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課金令嬢はしかし傍観者でいたい
隣国からの来客4
しおりを挟む「マナ、お前もやっぱりこっちに来てたんだな!よかった」
「私だってずっと心配してたんだからね!てか、お前って言うなお前のくせに!」
「意味分かんねーから!」
「何、あんた王子なの?似合わな!」
「うるせーよ!マナこそ何だよその美少女設定うける!誰だよマナリエルって!」
「あんたなんか、そのまんまじゃない!まぁ、そのおかげで分かったけど、それにしても」
「「センス悪っ」」
再会したことに安堵と興奮が入り混ざり、お互いにぐりぐりとおでこを擦り合わせた。あははははは、と声が聞こえそうなほど笑いながら。
端から見れば、異様な光景だろう。初対面の二人の子供が、超絶仲良く罵り合っているのだ。
…………。
「あっ……」
「げっ……」
周囲を置いてきぼりにしていたことに気付き、そうっとソウシと見回した。お母様も、フラウディア様も、ソウシのお兄ちゃんらしき人も、離れて見ているナディアも、室内の人間がみんな呆然としている。
「ねぇ、なんか私達きもくなーい?」
とりあえず、頬を寄せて小声で会話。
「いきなりギャルかよ、どうするこの空気」
「知らねーよお前どうにかしろよ」
「やめてお姉様、口悪いとどっちのセリフか分かんないから」
「無理無理何とかしてソウちゃんついでにあのイケメン紹介して」
「はぁ?ったく」
突然、ソウシが肩を抱き寄せた。
「すみません母上、せっかくの時間を潰してしまって。マナリエルと話したら、すっかり友達になってしまいました」
少し子供っぽく茶目っ気を出した言い方で。前世でも誤魔化すのはソウシの役目だった。
仲良さそうにニコニコと笑っている私達を、みんなは未だに口を開けたまま見ていた。そして口火を切ったのは、フラウディア様だった。
「まあぁぁぁぁ!!!まぁまぁまぁまぁまぁ!!!ソウシがこんなに!!!やだどうしましょう!!!」
私と対面した時よりも、さらに興奮していらっしゃる。頬が紅潮し、若干瞳が潤んでいた。フラウディア様は、ちょっと情緒の安定が足りない方なのかもしれない。
「あんたのお母さんどうしちゃったの?」
「あの人は普段からああだから気にするな」
「おけ」
もちろん、小声で。
フラウディア様の興奮ぶりに注意が向いてしまったけど、よく見ればお母様も嬉しそうにパァと花を背負っていた。そしてそのあとは、フラウディア様とお母様が嬉々として、何かを話し始めた。なんだなんだ。
それにても、ソウシの兄ちゃん大人しいわね。大人しいイケメンとか好みだわ。まだ名前知らないんだけど。ちらりと見ると、視線があった。すると、ふんわり笑ってこちらに近付いてくる。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私はロイと申します」
「あ、いえ。こちらこそ申し訳ありません。マナリエルです。以降──仲良くしてくださいませ」
お見知りおきを、なんて言葉、8歳が使わないかと思って止めておいた。
自分でいうのも何だけど、ロイ様は私に引けを取らない美しさだ。同じ金色でも色素の薄い私と違い、ロイ様の髪は輝く黄金の色。ターコイズの瞳は優しく、少し目尻が上がっていた。
王子様みたいと思ったけど、まさか本当に王子様だなんて。ソウシももちろんイケメンの部類に入るんだろうけど、中身が弟だと思うと全くときめかない。
あまりの美形に見とれていると、ロイ様は優しく目を細めた。まだ子供なのに、なんだその色気は。
「こんなに愛らしいプリンセスに見つめられると、その瞳に吸い込まれてしまいそうですね」
「まぁ、そんなこと。ロイ様はおいつくでいらっしゃいますか?」
ツバつけとこ。
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