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それぞれの思い
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ソフィアとの抱擁を楽しんでしばらくたった後…事件は起きた。
◇
「ところで…お兄様?」
あの後ソフィアが泣き止むまで俺はずっと抱きしめており、ようやく落ち着いたところで声をかけてきた。
「なんだソフィア?」
…だが、なぜだ?ソフィアから物凄い圧のような、殺気のようなものが直で感じてくる。
そして本能的に嫌な予感という当たってほしくないものがびんびんに感じる。
こういう時って大体………
「お兄様の後ろにいるそこの女狐共は誰なんですか?」
………当たるんだよね。
「前話しただろ?父上が話された人達だよ」
とにかくやましいことはない。それだけ伝えるかのように早口気味になって説明したが。
「……あぁ、そういえば言ってましたね。確か混沌の魔女でしたっけ?」
な、なんか眼中にないって顔してない?
ていうかソフィアさん、姉上の時も思ったけど…なんか逞しくなってないかな?
混沌の魔女と呼ばれた2人を女狐って……
ほら見ろ、ローレンスなんて「め、女狐…」
って驚いてるし、ユニーレなんて少し殺気飛ばしてるよ?
これに怯まない俺の妹は一体なんなんだい?
「それにお兄様?」
「な、なんだい?」
こ、今度はなんだ?俺、妹に心配させることなんて2年待たせたくらいでそれ以外は....
「そのお腹辺りについている血は何なんですか?」
....あ
「えっとこれはその....こ、転んでちょっと怪我したみたいで....」
「....そこにいる女狐共がやったんですか?」
うっ...実際その通りだからなにもいえない....
何も言えずに口籠ったその瞬間、ここら一体の空気がボワァッと雰囲気が変わった。
え、え?おかしいな?この空気を出している張本人今目の前にいる俺の妹なんだけど?それに魔女組の目つきが変わったよ?へぇ...とかつぶやいちゃってるよ
この2年でどれだけ強くなってるのソフィアさん?
「...お兄様、お話は後でいたしましょう。今はあの不届き共に制裁をしなければ」
ま、まずい....!これ完全にキレてるやつだ!!
こんなにキレてるソフィア今まで見たことがないから俺凄く怖い。
ただ、このまま放っておくわけにもいかず、声をかけたんだが...
「そ、ソフィア?一回落ち着いt...」
「....」
だ、ダメだ...俺の話を遮るようにソフィアに睨まれた...正直めちゃくちゃ泣きたい。
「...あなた達がお兄様に傷を負わせたんですか?」
魔女組は黙っている。ただ、怖くて震えてるのではなくただじっと見守ってる。何かを見極めてるように。
「...もう一度お聞きします....あなた達がお兄様を傷つけたんですか?」
ソフィアがさっきよりも言葉に圧を込めてもう一度問う。聞いたことは同じなはずなのに、ここまで違うと思うのは一体何なんだ?
俺がただ震えて見守ってるなか、口を開いたのはローレンスだった。
「...あぁ、我らがお主の兄を傷つけた。」
「...そうですか.....ソウデスカ」
ゾクっ!
さ、さっきよりも空気が張り詰めている。それにソフィアの目に光が見えない。
「...許さない....ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ!!よくも私の、ソフィアのお兄様を!!!」
おいおい...流石に止めないとまずいぞあれ!?
「お、おいソf」
「それが何なのかしら?」
「...おいユニーレ!!」
あいつ!これ以上火に油を注いでどうするんだ!
「あなたのお兄様が傷ついた。それがなにかしら?結局は大切なお兄様を守ることもできず、ただなにもせずか弱く待ってただけじゃない?それに文句を言うあなたは一体なんなのかしらね?」
心無しかユニーレが苛ついてるように見える。ただソフィアに苛ついてるんじゃなくて自分に苛ついてるような...
