 正直、君が死んだことに関しては、ほとんど興味がありません。
 直接手を下したわけでもないですし、遊んだわけでもない。何で勝手に死んだんですか？ 勿体ない。
 そうですね、もしもう一回殺すとしたら、ジャングルジムに足を縛り付けて、車で引っ張りたいですね。
 もちろん手は車に縛り付けてありますよ。
 アクセルを踏み込むと、君の体はブチブチと音を立てながら延びていき、泣きながら絶叫するんでしょうね。
 考えただけでもドキドキワクワクです。
 そうだ！ もしここから脱走できたら、君の両親を引っ張ってあげますね。
 子供の責任は親が持つもの。君を楽しく殺せていなかった責任は両親に償ってもらいます。
 最後に、一つ気になる事があります。
 君は親不孝者だから、おそらく地獄にいるんでしょう。閻魔様にお金はちゃんと払えましたか？ まあ、まだ小学生ですし、払えなくても仕方の無いことです。
 そこで、特別にあのDSをあげます。一回も使っていないので、買い取りに出せばお金の足しにはなるでしょう。
 買い取ってくれる所があればですけど。
『地獄の沙汰も金次第』です。頑張ってくださいね。現世から応援しています。

 明弘