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伍章 沈ム“カイゾク”町

ご 怒り。

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『待て!!!!』

よく通る声で、セレンは叫んだ。

マリアーナの攻撃が止まる。

……どうにかしてこのバリアを突破しなければ。

………あれ?…?

『ユキっ!!!よく聞くんだ!!』

突然呼ばれて、私は思わず手を止めてしまう。

『私は……いや、……ユキに提案がある!!!』

…やっぱり、お兄ちゃんだったんだ。

今まで直接的に明かすのはなかった。

これは…そっか。

『なぁ……ユキ……もう、…こんなこと。』

………お兄ちゃんも……。

『俺は……お前が何度もことは知ってる……。俺は…はしていないから……お前の感じている苦しみは分からない。』

……そっか………。

『でも、お前が本当はをだれよりも知ってるんだ!!』



『まだ間に合う………だからさ、ユキ。もうやめようぜ、こんなこと。俺ともう一度…。』


『…セレン…?なにを…言ってるのかしら……?』

…………やり直す、か。

……やっぱり………

「……ごめん、……その提案は。」

『………』

「……私……もうこれでなの。」

『…なっ!?』

「お兄ちゃんは分からないと思うけど…!私はっ…!!何度もっ!!何度もっ!!!ぐちゃぐちゃにッッ!!!!!殺されてきたのっ…!!!!」

『ゆ、ユキ…』

「私はっ…!!!!信頼されてたッ仲間にも…もちろんお兄ちゃんにもっ……この世界の…!!!!ごろざれで!!!お兄ちゃんっにはっ!!!!わがんないでしょっ!」

いつの間にか…声を荒らげていた。

やけくそになっていた。

「お兄ちゃんは……っ…!!」

『…ユキ……でもそれは…』

「しってる!!!前の…前のループのお兄ちゃん…がやった事……でも、でもっ!!!私はっ!!!!っ!!!!」

怒りが…爆発した。

何も知らないくせに

何も分からないくせに。

「お兄ちゃんも……お母さんも………何も分かってない…!!!!」

「お前らに……何がわかるんだよっ!!!」

痛みも、苦しみも、恐怖も…何もかも知らないくせに。

知った顔をしてんじゃねぇよ。

私は………私は…!! 


全      員      ぶ      っ      殺      し     て     や     る    !





☆☆☆☆☆☆☆

なんだか広いお城だ。

日本の古城みたいな、綺麗な内装。

よく見えないがそう思える。

しかし、どこいったんだろう…アタシのメガネ。


しばらく歩いて、広いところに出た。

『…あ!…大丈夫ですか…?』

さっきのお姉さんだ。

「…はい、大丈夫です。」

『あ、はいこれ…ちょっと割れてますけど…』

アタシのメガネだ。

ひび割れていて、ボロボロだ。

でもないよりはマシだ。

「ありがとうございます…これ、どこで…?」

『えっと、あなたと一緒に…流れ着いてて。』

「ありがとうございます…アタシにできることがあれば…。」

『だ、大丈夫ですよ。ゆっくりしていってくださいね』

はっきり見える。

とても優しそうな人だ。

水色の浴衣姿で、やはり天使の輪が着いている。

可愛らしいが、どこかお上品な印象を受ける。

「…アタシ、サクラです…助けていただき、ありがとうございます。」

『…あ、わたしは友桜空音と言います…!お客さんはお久しぶりでお茶も用意してなくて…お部屋は沢山あるのでどうぞ見てってくださいね…!』

本当に優しそうな人だ。

……友桜…やっぱりどこかで聞いたことあるような…。

とりあえずお言葉に甘えてお城を見て回ろう。
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