「...えぇ、実際それは事実でしょう。私はただなにもせずお兄様の帰りを待っていただけです...いえ少し訂正しましょうか。ただか弱く待っていたわけじゃないんですよ?」
すると、ソフィアの後ろに5つの魔法がそれぞれ顕現する。これは紛れもないソフィアの力だ。激流のような水、暴風とも表現してもよい程の勢いがある風、壁と思わせるような大きな岩、今にも混ざりあい全く違う力になりそうな輝いている光と深淵に飲み込まれそうな闇。
前までお兄様と懐いてた妹はいつの間にかそこらの冒険者には負けない逞しい女性になっていた。
と俺はソフィアに見惚れてたが、そんなことをしてる場合じゃないと思い出して、すぐに妹と魔女組の間に入る。
「やめろソフィア!そんなことしてもお兄ちゃん嬉しくないぞ!」
すると俺が間に入ったのことが動揺したのか少し顔が歪んだ。
「...どいてくださいお兄様。そうでないと、あの女狐共を葬れません」
「ダメだ。それは許容できない」
さっきまで怖かったが、守らなければという使命が俺を妹の前へ立ち塞がる勇気をくれる。
「どうして...どうしてですかお兄様!?そこにいる者はお兄様を傷つけた不届き者ですよ!?なぜ、自分を傷つけた相手のことを庇うんですか!!」
「そもそもこうなることは予想できてたんだ。無傷に帰れるとは思ってないよ」
「...そんなに、その者たちが大事なんですか?ソフィアよりも...そんなに」
「違うソフィア。僕は」
「聞きたくありません!!」
「....」
「そんなの...聞きたくありません....もしお兄様がその者達のほうが大事だと言われたら....耐えられる自信がありません....そんなの....そんなの...!」
「ソフィア」
俺はすぐさま抱きしめた。ただ言わないといけない、こんなにも自分のことを大切に思っててくれたんだから
「...ありがとう」
「...え?」
お礼を言われると思ってなかったのか、顔をあっけらかんとしながら俺の方を見ていた。
「...2年もこんな不出来な兄を待っててくれて、そんな僕のために怒ってくれて本当にありがとう...ただそれを含めて聞いてほしい」
ソフィアは冷静になったのか、俺の話を黙って聞いててくれる
そしていつの間にかソフィアの後ろにあった魔法は消えていた。
「僕はどっちが大切だとかそんなの決められない。ソフィアもローレンスもユニーレも大事だと思っている」
きっと聞いているだけならクソ野郎の中の一人だろう。ただこの道を進むと決めたんだ。たとえそれで嫌われても構わない。それが俺の信念の一つだと思ってるから。
「...」
「こういうことがまた多々あるかもしれない。これが僕の決めた道なんだから後悔も何もしないだろう...ただ、もしソフィアのことを傷つけてしまったなら....僕のことを忘れてもらっても....」
忘れてもらっても構わない。そう言おうとした瞬間ソフィアがそれを言わせないように話始めた。
「...分かってます。お兄様は誰よりも優しくて、誰よりも強くて....誰よりも自慢のお兄様なのは....ちゃんと分かっていますよ」
「ただ...こんな我儘な妹のお願いを聞いてくれないでしょうか?」
妹の願い。それはきっと俺にとってこの先大事になるだろう。
聞き逃してはいけない、そう思った俺は妹のお願いを聞いた。
「...必ず、必ず生きて帰ってきてください。ソフィアももっと強くなります。
だから....だから必ずソフィアの元へ....」
少し泣きながらソフィアは言ってきた。
本当はこんな目になってほしくない。そんな思いがありありと俺の心に伝わってくる。でもこんな兄のことを考えてくれて、大事にしてくれる。
本当にアクセルは周りの恵まれているな。
「うん、分かった。絶対ソフィアの元へ帰ってくるよ」
その思いを裏切らないためにも必ず俺は帰ると誓おう。
俺は改めてそう思ったのだった。
◇
ソフィアの暴走が静まった後、とりあえず色々と魔女組に言いたいこと、特にユニーレにあったのでおれは二人の方に振り向いた。
「色々言いたいことはあるが...今言いたいことはユニーレお前のことだ」
どうしてそこまでソフィアに言ったのか、それを言おうとしたが先に答えてくれた。
「分からないのよ...」
「分からない?」
「なぜだか、急に苛ついたの。どうしてあそこまで怒ったのか...それがあなたの妹さんなのか、それとも自分なのか...」
...正直、こいつに関しては俺にも分からないことが多い。
そもそもどうしてローレンスの中に宿っていたのか、混沌とはなんなのか、それすら分からないことが多い
いまこいつが思ってることも明確には分からない。
でもユニーレも少しずつ成長してるんだ。
なら今俺が言ってやれることは....
