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準備は入念に
しおりを挟む見様見真似で手縫いしたバッグに、いざとなったら換金できそうな小さめのアクセサリーや絹のハンカチ、レースが見事なリボン……etc.
それらの小物を中心に、目立たない程度詰めて精霊であるシルフィ(仮)に預ける。
セレーネは転生者だが、転生者チートにありがちな空間魔法……いわゆるストレージと言われる収納魔法は使えないし収納できる便利な魔道具なども持ち合わせていない。
一応、この世界にもそういった魔道具はあるけれど、空間魔法や時間魔法を使える者がとても少ないせいもあり、そういった道具は例の漏れずかなり値が張るらしい。なので……。
「セレには特別僕が使っている場所を貸してあげるよ~。ん~とね、コレが良いかなぁ?ほらこれ。この腕輪にセレしか開けない入り口を作っておいたから、この腕輪を触って取り出したい物を念じればポンって出てくるよ~。あっ、小物類は袋に入れてまとめた方がイイかも?」
だそうだ。
ラノベなんかにあるように『自動で整理』なんてうまいことはいかないらしい。
入れたい物に触れればポンポン入るらしいが、ポンポン入るがゆえ、精霊界の収納場所には積み上がっているだけの状態らしい。
目にして引き出せるわけではないので、似たような物を別々に入れると、取り出す際にとても面倒らしい。
(まぁあれだ。入れすぎ注意ってことだね)
今の現状を考えると最高の収納方法なので、ありがたく借りることにして、身の回りの換金できそうな物と、思い出の物を入れておく。
昨日、ミーヤからお父様がこちらに来るようだということを聞いた。おそらく先日の手紙と洗礼の儀関係の準備だと思う。
いくらなんでも幼少の娘に問答無用で出て行けなどという親ではないだろう……と思うのだけど、交流がなさ過ぎて父親の人となりが分からない。
着の身着のままで放り出されることはないだろうけれど、最悪『家の物を持ち出すのは禁止』なんてこともあり得る。
前世にて周囲に存在しなかった貴族という未知の種族とこの世界の常識……そしてこの世界、この国の家族の在り方。この世に生を受けまだ数年、屋敷の中周囲は大人とはいえ使用人ばかりという狭い世界で生きているセレーネには、分からないことばかりなのだ。
「そうだ。お父様がいらっしゃるならドレスも見繕っておかないといけないわよね。あとは……んー……ミーヤがやってくれるわよね」
知らないことばかりで実質知らない人との対面は緊張するものだ。正直いうと胃の辺りがキリキリしているし、ここしばらくは夜も上手く眠れない。この歳で不眠症かよっ!という心の中の突っ込みは誰にも言えない。
迂闊に体調不良を漏らすものなら医者を呼ばれかねない。そして激マズ&激苦の薬を飲まされるのだ……。
(鑑定なんで便利な能力があれば、薬師にもなれるかしら?)
なりたい職業とはこうして決まるのかもしれない……などと呑気に考え、とりあえず屋敷にある薬草の本も収納に加える。そして間近に迫った緊張の来客に向け、その日は休むことにした。子どもの身体に無理は禁物なのだ。
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