「まずはソフィアに謝れ」
「...あなた妹さんのこと好きすぎじゃないの?流石に怒るわよ」
少し苛立っているユニーレを勘違いさせたが、言いたいことはそうじゃない。
「重要なのはそこじゃない。いや謝ることも確かに重要だけどな」
「なにが言いたいのよ?」
「自分の思う通りに行動してみろってことだ」
「?」
意味があまり分かってないような顔をしている
少し補足するか
「要は自分がしたいことはおもいっきりしてみろ。それで悩んだら考えて考えて考えろ。分からなかったら相談する、調べる。そんで自分なりの答えを見つける。お前のいう「変化」を求めたいならそれぐらい行動をしてみせろってことだよ....ユニーレが本気で変わりたい意思があるならな」
俺がそう言うとユニーレは黙ったまま何も言わない。
こいつはまだ短期間なのにこれだけ考えてそして成長してる。
少し見誤ってた。混沌の魔女だからって自分勝手に動いて自分の満足のいくまま
生きるのだと思ってた
ただ違った。遅いかもしれないがこいつは悩んでる。考えてるんだ。
こいつが本気で自分の意思で何かをしようとしているのだ
それが嘘偽りない本当の気持ちなら...こいつのことも見守っていってもいいかな?
そんなふうに考えていたらさっきよりもスッキリしたような顔をしてるユニーレが目に入った。
「そうね...まずは自分なりに行動してみようかしら」
「そうか....それならまずソフィアに謝ってこい」
「言ってることが矛盾してるんじゃないかしら?」
「重要なことだからな、ほらいってこい」
「もう...本当にあなたは....ふふっ」
ソフィアに謝るように促したときの彼女の顔はいつも通りの、いやいつも以上に輝いてた。
「...さて」
おれは今もその場に残っている彼女の方に向かった。
「...ローレンス」
俺と彼女らのことを見守ってたローレンスに声をかけた。
少し残念に思ってるような顔をして。
「ん?アクセル?もう終わったのか?」
「俺を精神安定剤みたいに言うな。お前もなにか言えただろ?少なくともユニーレには」
「...そうかもしれぬな」
やはり顔色がいつもよりも暗い。
こいつまさか.....。
「ローレンスお前....死のうとしてたわけじゃないよな?」
「ッ!」
図星なのか、身体をビクリと跳ねながらゆっくりと俺の顔の方を向いてきた
「...アクセルには隠し事はできぬな」
苦笑いをしながら、少しずつぽつりぽつりと語りだした。
「...お主の妹に魔法を打たれそうになったとき、我思ってしまったのだ。
このまま死んでもいいんじゃないかって。まだ罪の意識があるのかな?
勿論死ぬつもりなどそうそうないぞ?我だって色々世界を周りたいし、美味しい物だって食べたいしな。ただ...昔ほど厳しくないところとか、いつでも死ねると考えたら....ついな」
死ぬな....なんて言えない。俺はローレンスが味わった地獄を体験してない。
どれだけ苦しんだのか、どれだけ辛いなか、生き残ってしまったのか。
そんな思い俺には想定考えられない
だからそんな無責任なこと言えるはずなかった。
....でもこれくらいなら言うことができる。
「まずはお前が言った通りこの世界を見てみたらどうだ?それでも死にたいと思うなら....心置きなく死んだらいいんじゃないか?」
俺の提案にローレンスは驚きを隠せない表情でこちらをみていた。
それもそうだ。死ぬことを肯定してるようなものだ。そんなイカれたやつなどほとんどいないだろう。
「お、お主...我のことを止めないのか?」
「ローレンスはそれくらい苦しんだんだから、それくらい許されるんじゃないのか?」
こいつは確かに生きたいとも言ったが、同時に死にたいとも思ってるんだ。
矛盾してると思うが、実に人間らしいと俺は思う。
そう言うとローレンスは苦笑して少しだけ顔色が明るくなった
「...さては狂っておるな?」
「さぁな?どうだろう...まあでも」
俺はあの時と変わらない宣言を改めて彼女に告げる
「お前が世界の敵でもおれはお前の味方だ。それだけは変わらないよ」
一瞬あっけらかんな顔をしていたローレンスだったが、数秒後には、先程暗い顔をしていたとは思えないほどの明るい笑顔を浮かべていた。
「……ほんとにアクセルは.....世界で一番の大馬鹿者だ」
ただその表情は涙を流しながらただただ幸せでいっぱいな顔をしていた。
「そうだな、それなら俺は世界で一番の大馬鹿者だな」
そう言いながら俺は少し....いやだいぶ仲良くなっているように見えるソフィアとユニーレの元へ向かった。
「ちょ!す、少しは我のことを心配せぬか!!」
後ろではいつも通りのローレンスが俺に怒号を飛ばしながら、俺に向かってくる。
こいつらはきっと色々なことを考えて葛藤して悩み続けるだろう。
でも、もし悲劇の悪役がその心の悩みも救っていいのなら俺は何度だって救うだろうな。
それが俺の、アクセルが託してくれた役割なんだから。
そんなことを考えながら俺は歩き始めたのだった。
◇
「ところで…お兄様?」
あの後ソフィアが泣き止むまで俺はずっと抱きしめており、ようやく落ち着いたところで声をかけてきた。
「なんだソフィア?」
…だが、なぜだ?ソフィアから物凄い圧のような、殺気のようなものが直で感じてくる。
そして本能的に嫌な予感という当たってほしくないものがびんびんに感じる。
こういう時って大体………
「お兄様の後ろにいるそこの女狐共は誰なんですか?」
………当たるんだよね。
「前話しただろ?父上が話された人達だよ」
とにかくやましいことはない。それだけ伝えるかのように早口気味になって説明したが。
「……あぁ、そういえば言ってましたね。確か混沌の魔女でしたっけ?」
な、なんか眼中にないって顔してない?
ていうかソフィアさん、姉上の時も思ったけど…なんか逞しくなってないかな?
混沌の魔女と呼ばれた2人を女狐って……
ほら見ろ、ローレンスなんて「め、女狐…」
って驚いてるし、ユニーレなんて少し殺気飛ばしてるよ?
これに怯まない俺の妹は一体なんなんだい?
「それにお兄様?」
「な、なんだい?」
こ、今度はなんだ?俺、妹に心配させることなんて2年待たせたくらいでそれ以外は....
「そのお腹辺りについている血は何なんですか?」
....あ
「えっとこれはその....こ、転んでちょっと怪我したみたいで....」
「....そこにいる女狐共がやったんですか?」
うっ...実際その通りだからなにもいえない....
何も言えずに口籠ったその瞬間、ここら一体の空気がボワァッと雰囲気が変わった。
え、え?おかしいな?この空気を出している張本人今目の前にいる俺の妹なんだけど?それに魔女組の目つきが変わったよ?へぇ...とかつぶやいちゃってるよ
この2年でどれだけ強くなってるのソフィアさん?
「...お兄様、お話は後でいたしましょう。今はあの不届き共に制裁をしなければ」
ま、まずい....!これ完全にキレてるやつだ!!
こんなにキレてるソフィア今まで見たことがないから俺凄く怖い。
ただ、このまま放っておくわけにもいかず、声をかけたんだが...
「そ、ソフィア?一回落ち着いt...」
「....」
だ、ダメだ...俺の話を遮るようにソフィアに睨まれた...正直めちゃくちゃ泣きたい。
「...あなた達がお兄様に傷を負わせたんですか?」
魔女組は黙っている。ただ、怖くて震えてるのではなくただじっと見守ってる。何かを見極めてるように。
「...もう一度お聞きします....あなた達がお兄様を傷つけたんですか?」
ソフィアがさっきよりも言葉に圧を込めてもう一度問う。聞いたことは同じなはずなのに、ここまで違うと思うのは一体何なんだ?
俺がただ震えて見守ってるなか、口を開いたのはローレンスだった。
「...あぁ、我らがお主の兄を傷つけた。」
「...そうですか.....ソウデスカ」
ゾクっ!
さ、さっきよりも空気が張り詰めている。それにソフィアの目に光が見えない。
「...許さない....ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ!!よくも私の、ソフィアのお兄様を!!!」
おいおい...流石に止めないとまずいぞあれ!?
「お、おいソf」
「それが何なのかしら?」
「...おいユニーレ!!」
あいつ!これ以上火に油を注いでどうするんだ!
「あなたのお兄様が傷ついた。それがなにかしら?結局は大切なお兄様を守ることもできず、ただなにもせずか弱く待ってただけじゃない?それに文句を言うあなたは一体なんなのかしらね?」
心無しかユニーレが苛ついてるように見える。ただソフィアに苛ついてるんじゃなくて自分に苛ついてるような...
「...えぇ、実際それは事実でしょう。私はただなにもせずお兄様の帰りを待っていただけです...いえ少し訂正しましょうか。ただか弱く待っていたわけじゃないんですよ?」
すると、ソフィアの後ろに5つの魔法がそれぞれ顕現する。これは紛れもないソフィアの力だ。激流のような水、暴風とも表現してもよい程の勢いがある風、壁と思わせるような大きな岩、今にも混ざりあい全く違う力になりそうな輝いている光と深淵に飲み込まれそうな闇。
前までお兄様と懐いてた妹はいつの間にかそこらの冒険者には負けない逞しい女性になっていた。
と俺はソフィアに見惚れてたが、そんなことをしてる場合じゃないと思い出して、すぐに妹と魔女組の間に入る。
「やめろソフィア!そんなことしてもお兄ちゃん嬉しくないぞ!」
すると俺が間に入ったのことが動揺したのか少し顔が歪んだ。
「...どいてくださいお兄様。そうでないと、あの女狐共を葬れません」
「ダメだ。それは許容できない」
さっきまで怖かったが、守らなければという使命が俺を妹の前へ立ち塞がる勇気をくれる。
「どうして...どうしてですかお兄様!?そこにいる者はお兄様を傷つけた不届き者ですよ!?なぜ、自分を傷つけた相手のことを庇うんですか!!」
「そもそもこうなることは予想できてたんだ。無傷に帰れるとは思ってないよ」
「...そんなに、その者たちが大事なんですか?ソフィアよりも...そんなに」
「違うソフィア。僕は」
「聞きたくありません!!」
「....」
「そんなの...聞きたくありません....もしお兄様がその者達のほうが大事だと言われたら....耐えられる自信がありません....そんなの....そんなの...!」
「ソフィア」
俺はすぐさま抱きしめた。ただ言わないといけない、こんなにも自分のことを大切に思っててくれたんだから
「...ありがとう」
「...え?」
お礼を言われると思ってなかったのか、顔をあっけらかんとしながら俺の方を見ていた。
「...2年もこんな不出来な兄を待っててくれて、そんな僕のために怒ってくれて本当にありがとう...ただそれを含めて聞いてほしい」
ソフィアは冷静になったのか、俺の話を黙って聞いててくれる
そしていつの間にかソフィアの後ろにあった魔法は消えていた。
「僕はどっちが大切だとかそんなの決められない。ソフィアもローレンスもユニーレも大事だと思っている」
きっと聞いているだけならクソ野郎の中の一人だろう。ただこの道を進むと決めたんだ。たとえそれで嫌われても構わない。それが俺の信念の一つだと思ってるから。
「...」
「こういうことがまた多々あるかもしれない。これが僕の決めた道なんだから後悔も何もしないだろう...ただ、もしソフィアのことを傷つけてしまったなら....僕のことを忘れてもらっても....」
忘れてもらっても構わない。そう言おうとした瞬間ソフィアがそれを言わせないように話始めた。
「...分かってます。お兄様は誰よりも優しくて、誰よりも強くて....誰よりも自慢のお兄様なのは....ちゃんと分かっていますよ」
「ただ...こんな我儘な妹のお願いを聞いてくれないでしょうか?」
妹の願い。それはきっと俺にとってこの先大事になるだろう。
聞き逃してはいけない、そう思った俺は妹のお願いを聞いた。
「...必ず、必ず生きて帰ってきてください。ソフィアももっと強くなります。
だから....だから必ずソフィアの元へ....」
少し泣きながらソフィアは言ってきた。
本当はこんな目になってほしくない。そんな思いがありありと俺の心に伝わってくる。でもこんな兄のことを考えてくれて、大事にしてくれる。
本当にアクセルは周りの恵まれているな。
「うん、分かった。絶対ソフィアの元へ帰ってくるよ」
その思いを裏切らないためにも必ず俺は帰ると誓おう。
俺は改めてそう思ったのだった。
◇
ソフィアの暴走が静まった後、とりあえず色々と魔女組に言いたいこと、特にユニーレにあったのでおれは二人の方に振り向いた。
「色々言いたいことはあるが...今言いたいことはユニーレお前のことだ」
どうしてそこまでソフィアに言ったのか、それを言おうとしたが先に答えてくれた。
「分からないのよ...」
「分からない?」
「なぜだか、急に苛ついたの。どうしてあそこまで怒ったのか...それがあなたの妹さんなのか、それとも自分なのか...」
...正直、こいつに関しては俺にも分からないことが多い。
そもそもどうしてローレンスの中に宿っていたのか、混沌とはなんなのか、それすら分からないことが多い
いまこいつが思ってることも明確には分からない。
でもユニーレも少しずつ成長してるんだ。
なら今俺が言ってやれることは....
「まずはソフィアに謝れ」
「...あなた妹さんのこと好きすぎじゃないの?流石に怒るわよ」
少し苛立っているユニーレを勘違いさせたが、言いたいことはそうじゃない。
「重要なのはそこじゃない。いや謝ることも確かに重要だけどな」
「なにが言いたいのよ?」
「自分の思う通りに行動してみろってことだ」
「?」
意味があまり分かってないような顔をしている
少し補足するか
「要は自分がしたいことはおもいっきりしてみろ。それで悩んだら考えて考えて考えろ。分からなかったら相談する、調べる。そんで自分なりの答えを見つける。お前のいう「変化」を求めたいならそれぐらい行動をしてみせろってことだよ....ユニーレが本気で変わりたい意思があるならな」
俺がそう言うとユニーレは黙ったまま何も言わない。
こいつはまだ短期間なのにこれだけ考えてそして成長してる。
少し見誤ってた。混沌の魔女だからって自分勝手に動いて自分の満足のいくまま
生きるのだと思ってた
ただ違った。遅いかもしれないがこいつは悩んでる。考えてるんだ。
こいつが本気で自分の意思で何かをしようとしているのだ
それが嘘偽りない本当の気持ちなら...こいつのことも見守っていってもいいかな?
そんなふうに考えていたらさっきよりもスッキリしたような顔をしてるユニーレが目に入った。
「そうね...まずは自分なりに行動してみようかしら」
「そうか....それならまずソフィアに謝ってこい」
「言ってることが矛盾してるんじゃないかしら?」
「重要なことだからな、ほらいってこい」
「もう...本当にあなたは....ふふっ」
ソフィアに謝るように促したときの彼女の顔はいつも通りの、いやいつも以上に輝いてた。
「...さて」
おれは今もその場に残っている彼女の方に向かった。
「...ローレンス」
俺と彼女らのことを見守ってたローレンスに声をかけた。
少し残念に思ってるような顔をして。
「ん?アクセル?もう終わったのか?」
「俺を精神安定剤みたいに言うな。お前もなにか言えただろ?少なくともユニーレには」
「...そうかもしれぬな」
やはり顔色がいつもよりも暗い。
こいつまさか.....。
「ローレンスお前....死のうとしてたわけじゃないよな?」
「ッ!」
図星なのか、身体をビクリと跳ねながらゆっくりと俺の顔の方を向いてきた
「...アクセルには隠し事はできぬな」
苦笑いをしながら、少しずつぽつりぽつりと語りだした。
「...お主の妹に魔法を打たれそうになったとき、我思ってしまったのだ。
このまま死んでもいいんじゃないかって。まだ罪の意識があるのかな?
勿論死ぬつもりなどそうそうないぞ?我だって色々世界を周りたいし、美味しい物だって食べたいしな。ただ...昔ほど厳しくないところとか、いつでも死ねると考えたら....ついな」
死ぬな....なんて言えない。俺はローレンスが味わった地獄を体験してない。
どれだけ苦しんだのか、どれだけ辛いなか、生き残ってしまったのか。
そんな思い俺には想定考えられない
だからそんな無責任なこと言えるはずなかった。
....でもこれくらいなら言うことができる。
「まずはお前が言った通りこの世界を見てみたらどうだ?それでも死にたいと思うなら....心置きなく死んだらいいんじゃないか?」
俺の提案にローレンスは驚きを隠せない表情でこちらをみていた。
それもそうだ。死ぬことを肯定してるようなものだ。そんなイカれたやつなどほとんどいないだろう。
「お、お主...我のことを止めないのか?」
「ローレンスはそれくらい苦しんだんだから、それくらい許されるんじゃないのか?」
こいつは確かに生きたいとも言ったが、同時に死にたいとも思ってるんだ。
矛盾してると思うが、実に人間らしいと俺は思う。
そう言うとローレンスは苦笑して少しだけ顔色が明るくなった
「...さては狂っておるな?」
「さぁな?どうだろう...まあでも」
俺はあの時と変わらない宣言を改めて彼女に告げる
「お前が世界の敵でもおれはお前の味方だ。それだけは変わらないよ」
一瞬あっけらかんな顔をしていたローレンスだったが、数秒後には、先程暗い顔をしていたとは思えないほどの明るい笑顔を浮かべていた。
「……ほんとにアクセルは.....世界で一番の大馬鹿者だ」
ただその表情は涙を流しながらただただ幸せでいっぱいな顔をしていた。
「そうだな、それなら俺は世界で一番の大馬鹿者だな」
そう言いながら俺は少し....いやだいぶ仲良くなっているように見えるソフィアとユニーレの元へ向かった。
「ちょ!す、少しは我のことを心配せぬか!!」
後ろではいつも通りのローレンスが俺に怒号を飛ばしながら、俺に向かってくる。
こいつらはきっと色々なことを考えて葛藤して悩み続けるだろう。
でも、もし悲劇の悪役がその心の悩みも救っていいのなら俺は何度だって救うだろうな。
それが俺の、アクセルが託してくれた役割なんだから。
そんなことを考えながら俺は歩き始めたのだった。
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